原価低減活動は居候撲滅運動|元トヨタマンの目
自動車の値打ちを造り出しているのは、自動車の製造に直接従事している人たちである。
間接的にしか商品の値打ちに結びつかない管理・間接部門には、人に食べさせてもらっている居候が多くいる。
意識的に居候作業・居候業務を見つけ出し、これを絶滅するよう特に努力しなければならない。
しかし直接商品の値打ちを造り出している稼ぎ手の作業の中にも、必ず居候作業が含まれている。
あるものについては、その作業のすべてが居候作業である、という場合もたくさんある。
さらに居候は人間だけではない。
たとえば、仕掛け終わった時点になっても常に完成品在庫の2箱のうち1箱が引き取られずに残っていたとすれば、この1箱分の在庫は居候部品と考えられる。
原価低減活動はまず居候を見つけ出すことから始める。
居候は人間・倉庫・部品・材料・設備などの中に隠れていて、素人には簡単には見つけ出せない。
しかし一部の専門家に任せていてはだめで、従業員全員で見つけ出して初めて大きな効果が期待できる。
したがって、居候は誰にでも簡単に見つけられるようにしておくことが、どうしても必要になる。
そのような状態にするためには、
第1ステップ:標準作業をはっきり決めること
第2ステップ:標準作業を必ず守ってもらうこと
誰もが守りやすく、誰が見てもそれを守っているかどうかが分かりやすい標準作業を作り、これを徹底的に実施すれば、おのずと問題点は顕在化し、居候はあからさまになってくる。
そして改善への手がかりを容易につかむことができるようになる。
つまり、われわれが作業現場をうまく管理していくためには、目で見て分かるな体制、すなわち「目で見る管理」が一番大切なのである。
しかしここで強調しておかなければならないことが、「たとえば機械加工ラインなどでは製品の1個流しが確立していることのみならず、後工程が平準化して引き取ってくれるような体制でなければ、標準作業なんかつくれない」ということだ。
旧態然としたロット生産なんかをやっている工場では、作業者の判断でいろいろな作業をこなさなければならないため、トヨタ式の標準作業などは作れない。
ゆえに、管理者も作業者の作業の動きまで把握できず、管理者とは名ばかりの無管理者(まさに居候)にならざるをえない。
したがって、上述したトヨタでの居候撲滅運動など展開しようにも、まったく展開できない。
にもかかわらず無理矢理展開しようとするから、ことごとく失敗してしまう。
そして「トヨタ生産方式なんて自動車製造業の、それにトヨタに限ってできることで、俺達の業種には適用できないのさ」ということになってしまう。
トヨタをやめて大企業から中小企業までいろいろな会社をみせてもらったが、すべての会社にトヨタ生産方式は適用できると確信するに至った。
トヨタ生産方式は「ものづくり」すべてに適用できるフロソフィーであると思う。
その他のものづくり以外の産業もすべて煎じ詰めれば「もの」に行き着く。
したがって全産業人に学んで欲しいと願っている。