同じ「桜」という曲名の存在は問題にならないのか
日本で二番目に多い曲名
今年の春は寒暖の繰り返しで桜も見逃がしたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この季節、テレビやラジオでも「桜」にまつわる曲が多く流れます。
私はケツメイシの「さくら」が好きでよく聴きます。
以前に見かけたテレビ番組で楽曲のタイトルに用いられる花として最も多いのが「ひまわり」で、それに次いで多いのが「桜」だと紹介されていました。ちなみに「桜」は60曲もあるそうです。
商標とCDタイトル
もしCDについて、誰かが「桜」という登録商標を持っていた場合には何が起こるのでしょうか。
登録商標を持っている――商標権を持っている場合、その商標権者は無断でその商標を使う他人を訴えることができます。
「桜」ではありませんが、実際に登録商標と音楽アルバムのタイトルが同じで揉めた事例があります。
シンガーソングライターの井上陽水さんは「UNDER THE SUN」という音楽アルバムをリリースしました。
実は、この「UNDER THE SUN」について指定商品にレコードを含む登録商標を持っている人がおり、その商標権者が井上陽水さんに損害賠償請求をしたという事件です。
確かに井上陽水さんのアルバムは「UNDER THE SUN」の文字をそのまま使っていますが、このアルバムを見かけた消費者は「UNDER THE SUN」は中の楽曲を含む作品を象徴するものであって、創作者や製造者を示すトレードマークとしては認識しないでしょう。
こうした状況を踏まえて、音楽アルバムの「UNDER THE SUN」は商標の使用には当たらないと考え、井上陽水さんの行為は商標権を侵害しないと結論づけられました。
商標は、商品が誰が提供するものなのかを示す標識(マーク)として機能するものです。
そうした機能を目的としない表示がたまたま登録商標と一致してしまっても、商標権の侵害とはならないとされています。
アルバムタイトルが楽曲名などはまさにそのようなケースに該当します。
商標と本のタイトル
この考え方は本(書籍)にも当てはまります。
たとえば、Problem Oriented System(問題思考システム)を意味する「POS」という登録商標が存在する中で「POS実践マニュアル」という書籍が訴えられましたが、これもあくまで「POS実践マニュアル」は書籍の内容を示す題号にすぎず、商標としての使用ではない、すなわち商標権を侵害するものではないと判断されています。
タイトルと著作権
楽曲や本は著作物ではありますが、そのタイトル(題号)は著作物ではなく、著作権による保護ができないものとされています。
いくつもの「桜」の楽曲が存在するのもそのためなのです。