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存続と成長を実現できる工場とできない工場の違い

存続と成長を実現できる工場とできない工場の違い

1.仕組みによって客観的な判断基準を手に入れる

工場運営の狙いは、継続して経営資源を生み出すことです。地道にキャッシュや人財、ノウハウ等を創出する状況を維持させます。そして、このためには“仕組み”が不可欠です。

現場の各工程および全体に適用する判断基準を明確にするためです。特に全体最適を判断するために付加価値を重視します。

仕組みを構築して定着させるというイメージ。工場経営ではこのイメージを持っていることが大切です。試行錯誤をしながら自分たちの強みを見極め、しつこくやり続ける。仕組みの定着には時間がかかります。

したがって、長期的な展望に立った戦略的な視点が欠かせません。

 

戦略的な視点を持った工場経営によって仕組みが現場へ定着、浸透していきます。経営者の想いを反映した“仕掛け”が機能してPDCAサイクルが回り始めるのです。

では、仕組みが定着している工場の強みは何でしょう?

それは、工場の「今」の状態をはっきりと把握できることです。工場の現状を客観的に、定量的に、明確に、理解することが可能です。企業は環境変化適応業とも変化創造業とも言われています。時代の流れは速く、経営環境の変化も激しい昨今です。

 

経営者は変化に対応するために、さまざまな状況で迅速に、的確に、判断を下さなければならない状況に置かれています。不確実性が高い経営環境の下、最適な判断をし続けるには、客観的な判断基準がどうしても必要です。

さらに、判断基準に照らし合わせる判断材料を入手し続けることも必要です。

仕組みは、これらを実現させます。

 

その結果、経営者はあらゆる局面に自信をもって対応できます。なにせ自分で検討し、使い続けてきた判断基準をもとに白黒つけたわけですから。経営者にとって、これ以上頼りになるモノはありません。

重要な決断をした時に、従業員へ説得力を持って説明できますし、共感も得られやすい。勘や経験による判断のみにもとづく工場経営では、早晩行き詰まる懸念があります。

2.仕組みはワクワクする将来を描く道具であり羅針盤である

工場の存続と成長に欠かせないモノ、それは仕組みです。

ですから存続と成長を実現できる工場とできない工場の違いは、仕組みの有無にあります。その工場に適した仕組みを持っているか、持っていないかです。工場の将来がワクワクするモノになるか、あるいは不安を抱えたモノになるか、こうしたことを決定付けるのが仕組みです。

混迷の時代には経営者の判断がその会社の存続を左右します。したがって経営者にとっての最大の仕事は、将来あるべき望ましい工場の姿を描くこと。これが経営者にしかできない将来の収益を獲得するストーリー作りです。

 

さらに、望ましい姿を描く時に、欠かせないモノ。それは「今」の姿です。

現状を客観的に把握すること抜きにして、望ましい将来像を描いても仕事になりません。なぜなら、望ましい姿のみを描いても、現状とのギャップを認識できないからです。

現状と望ましい姿とのギャップを埋めるところに仕事の具体性が見出されます。

 

仕組みがあれば、定量的に「今」を描けます。それを睨みながら、経営者は「将来」のワクワクする工場の姿を描く。そして「今」と「将来」を比べて、「ギャップ」から具体的な課題を設定する。

これが、存続と成長のストーリーを描く手順です。

 

仕組みは、「今」「将来」「ギャップ」を把握するための道具であり、不確実性という大波の海原で、航海を続けるモノづくり工場の羅針盤です。

3.仕組みの客観性で納得感が高まりガゼンやる気が出る

仕組みという羅針盤を手にしたモノづくり工場は、従業員のやる気も引き出します。これは業務の客観性が高まることが背景にあります。

下記のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)による「働きやすい職場環境に関する調査」の結果です。[出典:2009年版中小企業白書 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「働きやすい職場環境に関する調査」(2008年12月)から作成]

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若干古いデータですが、現場の動機付けを図るための参考になります。

正社員が仕事のやりがいと感じることで最も大きいものと、2番目に大きいものを、あげてもらい両者を合計した結果です。

 

この結果を見てどう思いますか?

賃金水準(昇給)が1番になっているのは当然、という感じです。また、社内の地位(昇進)が低いのは意外でした。

従業員が感じているやりがいの内容は、会社の規模に関係なく同じであるという点も興味深い事実です。各項目の分布が、ほとんど一致しています。

 

この中で、従業員が感じるやりがいとして注目すべき項目は「賃金水準」にはおよびませんが、「仕事の達成感」「業務への評価」の2つです。

賃金水準が大企業に及び難いという制約条件は、中小モノづくり工場にとってどうしても避けがたいモノです。ですから、従業員の多くが感じている「仕事の達成感」と「業務への評価」を大切にしたい。

この2つを重視した工場経営で従業員のやる気を引き出す。

 

「仕事の達成感」や「業務への評価」に配慮をした、中小企業ならではの工場経営を展開し、『この会社に入ってほんとうに良かった』と多くの従業員に感じてもらうこと。

これこそが、中小モノづくり工場の取るべき方針です。人財を最大限に生かせます。そして、仕組みがあればその対応ができます。

仕組みがあれば、自分が担当している業務に判断基準が設定されます。業務の客観的な目標が明らかになっているわけです。現場は、そこを目指して頑張れます。

頑張ってそこに至れば、経営者と一緒にガッツポーズです。大きな達成感を感じることでしょう。

 

また、経営者も、目標値をクリアしたという成果に対する評価がしやすくなります。判定の基準がハッキリしているわけですから。

逆に言うと、成果が今一つであった現場に対して、厳しい評価をした場合でも納得感を得られやすいということです。仕組みの客観性が成せる業です。業務への評価に対する納得感、これは工場経営上欠かせないことです。

4.モノづくり工場の未来に向けた明るい展望を現場へ示す

工場が将来、ワクワクするモノになるかどうかは描かれる望ましい姿次第です。経営者の想い次第です。

それには、現状を客観的に把握していることが欠かせません。そして、仕組みがあればそれが可能であり説得力も増します。

中小企業ゆえの制約条件のため抱きがちな現状に対する“不満”も、提示されたワクワクする将来像で解消します。

 

また、現状がどんなに厳しく辛くても、その先の将来に明るい展望さえあれば、工場の現場は踏ん張れます。

夢を描き語ることは、やる気を引き出すことに繋がります。従業員が会社を誇らしく感じるきっかけになります。

未来に向けた明るい展望を提示すること、これは経営者にしかできないことです。

5.仕組みを構築し定着させる意識を持った工場経営

モノづくり工場に仕組みがあること。これが、カイゼン活動等を展開するための前提条件です。

判断基準や評価基準が不明確な状態で色々活動を始めても、上手くいかないことが多いです。

 

客観的な評価ができない。したがって、達成感を感じる機会が得られない。

存続と成長を実現させるためには、他のあらゆる活動よりも仕組みの構築が先です。

 

ただし、仕組みの構築と定着には時間を要します。そのため、仕組みを構築し定着させる確かな意図を持って、工場経営を進めることが重要です。

まとめ

仕組みがあれば、「今」を評価できる。

「今」を知ることでワクワクした「将来」を描ける。

「今」と「将来」のギャップを的確に把握できる。

ワクワクした将来に触れて現場はやる気を引き出され、働きがいを感じる。

工場の存続と成長のために、仕組みは欠かせない。

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)