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研修センタ-の事務局、技術者、良い話を沢山聞いているのになぜ身につかな...

研修センタ-の事務局、技術者、良い話を沢山聞いているのになぜ身につかないの?

企業がお持ちの研修所にお邪魔すると、筆者も「技術関係のスタッフの方が研修担当になった。よろしく」とご挨拶されることが多い立場です。

この時、事務局を担当されている方を見て「うらやましいな!」と言ってしまいます。

その理由は、筆者が企業で仕事をしていた頃、私を育ててくれた上長は「外部の研修は高いから、一度受けたら明日から先生になると思え!」と言われたことを思い出すためです。

 

大体において、不況時に研修を行う状況では、社内外を問わず、研修への出席はアウトプットを出せるか否かが次の研修の評価となります。

また、筆者の場合、高額な費用を払って、出張までして外部の講師の方に教えていただく機会はなかなか持てない職場ばかりを経験してきたためです。

このため、自慢というわけではありませんが、筆者の場合、

 

① 年間に出たい研修を選定し、自己育成の目標達成の糧とする

② 外部研修へ出席する前に適用するテーマと、テーマ達成後に予想される効果金額を明示した企画書を用意し、研修で中身を固める

③ 出席した研修が期待はずれでも、参加者の方々は筆者と同じ目的を持つはずなので、名刺交換と交流をして、習った内容に関する情報を集める

ということをしてきました。

 

また、このような対処で概ね、1回の研修出席に対しては300万円〜500万円程度の金額効果を得てきました。

このため、最初は出席希望を渋った職場でも、筆者のために予算はつけていただいてきました。

これは自慢話ではなく、多くの企業で研修に参加される方なら常識的に行っている内容です。

 

では、筆者同様、この種の取り組みを実践され、H社の環境管理室長を担当、他社だけでなく、多くの省資源・省エネルギー指導をされてきたIさんが担当されていた研修担当事務局時代の活動を紹介することにします。

Iさんは、筆者に「外部に研修を依頼する目的はいろいろあります。私のような企業支援を業とする者に依頼される研修の内容は大体次のような内容が多いように思う」と話され、

 

① 新技術導入的な内容

② 内部である程度の研修を進めてきたが、やって来た事が正しかったか否かをチェックする目的で広い観点から話を聞き、その内容の妥当性を確かめるための対処

③ 工場運動の節目に基調講演のような形態で話を聞き、活動の確認と、具体的行動の刺激とする

④ 現場診断と講演会を兼ねた内容で改善の基本を手法の応用方式(切り口)という局面から学ぶ

⑤ 内部の人が同じことを言っても新鮮味がなく、注意にもならないので外部の方を使う

 

と、示された後、「この他にも研修を利用する形態には多くの方式があるようだが(お説教、教養番組的内容、躾教育など)、私の場合、技術手段を伝授する目的で研修を行うので、この種、具体的にアウトプットが見込まれない研修の依頼をした例はありません。

従って、中村さん、あなたが話されたように、私も研修担当事務局の方に対して、『代わりたい立場ですね!』と申し上げてきました。

事実、私の知り合いには、このような考え方を話したことで立場をフルに利用され、学んだことをご自身育成の糧として、研修所の事務局を担当中に、現場教育や、ある事業所のプロジェクトに参加され、成果を挙げておられるまでになった方がおられます。

 

その方現在、多くの工場から引く手数多の状況です。

このため、その後は工場へ転勤され、改善の指導者から現場管理者になられ、活躍されています。

また、この種の工場では、この方の仕事の進め方が伝承して、その後も同じような仕事をされる方々を多数生んでいます。

 

このような方々は、必ず、『あの時の話が……』と、私が話した内容を覚えていただいておられ、感謝の念を語られるわけですが、私は、ご本人の考え方と努力だと考えます。

しかし、優良メーカーM社の全員が全部このよう状態ではない状況です。

以上のような体験から、私は、研修所にいて、事務局を担当する利点を次のように考えてきました」

 

① 研修所では、最新・一流の話を聞ける機会が多い

② 研修で学んだテーマや内容に対し、参加企業の課題や問題をあてはめ、うまく企画すればその工場の関係者の為になり、自分にも役に立ち、会社の収益向上に役立つ話が聞ける

さらに、問題解決の具体策を企画という形で示し、「では、実演して欲しい」という状況になれば、自分が習ったことを実践で確かめ、工場関係者との融和と共に実務教育ができる

また、改善成功事例とノウハウをまとめれば、今度は、社外講師から入手した技術波及が当社内でできる

 

③ 私が外部講師の選択を当社の関係者と進めるわけだが、研修に参加した者の中から主だった方々より、私とは異なる講師の話に関する視点や解釈が集められ、自分の思っていた以上の情報が集められる

④ 「フォローアップの内研修は無意味」という言葉を柱にフォロ-アップ研修を組めば、研修参加者の方々から、実施〜習得した手法の応用や事例が集められる

⑤ 企画委員会の幹事を担当したり、プロジェクトへの参画も勇気を持って行動すれば可能であり、これが、仲間を増やし、力を蓄える原動力になる。それが、できなくても重要事項は社内ニュ-スに作成して関係者に流し、反応を知りながら自習する糧とする行動を取れば、最悪の場合でも自分が工場へ戻った時の題材を整理することに役立つ

 

▼組織に位置する人の行動

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「中村さん。企業内の研修の事務局には、ここに記載したような利得を得る環境があるわけです。

ところが、一般にはこの有利な立場もそうしない事情が多いようです。それには、次のような事情があるから、と私は考えています」

 

(1) 生徒の受付業務、講師との雑談、車の手配などの事務に追われる

(2) 研修名簿、案内の作成、夜の雑談につい時が過ぎてしまう(このため、休日は寝たきり老人と同じように疲労回復しきりの状態)

(3) 講師の評価、生徒評価に集中し、政策論議に花を咲かせた結果、自分には何も残らず、一般的にみる知識にはなるが、実務には弱い環境で研修所の担当期限を迎える

 

「要は、多数の研修メニューをお守りして、多忙な雑務に追われる毎日を過ごす方の形態です。

先に紹介した例と、このような対処はご本人の考え方で決まる内容です。

この中で(1)と(2)はそれほどの内容ではないように思います。この種の事に時間が取られるのであれば、アウトソースの利用や掃除や食事を作られる方々を巻き込んで消化する手もあるわけです。

 

しかし、(3)は、先の意欲的に研修所の事務局を担当する立場を知って行動する方とでは、大きな差になります。

「自分の人生において、自分の環境をどのようにとらえ、自分が何をするか?」というとらえ方と時間活用と言うか? 人生のチャンスの生かし方が大きく違うからです。

一般に、永久に担当技術者が研修センタ-に在住するケースは少ないように思います。

 

大体は役が終わり(任期満了と共に)、どこか他の職場へ配属になっていくのではないでしょうか?

しかし、研修担当者は、研修の事務局を担当する環境にあって、企業の重責の方に接する機会も多いことは事実です。

これも恵まれた環境にいるわけです。

 

企業のトップの判断は、多くの知識を持っているとか、話のうまい・下手が評価対象ではありません。

もし、重要な課題を任せた場合、仕事のアウトプットが確実に出るか? また、企業がかかえる問題を自社の実力では解けない場合、有効な人材を社外も使ってチャーターできるか? などです。

どうでしょうか?

 

この点も研修担当を任とする方は情報を持つことができます。

つまり、仕事の出来、不出来で人を評価するのが一般的です。企業では、優秀な人材はいつでも欲しい状況です。

このことを考えるならば、研修所の担当に当たる方は、常に、エリートコースへのコンタクトを企業トップと接し、売り込む機会まで持っているので、「その登竜門にしてやろう!」と考えて行動することが可能な立場にいるわけです。

 

一般に、このような状況で経営トップの方が「あの研修担当事務局を私が担当する重要課題に使いたいので何とかして欲しい!」と研修所のトップへ要請する状況が発生すれば、ご本人には腕試しのチャンス、また、後輩にも、お手本を示す結果となるはずです。

幹部候補生の登竜門を自らつくるつもりで、研修担当の場を活用されるべきではなかろうか? と思うわけです。

一流、しかも、最新の情報を常に集める場は企業ではなかなか無い状況です。

 

このように研修所という場を考えるならば、研修で訪れる方々の教育支援だけでなく、ご自身の育成も仕事とすべきです。

人を育てる研修の場で自分を育てる計画が無いのは『紺屋の白袴』です。ただ一つ、ここにない条件は学んだ事をすぐに実務に移す場が無いという環境です。

しかし、先に例を紹介したように、工夫次第で、この種の環境は手に入れることができます。

 

以上、私が考え実践してきた内容ですが、「多くの企業に訪問される中村さんからも、もし、この種のご意向を持つ研修担当事務局の方がいたら、経験談という形でご紹介下さい……」というIさんのお話でした。

そこで、この種のお仕事をされる皆様のご参考になればと思い、Iさんが筆者にお話いただいた内容をここに紹介させていただいた次第です。

コメント

筆者も、Iさんが話した形とは異なるのですが、研修担当をしてきた時期がありました。

なお、筆者の場合は生産の効率化を中心とした全社活動の事務局であり、研修はそのために社内外から講師と折衝して人を招くという立場でした。

しかし、似た局面で共に学び、実践事例をつくり全社に波及するという役目と、常に社長命令で重要課題を進めるテーマを担当してきました。

 

このため、正に、Iさんが話す事務局の内容を実務でこなすという環境をフルに利用して、今のような仕事を業とする幸せを得ました。

要は、事務局と講師を両面から見てきたため、研修事務局の仕事との関連が深い環境で仕事をしてきました。

そこで、事務局の仕事を筆者なりに下記のように分類してみました。

 

① 自分が招待した講師が、何か的を外れたことや活動を阻害したり、その企業を避難する話をされてはいけないので、監視を目的に研修の場に在席する

② 講師が資料の配付や、機材などの活用で支障があってはいけない。とんだお叱りを受けてはいけないので部屋の片隅に控えている

③ 自分は、講師が話す分野の新人なので、勉強を主体に部屋の末席に座る

④ 評判の研修、めったに聞けない著名人なので、聴講生や企業の関係者が話す話題づくりや時流に遅れないように、一応は内容がどのようなものか? を知っておく程度、学んだことは具体的に使い、目的は無いが教養程度の目的で参加する

 

⑤ 研修生の状況やニーズの変化などを正しく把握した内容を講師にお話いただくため参加して、生徒とも交流。講師には、研修中でもメモを入れて相互の有効度を増す目的で席に座る

⑥ 研修後、研修生が講師に紹介した内容を誤解して伝える危険もあり、生徒と一緒に並び、参画して、講師がお帰りになった後、生徒の中に十分な理解が無い内容は、自分がリードして、講師から得た内容や事例を追加して正しく、深い理解と共に伝え、内容の充実を図るため生徒と同じ状況で参画する

⑦ 研修内容は一部の研修生だけ、すなわち、重要な内容が研修を受けた聴講生の範囲に留まるのが惜しいケースなどは、講演や聴講内容をまとめ、関係者にも伝える、更には、テキスト化するなどして、受講生が研修後に利用可能な資料づくりをするため参加する

 

以上が事務局の仕事の内容であり、筆者の場合も、④〜⑦を重視して、研修のインストラクター兼事務局を進めてきました。

Iさんのお話に関係する内容として、仕事を進める中で、私が経験した中で大きな刺激を受けた『戦略的な研修事務局』の活動を紹介させていただくことにしたいと思います。

この内容は日立製作所・経営研修所の故・大森主管様のお話です。

 

出会いは「日立系列会社のグループでIE手法(現場改善技術)を展開する企画を進めたい。ついては、この面の講師担当ができる人を出して欲しい」という要求が日立金属(株)在勤時代にきました。

このため、私の上司が、工場から1名、本社から1名という編成で、筆者も打ち合わせに差し向けられたわけです。

なお、大森主管様は日立でVEを資材部長として始めて導入〜工場へ専門家を送り込み全社展開を成功させた方です。

 

集められた日立系列のメンバーには、厳しくも温かい対応をされ、研修がスタート、この研修で、IE手法を始めて学ぶことになった筆者は、ここで多くの勉強をすることになりました。

講師陣の融和も関係し、日立金属(株)のIE展開にも、このグループ会社の方々から大きなご支援をいただきました。

大森様も「一回研修を受けた人は、次の講師を担当してもらう」という方針から、私も、習ったことを自社で実践して事例づくりに努力しました。

 

このためか? 大森様の言を借りると「私が主管を担当する間、君は専属講師だ」というお話もあり、年2回程度の研修の講師を都合10年も担当しましたが、常に、厳しい評価と、時にはお誉めをいただきつつ対応しました。

はっきり言って門下生の形で修行したという気持ちでIEを学びましたが、自社でプロジェクトを動かす会社生活を過ごさせていただきました。

同時に、この出会いには今も感謝しています。

 

さて、お話しはこのような研修担当の場で講師をしながら、IE研修にある重役をお招きして「生産技術革新とIE活用」というテーマを2時間ほど行う講演中に起きた事例です。

お話はそれなりに生徒が感銘を受けるような講演会だったわけですが、末席に座っておられた大森主管様が講演中、やおら席を立ち、講演者にメモを渡す行動をとられました。

 

この時、筆者は電話の伝言か? お帰りの連絡かな? と思っていたわけですが、講演を担当される方の重役の顔色が変わり、大森主管の方を見て、うなずく場面がありました。

しかもこの重役の方、講演は中断してしばし天井を見て、「よし」と言って話を再開しました。

その話は、ご自身の体験談だったわけですが、それまで、一般論の形で人材育成と、各人の努力に関する話だった内容に対し、その理論を実体験で証明する話は感激する苦心談でした。

 

講演を聞く生徒の方は、全てがIEを業として進める方ばかりではありません。

優秀であること、各企業がIE実践を託すに足る方という選定で研修に参加されている方が大半でした。

このため「上司から言われて仕方なく出席、本業では無い仕事は一応、フォローアップで役割を果たせば終了」という考えの方が多い状況でした。

 

この種の研修(日立グループ企業が協力しあって生産性向上プロジェクトを進める対策に研修が位置づけられていたという性格を持つ研修)は、最初はIEの専門担当、しかも、意欲的な方々の出席で研修は盛り上がります。

これを『一番手を対象とした研修』と言いますが、この種の対象者が終わり、二番手以降になると、必ずしも、人生をかけてまでIEを進めるという方が少なくなってくるわけです。

だが、ある意味、ここが、今後の活動の正否を決める状況でした。

 

このような場に大森主管様は今回のプロジェクトに批判的だが実力者の重役の講演を依頼した(この話は後日談でお聞きした)わけでした。

繰り返しになりますが、この時の重役の話は、「どのような仕事でも場をとらえ、自分が生きている証に、テーマを探索して実を挙げ、他人に認めて貰うことで、自分のやっている方針と努力が正しいか否か? を確かめる。

また、このことで仕事を通した価値ある人生を送ることが重要!」という内容でした。

 

なお、この重役の方は、営業という異分野を担当されてきたわけですが、ご努力の過程は、IE手法が重視する問題意識とアウトプット重視の活動でした。

また、ここに時間を評価として用いる方式はIE人生そのものだったため、生徒は感激して話をお聞きする状況となったわけです。

この講演で研修に対する研修生の態度と全体の雰囲気は大きく、また、意欲的な状況に変化しました。

 

事実、フォローアップ時には、事例紹介~まわりの巻き込みへの努力、そして、その後の研修への展開にも大きく影響を与え、結局は、日立系列各社からのニーズ増加と共に研修と生産性向上実績や、人材育成も大きく進み、研修生を中心とした企業グループ間の交流も高まっていったからでした。

しかし、大森主管様がこの重役の方にお渡ししたメモに何が書かれていたか? は今も不明です。

筆者は質問したのですが、「二人の秘密!」という一言でした。従って、この面における技術伝承は筆者にはなされていない状況です。

 

しかし、大森主管様は、研修事務局という職で、生徒と企業グループの環境、呼んだ講師の立場という3社を熟慮した戦略的な内容であったと推察するわけです。

大森主管様は10年余り日立経営研修所で研修主管を担当されましたが、他の研修も同じように進められてきたようです。

なお、IE研修が軌道に乗り、最高潮の時、「この研修を終了にしよう!」と言われ、IE研修は終局を迎えました。

 

その時、「中村君、下り坂になって研修を終了する方がいるが、ニーズが最高の時に惜しまれながら去るのがあるべき研修だよ。これほどの広がりと系列間の融和、更には、人材育成が進めば、この研修を中核とした経営改善を進めなくてもいいだろう!

本来、この種の対策は、各社の生産技術が主体になって進めるべき性格を持つ。そのための動機付けを戦略的に進める。

要は、各グループ会社が自主的に進める火付けを経営研修所が行えば、もはや役目は終わりだ! 研修は人材育成の手段だが、自主性を失わせるからね!

 

研修所に頼る企業文化をつくることは、企業経営トップや次世代リーダーが何も考えなくなる環境をつくる。従って、この研修も役割を果たした」と話されました。

筆者はこの時、「役目を終えた」という感と同時に、今まで多くを教えられた研修担当事務局のあり方という面でも大きな勉強をしたわけでした。

このため、この種の考えを読者の皆様にもお伝え致したく、ここにIさんの話と共に、記載した次第です。


昭和45年から平成2年まで、日立金属㈱にて、全社CIM構築、各工場レイアウト新設・改善プロジェクトリーダー、新製品開発パテントMAP手法開発に従事。うち3年は米国AAP St-Mary社に赴任する。平成2年、一般社団法人日本能率協会専任講師、TP賞審査委員を担当を歴任する。(有)QCD革新研究所を開設して活動(2016年有限会社はクローズ、業務はそのままQCD革新研究所へ移行)。 http://www.qcd.jp/