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経営者の想いを繰り返し語るためには哲学がたいせつ

経営者の想いを繰り返し語るためには哲学がたいせつ

経営者の想いを繰り返し繰り返し語るのは気力が必要な仕事であり言語化された哲学をぶれない姿勢のバックボーンにする、という話です。

現場は、所詮他人の集まりであり経営者の想いが簡単に伝わるはずがないです。

そのために、経営者は繰り返し、繰り返し、語ります。

 

ただし繰り返し語る姿勢を貫くのはたいへんなことです。

そこで、自分自身の哲学を上手く使います。

1.所詮、他人は他人である

言うのは簡単ですけど自分のやりたいことを現場に落とし込むことは簡単ではない。

それが危機感としてあるので、こういう風に継続して発信しないと。1回言っただけで分かってくれるほど人と人はつながっているわけではないんでね。

(出典:『日本経済新聞』2015年10月23日)

 

サッカー日本代表のエース本田圭佑選手の言葉です。

本田選手は小学生向けのスクールやオーストリア3部のSVホルンの実施的なオーナーでもあり、経営者の顔を持っています。

先の言葉は所属しているイタリアの名門・ACミランが好調とは言えない状況にあるのを受けて語ったものです。経営者の視点でチームの状況を説明しているのがとても興味深いです。

 

工場運営や工場経営も結局のところ人次第です。

人に働きかけて動いてもらうことが経営の要諦です。

共感してもらい、自律性を発揮する現場を整備することで人が活きます。

 

ただし会社の仲間と言えども所詮、他人は他人です。

最も理解し合った人である家族にさえ自分の意図を伝えるのに苦労します。

生まれた育った環境から始まり、学歴、職歴が異なる他人に、自分の意図することが簡単に伝わると考える方が不自然です。

 

それ故に多くの経営者の方が自分の想いを現場へ浸透させるのに苦労しているわけです。

これこそが経営者の仕事です。

ですから、想いが伝わったと実感できた時の達成感や充実感は経営者ならではのものではないでしょうか。

 

他人が自分のことを分ってくれたと感じるのは快感以外のなにものでもない。

経営の醍醐味のひとつです。

したがって、仕事が思い描いたように進まない時、「現場が動かなくて困る」という趣旨の言葉を耳にすると違和感を感じてしまいます。

 

それは、誰がやるべき仕事なのだろう。

2.繰り返し語ることで本気度を示す

想いを現場へ浸透させるためには繰り返し語るしかありません。

ひたすら繰り返します。

一方で、現場は管理者や経営者の本気度を試しているところもあります。

 

「また、あんなことを言い始めたけど、そのうちあきらめて言うのをやめるかもしれないから、しばらく様子を見よう」

繰り返し、繰り返し、繰り返し現場へ語るのは、管理者や経営者が本気でやる遂げるぞと言う本気度を示すためでもあります。

現場を引っ張るリーダーやトップが絶対にやってはならないことは、

 

・言いっぱなし

・丸投げ

です。

 

管理者や経営者がそのつもりでなくても、現場は「これは本気ではないな」と感じとってしまうからです。

現場にそう感じさせてはいけません。

工場運営や工場経営の根底を成す信頼関係が失われます。

 

絶対に避けたいことです。

しかしながら、反応が鈍い現場へぶれることなく想いを語り続けるのは、言うほど簡単なことではありません。

ただ、管理者であれ経営者であれ、想いを伝えねばならないとするならば、繰り返し語るしかないのです。

 

本気度を現場へ示す必要があります。

工場経営は人に動いてもらってナンボノモノですから。

3.繰り返し語るためにたいせつなことは

生産現場の管理者時代、業績の事と安全衛生の事をセットで繰り返し、現場へ語っていました。

特に安全衛生上のトラブルを約半年に渡って連続して発生させてしまった時は、悪い流れを断ち切ろうと必死でした。

必死になって語っていれば、共感してくるれ現場リーダーも現れ、一緒に汗をかいてくれることも経験しました。

 

このような時であってもモノづくりの現場には収益責任があります。

安全衛生上のトラブルでたいへんだろうから赤字で結構ですよ、とはならない。

当然のことです。

 

大手企業の工場であるならば多くの役割を多くの人員で分担することが可能です。

負荷を分散させることができます。

一方で経営資源に制約がある中小モノづくり工場ではなかなかそうはいかない。

 

いきおい、管理者の業務上の負荷が高まる場面が多い。

こうした時、ぶれずに、それでも繰り返し語り続ける気持ちを強く持つためには何かが必要です。

ふと一息ついた時に自然と湧き上がってくる、なぜ頑張らねばならないのか、なぜ想いを伝えねばならないのか、という素朴な疑問に圧倒的な確信を持って答えられる何かがなければなりません。

 

言い尽くされていますが、結局は“哲学”ということでしょう。

人生観、職業観、宗教観等、その人が長い人生を歩んだ結果、獲得した考え方。

これが仕事をする上での最後の踏ん張りとなります。

 

会社の哲学が経営理念という形で表明されます。

それと同様に(表明する必要は必ずしもないですが)管理者として、経営者として、“哲学”を持つことでぶれない仕事のやり方が確立します。

管理者や経営者が、自身の想いを繰り返し語れるのは“哲学”があるからです。

 

そして、仕事のやり方は“哲学”を反映します。

ですから、経営者であるならば、経営者としての哲学=会社の哲学、つまり経営理念という形で、ご自身の哲学を会社経営にまで昇華させていることもあるでしょう。

当たりまえすぎる話ですが、何かコトを成し遂げようと考えたらぶれないモノを、持っていなければなりません。

 

“哲学”を持つということを、“精神論”と考えるのではなく、仕事を上手く進めるためのひとつの手順、テクニックと考えます。

山あり谷ありの長い人生を過ごせば、どなたでもなんらかの“哲学”を持ちます。

ただ、それが漠然としたイメージのままであるか、言語化されているかの違いはあります。

 

言語化して自身のバックボーンにできれば、工場運営や工場経営で行き詰った時にも、ひと踏ん張りの気力が生まれます。

事業を成し遂げるためには、経営者の想いを繰り返し、繰り返し現場へ語る地道な仕事が欠かせません。

現場の反応が悪かろうが、反発があろうが、やり遂げなければなりません。

 

本気度を見ている現場に負けず、意思を貫くための“哲学”です。

自分にしか理解できなくてもイイので“哲学”を言語化し使ってみます。

哲学の言語化で自身のバックボーンを形成し、想いを繰り返し語る姿勢を貫きます。

 

哲学は本田選手が経営で最も重視するものだそうです。

先の言葉に引き続き、ACミランのことについて下記のように語っています。

 

なぜ悪いかを分っていないような気がします。

気づかずにさまよっているんで選手としてやっていて難しさは続いています。

過去の栄光を捨て切れていないのか、昔と同じやり方でいけると思っているのか。

 

どちらにしてもフィロソフィーが感じられないというか。

一体感みたいなのが薄い感じはしますよね。

それ(フィロソフィー)がないと動物園になっちゃいますんでね。

 

会社が歩んでいく方向をしっかり社員全員に伝えることこそトップの役目だと思いますけどね。

(出典:『日本経済新聞』2015年10月23日)

経営者が持つ“哲学”を経営理念にまで昇華させたモノづくり工場は経営者と現場が一体となった強さを感じます。

まとめ。

現場は、所詮他人の集まりであり経営者の想いが簡単に伝わるはずがない。

そのために、繰り返し、繰り返し、経営者は語る。

ただし繰り返し語る姿勢を貫くのはたいへんなことである。

 

そこで自分自身の哲学を上手く使う。

経営者の想いを繰り返し繰り返し語るのは気力が必要な仕事であり言語化された哲学をぶれない姿勢のバックボーンにする。

 

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所

 


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)