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品質面から現場の問題を解決する2つのアプローチ

品質面から現場の問題を解決する2つのアプローチ

限度見本と限度緩和は、品質を見つめ直す絶好の機会になる、という話です。

現場の困りごとを品質管理のアプローチで解決することはありますか?

2つの困った状況に着目します。

 

仕様が不明確で、現場は自主的に決めた判断基準の結果で困っている。

仕様が明確で、現場はその基準を遵守できなくて困っている。

 

品質を見える化し、収益にもつなげます。

1.設計品質と製造品質

製品の品質は2つから構成されています。

 

1)製造の時に目標とする品質。
顧客や使用者のニーズに対して企画・設計で設定した機能のレベル。

2)設計品質を狙って製造した製品の実際の品質。

 

前者は設計品質です。

顧客がその製品に期待する「コト」が反映されていて、それらは仕様書に表現されます。

後者は製造品質、適合品質、出来ばえの品質です。

 

日常的に現場で交わされる会話の中に出てくる品質はこちらを指すことが多いです。

製造品質の判断基準は設計品質です。

当たり前ですが、製造品質は仕様書に従います。

 

そして、仕様書は顧客の要望を示したモノであり、品質はそれ以下ではダメですが、それ以上である必要も全くありません。

品質の維持にはコストがかかるからです。

生産数量が増えてくると、その製品の品質レベルが見えてきます。

 

この品質レベルを見極め、余分なコストがかかっていないか検討する意識も大切です。

現状の品質レベルと設定された仕様の差異を認識することから始めます。

2.品質管理体制を敷く余裕がない現場でも継続してやりたいこと

中小モノづくり工場で品質管理を専門に担当する部署を設置している現場は少ないです。

限られた経営資源は、どうしても生産に直結する活動に費やされます。

ですから、品質管理の取り組みが、後回しになりがちなのも致し方がない……。

 

日々の進捗管理で対象となるのは良品です。

不良品や手直し品は除外されるので、当然、良品の流れに意識がいきます。

不良品や不適合品は生産活動の中心にはないので、問題が大きくならない限り、日頃の生産活動で取り上げられることは少ない。

 

ただし、その一方で、品質は競争力の源泉と感じている企業が多いのも事実です。

ですから、現場に品質を意識してもらう工夫は欠かせません。

さて、自工程で発生した不具合品の記録を取っているケースは多いです。

 

全数検査を取り決めている工程があれば、なおさらです。

そして、工場によっては、そうした現場データを元に、不良率等の品質水準の変化をグラフにして、見える化を図っているところもあります。

不良率等の水準変化を見える化するのは、品質を意識させる上でとても有効です。

 

ただし、品質管理の体制が整備されていないと、日々の品質への取り組みはココまでであることがほとんどです。

本来なら、ここからさらに一歩進めて、工場全体で品質管理の取り組みを、体系的に進めるのが理想です。

しかし、なかなかそこまでは手が廻らない。

 

あとは、社外における品質クレームが発生したり、社内で品質事故が発見されたり、大きなトラブルが認識された時点で動くというのが現状です。

ですから、今、できることをやります。

まず、現状の製造品質と製品仕様を照らし合わせる機会を設けます。

 

そのために2つのコトを検討します。

 

1)限度見本を作製し、現場と品質の目合わせをすること。
2)顧客と取り交わした品質の限度を緩和してもらうこと。

 

現場リーダーと各工程のキーマンが品質について検討する場を設けます。

品質を意識する場になります。

さらにもうけのネタ探しにもなり得ます。

3.現場で困っていることをキッカケにする

各工程で記録している不具合品の記録を使います。

各工程のキーマンに現時点で一番困っている不具合、トラブル、不適合を1項目上げてもらいます。

そして、それに関連した製品仕様書を引っ張り出します。

 

現場で困っている事項に該当する仕様書の記述を確認します。

そうすると、現場で困っている状況は、2通りあることに気付きます。

 
1)仕様が不明確で、現場は自主的に決めた判断基準の結果で困っている。
2)仕様が明確で、現場はその基準を遵守できなくて困っている。

 

3-1.限度見本を作製し現場と品質の目合わせをする

仕様が不明確で、自主的に決めた判断基準の結果で現場が困っている場合は、限度見本を作製し、現物で品質の判断基準を見える化します。

仕様のなかで感応的な判断を要する表現が度々見られます。

「キズナキコト」「ムラガナイコト」「有害ナキズナキコト」等々。

 

こうした表現のため、現場が必要以上に厳しく観るケースがあります。

当然、消費財のように少しでも目視でキズ等が認められたらアウト、という製品もあります。

高級車はそうです。

 

ただし、産業材なら、場合によっては現場が品質に過剰に反応していた、というケースがあります。

そこで、仕様書を今一度しっかり解釈し、これまでの実績を踏まえ、品質レベルを“具体的に”表現した現物を準備します。

表面粗さとか、角R具合とか、バラツキ具合とか……。

 

要するに、品質の上限下限の製品を意図的に製作し、品質レベルを見える化します。

そうすることで、品質への目合わせができます。

現場も自信を持って対応できます。

 

特に外観を重んじる仕様では効果的です。

現物を通じて、例えば、塗装品の表面に付着するぶつぶつが、おおよそこれくらいは問題なしという感覚的なことを、現場は実感として理解できます。

品質への曖昧さをなくし、過剰品質をさけ、余分なコストを削減します。

 

3-2.顧客と取り交わした品質の限度を緩和してもらう

最終製品の事は顧客が一番分かっています。

自社の実力を把握した上で、顧客が定めた品質の限度を緩和する交渉をします。

定量的な仕様、感応的な仕様、共に対象です。

 

緩和されれば、これまで不良品、手直し品、不適合品として分類されていた製品が良品の仲間入りです。

当然、業界が驚くほどの品質レベル自体が付加価値であり、競合と差別化されているということであるならば、積極的に働きかけられることではありません。

この場合、本業のモノづくり力を磨き上げるのみです。

 

そうでない場合、顧客の方でも、ただ単に従来の流れで、その仕様を決定している可能性があります。

最終製品の機能を考慮すると、実はそこまでの仕様は不要であったということもあり得ます。

部品等のサプライヤー側から提案することで、顧客が仕様を再検討するきっかけになる場合があります。

 

ただし、その場合、顧客に対して、手ぶらで提案してもダメでしょう。

VA/VE提案という形式をとり、自社で目論めるコスト削減分を折半する等、顧客側の担当者が社内で話を進めやすい状況をつくることも必要です。

自社ブランドで消費者向けの製品を製造している場合は、このあたり、全て自社内での判断です。

 

品質よる自社ブランド維持とコストを天秤にかけての経営者の判断です。

こちらは、交渉力ではなく、経営判断力です。

4.限度見本と限度緩和

品質を専門に担当する部隊が有れば、こうした取り組みも仕組みで廻ります。

品質管理の取り組みは継続性が欠かせないので、本来は、専門の実行部隊が必要です。

しかし、中小現場では、そこまでの体制が敷けない場合がほとんどです。

 

ただ、全ての品質管理活動ができなくても、先の2つの活動は継続して行います。

限度見本と限度緩和の検討。

 

製品の仕様を再確認し、見直すキッカケになります。

品質を見える化しようと努力することにもなります。

品質への意識が高まります。

 

また、収益(コスト)とも直結するので、取り組もうという誘因が働きます。

現場リーダーと各工程のキーマンによるチームオペレーションで自発的に取り組む状況を目指します。

新規製品の立上げに合わせて量産開始時に初期流動管理を実施します。

 

その中で取り組むべき項目として設定すれば、実施の確実性が高まります。

品質活動に限らず、仕組みで業務が自動的に廻ります。

やはり、工場運営や工場経営における仕組みの構築は大きなテーマです。

 

仕組みが出来上がるまでは、管理者や経営者が積極的に、不定期にでも現場に声を掛け、継続的な対応を促します。

限度見本と限度緩和は、トップみずから品質を見つめなおし、儲ける機会を探ることにもなります。

どのような形であれ、現場に対して「品質」をいつも意識させる工夫を実施することが大切です。

まとめ。

2つの困った状況に着目します。

 

仕様が不明確な時で、現場は自主的に決めた判断基準の結果で困っている。

仕様が明確な時で、現場はその基準を遵守できなくて困っている。

品質を見える化し、収益にもつなげる。

 

限度見本と限度緩和は、品質を見つめ直す絶好の機会になる。


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)