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未来を予測し見えないコトを創造すれば大手に勝てる

未来を予測し見えないコトを創造すれば大手に勝てる

未来を予測して「ユーザー」「顧客」視点で必要とされる価値を創造することが競争優位性を確立するためのカギになる、という話です。

1.コア技術を核として新たな「コト」を生む

中小モノづくり工場の存続と成長には、付加価値の拡大が欠かせません。

高付加価値化で欠かせないのは、お客様視点であり「コト」に着目することです。

「コト」を創出するのは、新たな市場を生み出すのと同じであり、自ら、その市場のリーダーになれるので、価格競争を回避できます。

 

そして、コア技術が反映された技術提案型の事業展開を考えるのが効果的です。

「困りごと、頼まれごと解決サービス+モノづくり」という事業です。

工場の規模に関係なく5年、10年と事業を継続してきたモノづくり工場には必ず強みが存在します。

 

そして、その強みの根拠となるコア技術があります。まずは、このコア技術をしっかりと見極めます。

コア技術を明らかにできたら、文字通りそれを「核」として新たな「コト」を生み出す事業展開、ビジネスモデルの構築に知恵を絞ります

とはいっても、言うは易し、行うは難し……。そもそも、上手いアイデアが浮かばない……。

 

そこで、周囲を見渡して学びます。

2.医療用検査機器メーカーであるシスメック株式会社

訪日観光客の急増によって、インバウンド市場が活況を呈し、小売業や宿泊業をはじめとしたサービス業は、近年、勢いがあります。

その一方で、東芝やシャープに代表される電機メーカー業界が不振であることや、昨今の円高基調から自動車メーカーの今後の先行きが厳しくなりそうな雰囲気であること等でモノづくりの企業全体がイマイチか? と思わされてしまいます。

ますます不確実性が高まっている世界情勢を踏まえると、ガッチリ儲け続けているメーカーの事業展開とはどのようなものだろうか、と気になります。

 

取り込めるトコロは取り込んで付加価値の拡大につなげます。

医療用検査機器メーカーであるシスメック株式会社は神戸に本社を置く、16年3月期連結売上高が2,500億円あまりの東証一部上場企業です。

連結の従業員数が約7,000人の大手メーカーです。

 

2016年3月期の連結純利益は前期比24%増の330億円。7期連続で増加しており、過去最高になる見込みです。

健康診断で血液検査を受けると、赤血球やヘモグロビンの値などが出てきます。

この血球計数検査の検査装置が同社の主力事業です。

 

この血球計数検査に加えて、血液凝固検査、尿検査の分野で世界シェアが首位。

これらの分野に限れば世界の巨大企業(独シーメンス、米ダナハー等)よりも優位性を維持しています。

(出典:『日本経済新聞』2016年3月26日)

2-1.「困りごと解決サービス+モノづくり」視点での製品開発

同社のシェアが高い要因は、検査機器の性能が高いことに加えて「自動化」による高付加価値化が顧客のニーズにマッチしていることにあります。

医療業界は医療費抑制という課題を抱えています。

そこで、同社では検査の前処理や設定の変更、操作などを人手を使わず自動でできる装置を開発し、顧客が人件費削減しやすい環境を提供しました。

(出典:『日本経済新聞』2016年3月26日)

 

「困りごと解決サービス+モノづくり」の視点で製品本体を開発したわけです。

「検査機器の性能が高いこと」というコア技術に顧客の困りごとを解決するサービスを加えた。

ただ、その顧客の困りごとを解決するサービスを無形ではなく、技術によって有形の製品として提供しています。過剰機能が多いといわれる家電製品とは異なる付加機能です。

2-2.製品の提供と価値の提供が持続的な成長の源泉

同社ではさらに、有形・無形のサービスを提供しています。

検査機器の製造・販売のほかに、検査に必要な専用の試薬の製造・販売、販売後のアフターサービスを手掛けています。

15年3月期の品目別の売上高を見ると下記です。

 

  • 検査機器製造販売 32%
  • 試薬製造販売 47%
  • 保守・サービス 21%

 

シスメックの家次恒社長は次のように語っています。

「製品の提供と価値(サービス)の提供が持続的な成長の源泉だ」

(出典:『日本経済新聞』2016年3月26日)

 

検査機器製造販売以外は景気変動の影響を受けにくいようです。そうした事業が全体の7割を占めているのですから収益が安定し成長しやすいのも納得できます。

モノづくり工場でモノだけ造る事業展開のみをやっていては今後ジリ貧です。

付加価値を拡大させるには「ユーザー」「顧客」視点での価値を製品に加えていくことが今後ポイントになってきます。

(出典:『日本経済新聞』2016年3月26日)

3.今から5年先、10年先の未来市場を見通す

「ユーザー」「顧客」視点の価値を探り当てるには、「未来」を見通すことです。

顕在化されたニーズへはすでに競合先や大手企業が対応済みであることが多いです。

会社の規模に関わらず、どの企業も生き残りに必死です。

 

ですから、目に見えるニーズは、そもそも目に見えている形になっているわけで、どこかがすでに事業展開した結果、表れてきたともいえます。

今後のポイントは潜在化されたニーズです。

シスメックの家次社長は成長に向けて事業を拡大させるにあたり次のように説明しています。

 

「収益性や効率性より成長を重視する。これから必要になるものを予測し、新製品を生み出し続ける」

(出典:『日本経済新聞』2016年3月26日)

 

「今」に着目した工場運営や工場経営では収益性や効率性を基準にします。

「未来」に着目するならば成長性を基準にする。

これからのモノづくり事業で欠かせないことは固有技術を磨き上げると共に、将来を見通すことです。

 

顧客も気が付いていない価値を見出すことがたいせつです。

これは大手企業が得意とする規模の経済とか大量生産等とは関係がありません。

小回りが利き柔軟性がある中小モノづくり企業こそ大いにチャンスがあります。

 

機動性のあるモノづくり現場といっしょに頑張れば大手にはないきめ細やかな、かゆいところに手が届いたアイデアも出てきます。

大手に勝てます。未来を予測して「ユーザー」「顧客」視点で必要とされる価値を創造することが競争優位性を確立するためのカギです。

知恵を使って事業を成長させていきます。

まとめ

未来を予測して「ユーザー」「顧客」視点で必要とされる価値を創造することが競争優位性を確立するためのカギである。

 

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所

 


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)