新人へもっと一声をかけるべきだったと考えたこと

新人へもっと一声をかけるべきだったと考えたこと

現場への一声は現場からの情報収集のみではなく、現場が不安や心配を払拭し、仕事へ集中するのを促すことができる、という話です。

 

1.一声(ひとこえ)の効果

 

仕事の結果に加えてプロセスを評価することで共感を生み組織力が高まります。

フォローと評価の仕組みがない現場で、判断基準が曖昧なまま、一方的に管理者が人を評価しても反発を生むだけです。

仕組みなくして人を評価しても反感を買うだけ

 

そして、プロセスを評価するには現場の仕事ぶりを把握する努力が管理者に求められます。

 

ただし、現場の仕事ぶりを把握する作業が軌道に乗ってくると、意外とそれほど多くの労力をかけなくとも十分な情報を入手できます。

毎日、一声、2~3分話をすれば十分であり、これだけの作業の継続で現場の掌握が可能になるものです。

 

モノづくりの現場では、作業者が働き甲斐を感じながら自発性を発揮してもらってこそ継続的な成果を出すことが可能となります。

したがって、管理者は現場の仕事ぶりを把握する業務の優先度を高くします。

 

一声かけることにより、現場と管理者との間の「情報障壁」が取り除かれ、現場の情報が集まりやすくなる管理者側の効果に注目します。

 

一方で作業者へもたらされる効果にも留意します。

逆に言うと、日頃の管理者による一声が不足していると何が起きるかにも意識をしなければならないということです。

 

2.一声(ひとこえ)が不足していると何が起きるか

 

このことを強く思うことになった出来事があります。

今、考えても当時の私の対応にもっと工夫があったのではとの気持ちが湧き上がってきます。

 

機械加工部品の現場の管理者をやっていた時のことです。

若手の人財が新卒で入社し、私の職場に配属になってきたことがありました。

配属後に当人と面談をし、期待していることや今後の育成計画を説明し、その後はメンター役の部下へ、その新人の指導を任せることになります。

不定期に部下へその新人の働きぶりを確認して、まぁ問題はなかろうと判断していました。

 

しかし、残念ながらその新人は現場に定着することなく、1年余りで会社を去っていきました。

メンター役の部下からの話で、どうも仕事が合わないということで会社を辞めたいと言っていることを知り、本人と話をしたのですが……、本人の意思も固く、もうすこし会社に留まって頑張ろうという意欲を沸かせるまでには至りませんでした。

 

こちらとしては最初の1年は慣れてくれればイイという程度のことを考えており、本人へも、焦らずに徐々に力を発揮して欲しいと伝えていました。

しかし、新人は新人なりの想いがあって頑張ろうとしていたようです。

 

その新人が繰り返し口にしていた言葉、「仕事が合わない」。

この言葉を当時は額面通りにとらえていていました。

 

仕事に対するイメージをもって入社してくる新人が現場の現実を目の当たりにして、想いとのギャップを埋められず仕事としてやっていく気持ちが湧き上がらない。

その若手人財が会社を去った原因にはこうしたことも当然あったと思われますが、今、原因はそれだけでなかったかもしれないと感じています。

上司である私も含めた周囲の、新人に対する声掛けが不足していたという、単純にして最も重要な配慮が不足していたのではないかとの思いにも捕らわれます。

 

忙しさを理由に、メンター役の部下がいるとの安易な気持ちで、新人への配慮、不安を取り除き、力いっぱい働いてもらう環境づくりへの配慮が不足していたのではないだろうか?

自分自身の大手企業から複数の中小製造業へ転職した経験から、ますます、強くそう思うようになりました。

どれほど知識や経験を積んだ状況でも、またそこで、ある程度権限を与えられた状況であっても、新たな職場で働く時、自分はこの職場に役に立っているのか、役に立っていないのかという疑問が常に付きまとっていたからです。

新たな職場で自分の存在感を感じることが、意欲を生み出すのにどれだけ大切かを身を持って経験しました。

 

幸いに転職先でも周囲に声を掛けてもらいながら、自分の存在を実感しながら仕事ができましたが、それでも、やはり中小モノづくり現場にありがちな忙しさのために、担当者への「すっかり任された状態」では少々不安な気持ちも感じたモノです。

それだけに周囲の、とりわけ上司に相当する人物からの一言がその不安を除去するのに大きく役立ちます。

こうした想いから、上司から発せられる、現場の仕事ぶりに対する一声の重要性を確信した次第です。

 

先の新人の若手人財へも、もう少し意識して、一声をかけ続ければ、自分が職場に必要な存在であることを実感する機会を持たせることが可能だったかもしれません。

組織を機能させる際の重要なこととして心に刻んでいます。

 

3.現場が不安や心配を払拭し仕事へ集中するために

 

日本経済新聞2016年7月10日に下記のような記事が掲載されていました。

過重労働のためうつ状態になった人が語った上司のその方への対応についてです。

 

負担になったのは、退社時に何も声を掛けない上司の態度だ。

せめて「がんばっているね」とか「助かるよ」という声掛けをして欲しかった。

それがないことが、仕事の辛さに輪をかけたのだという。

この指摘は職場や家庭の人間関係を考える上で大事だ。

脳の中に報酬系と呼ぶシステムがある。

自分が何かに取り組んで達成できると報酬系が刺激され、やる気が引き出される。

すぐに成果が上がらなくても楽しくなくても、褒められると報酬系が刺激される。

ところがこの上司のように何も声かけがないと、自分がどのように思われているかが気になって、仕事への意欲や集中力が落ちる。

思うように仕事が進まず、自信もなくなってくる。

このように、周囲からの声掛けひとつで意欲が変化するし、製品的な不調を引き起こすことさえもある。

(出典:日本経済新聞社2016年7月10日)

 

上司の態度が現場の意欲や集中力に影響を及ぼしており、無関心な印象を与え続けると精神的な不調を引き起こすこともあることが分かります。

 

組織的な働きを生かそうと発想するなら、管理者は現場に無関では絶対にいられません。

一声かけることで現場の仕事ぶり(プロセス)を把握できるとともに、現場に対して、職場での存在感を感じさせることにつながります。

 

今後10年で製造現場は大きく変わります。

ただし、技術的なことが大きく変化しても人のやる気やチーム力の重要性は不変です。

変化の激しい昨今だからこそ、現場に対する一声の価値が高まります。

 

工場オペレーションとして、現場リーダーや各工程のキーパーソンは現場への一声と毎朝30分ミーティングの組み合わせで現場を掌握します。

現場は自らの職場での存在感を感じることで不安や心配を払拭し仕事へ集中できるようになります。

組織上の問題を未然に防ぐためにはとても効果的です。

 

まとめ。

現場への一声は現場からの情報収集のみではなく、現場が不安や心配を払拭し、仕事へ集中するのを促すことができる。

 

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出展:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)