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牛の糞尿で発電して下水処理場へ、地下水を汚さないバイオマス活用法 (石...

牛の糞尿で発電して下水処理場へ、地下水を汚さないバイオマス活用法 (石田雅也,[スマートジャパン])

 富士山の西側のふもとに広がる朝霧高原は避暑地として人気の高い場所で、広大な土地では4000頭を超える乳牛を飼育している(図1)。50軒ほどの酪農家が参画する富士開拓農業協同組合が中心になって、牛の糞尿を利用した「環境調和型バイオマス資源活用事業(富士宮モデル)」に取り組んでいく。。

 この事業は環境省と国土交通省が支援するプロジェクトで、家畜の糞尿や食品廃棄物を利用してバイオマス発電を実施しながら、環境負荷の低い事業モデルを確立する狙いがある。糞尿や廃棄物をメタン発酵させてバイオガス(消化ガス)を発生させた後に残る消化液は、農地や牧草地に肥料として散布するケースが多い。ところが液肥が地下水を汚染してしまう環境問題が顕在化し始めた(図2)。

 そこで液肥を適正に処理できる下水処理施設に輸送して浄化する一方、バイオガスで発電した電力と熱も下水処理施設に送って利用する。液肥の散布量を減らして地下水の汚染を防ぐのと当時に、下水処理施設で再生可能エネルギーを活用してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減する“一石二鳥”の効果が期待できる。

 このモデル事業の対象に選ばれたのが富士宮市の朝霧高原で、2018年度まで実証プラントを運用して「富士宮モデル」を構築する計画だ。実証プラントには乳牛の糞尿を受け入れる前処理設備をはじめ、発酵槽と発電設備、液肥を貯留・脱水して下水処理施設に搬出する設備などで構成する(図3)。

 原料になる乳牛の糞尿は1日あたり350頭分に相当する20トンを予定している。糞尿を発酵させて作るバイオガスを使って、50kW(キロワット)の電力を作ることができる。このうち20kWをプラント内で消費した後に、残りの30kWを下水処理施設へ送電する。

電力を安く送電できる「自己託送」を利用

 富士宮市の下水処理施設は朝霧高原から南へ30キロメートルほど離れた太平洋沿岸に近い場所にある(図4)。この間を電力会社の送配電ネットワークを使って「自己託送」の仕組みで電力を供給する。自己託送は発電事業者が関連施設などに電力を送る場合に利用できる制度で、小売電気事業者が送配電ネットワークを利用するのと比べて使用量が安いメリットがある。

 富士環境農業協同組合は富士宮市や地元の設計会社の協力を得ながら、2016年度内にバイオマスプラントの建設工事に着手する。2017年10月に運転を開始する予定だ。1日24時間の連続運転を見込んでいる。1日の発電量は1200kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(10kWh/日)に換算して120世帯分に相当する。下水処理施設には1日に720kWhの電力を供給できる。

 この実証プロジェクトの期間は3年間で2018年度末まで継続する。運転開始後1年5カ月の実証結果をもとに、富士宮モデルを確立して大規模なバイオマスプラントの展開を目指す。朝霧高原で飼育する4000頭を超える乳牛の半分程度(約2000頭)の糞尿を利用できるプラントの事業化が目標だ。

 実証プロジェクトの事業費は約10億円を見込んでいる。国の事業として実施するために、収益を上げられない制約がある。かりに固定価格買取制度を適用できた場合には、年間に325日の稼働を前提にすると発電量は39万kWhになる。バイオガス発電の買取価格(1kWhあたり39円、税抜き)を適用すれば年間の売電収入は約1500万円になる。20年間の買取期間の累計で3億円程度である。

 牛の糞尿を利用した大規模なバイオマスプラントの事業化にあたっては、液肥の処理に加えて採算性の確保が重要な課題だ。日々大量に排出する廃棄物を利用して再生可能エネルギーを効率的に作り出すハードルは高い。実用化できれば、酪農家を悩ます糞尿の処理と地域のCO2排出量を削減する有効な対策になる。


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