ものづくりニュース by aperza

海底に沈め海水で冷やすデータセンター、マイクロソフトが実証 (三島一孝...

海底に沈め海水で冷やすデータセンター、マイクロソフトが実証 (三島一孝,[スマートジャパン])

 米国マイクロソフトが推進している研究プロジェクトである「Project Natick」は、水中にデータセンターを建設し運用することを目指すものだ。2013年に着想し2014年8月から本格的にプロジェクトを開始した。最初のプロトタイプは2015年8〜11月にかけて米国西海岸の太平洋沖1キロメートルの地点で実証運用を行った。これらの結果はマイクロソフトがクラウドデータセンターの課題としている迅速なプロビジョニング、コスト低減、高い応答性、環境持続性などの点で反映されるという(図1)。

図1 「Project Natick」で海中に設置されるデータセンター 出典:Project Natick

 そもそも、なぜデータセンターを海底に設置しよういう試みが生まれたのだろうか。データセンターの省エネ性能には「PUE(Power Usage Effectiveness)」という単位が使われる場合が多い。PUEとは「データセンターの総入力電力」を「IT負荷電力」で割った数値である。例えば、IT機器が占める電力が30%だとすると、PUEは3.3ということになる。つまり、それだけデータセンターでは本来の目的であるサーバを駆動させること以外のことに多くの電力が消費されていることが分かる。その「本来の目的以外の電力」で最も大きいのが、サーバの発する熱を冷やす空調によるものだ。

 データセンターの省エネ化を実現するためには、できる限り電力を使ってサーバを冷やすのではなく、自然の力を使って冷却することが望ましい。そのため、周囲を水でおおわれた海底にデータセンターを設置し、海水で冷やし続けるという発想が生まれたというわけだ。

 クラウドコンピューティングは今や経済成長の大きな活力であり、そのカギを握るデータセンターの効率的な運用は、重要なポイントになると見られている。一方で、全世界の主要な人口密集都市の半分以上が海の近くに存在する。「Project Natick」では、これらの状況も踏まえ、これらの人口密集地帯に近くの海底にオフショアのコンテナ型データセンターを設置するビジョンを描く。海底は簡単にデータセンターの冷却が可能である他、再生可能エネルギーの活用や環境制御なども行えるという利点があるとしている(図2)。

図2 開発したデータセンターはコンテナ型をしており、人口密集地帯の近くの海底に簡単にデータセンターを増設するような未来像を描く 出典:Project Natick

海底型データセンターの利点とは?

 「Project Natick」で実現する海底データセンターは、データセンターの配置から稼働まで90日間で実現するなど、素早い展開が可能だという。そのため自然災害や大規模なスポーツイベントなど特別にデータアクセスが集中するような状況に迅速に対応できる。また、世界人口の約50%が海から200キロ以内に住んでいるということを考えれば、データセンターまでの距離は非常に近く、遅延を抑えて快適な応答性を実現することが可能となるという。

 「Project Natick」は現在は研究段階にあり、実際に運用を評価するような段階はまだ先のことだとしている。ただ、現状の海底で冷やすというだけでなく、さまざまな環境性に優れた機能の搭載を進めている。例えば、完全なリサイクルを実現するデータセンターの実現や、外部からエネルギーを調達することなく再生可能エネルギーによる自家発電でゼロエミッション型のデータセンターを実現することを目指している。

 今回のプロジェクトでの研究は現在搭載されているコンピュータが寿命を迎える5年をめどとしているという。その後は新しいコンピュータを搭載し、再設置を進める計画だ。最終的には20年間の目標寿命の達成を目指すとしている。

 ちなみに「Natick」とはマサチューセッツ州にある町の名前である。開発コードネームであり、特別な意味はないという。


スマートジャパン」は、日本各地の企業・自治体にとって喫緊の課題である電力の有効活用と安定確保に向け、節電・蓄電・発電のための製品検討や導入に役立つ情報を提供します。企業や自治体の総務部、システム部、店舗運営者、小規模工場経営者などの方々に向けて、電力管理や省電力化を実現する製品情報、導入事例、関連ニュースをお届けするほか、製品カタログや利用ガイドなども掲載していく予定です。 http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/