ものづくりニュース by aperza

リアルにCG化した実在の場所を自動運転車が走る、異業種連携のシミュレー...

2016/11/1 IT media

リアルにCG化した実在の場所を自動運転車が走る、異業種連携のシミュレーション (齊藤由希,[MONOist])

 アドバンスド・データ・コントロールズ(ADaC)とCG映像製作会社のWiseは2016年10月7日、自動運転システムの開発に向けたシミュレーション環境を提供する新会社「バーテックス」を設立したと発表した。

 提供するシミュレーション環境は実在する公道をCG化した映像で、実写の映像とほぼ変わらない類似度を持つ。CGなのでさまざまな条件を自由に設定可能だ。ミリ波レーダーやカメラなどセンサーが認識すべき対象を再現しており、障害物検知のアルゴリズムや、それに対応した車両の制御を行うソフトウェアを検証できる。

 テストコースなどで実車を走行させる前にシミュレーション環境のさまざまな条件下で自動運転システムのソフトウェアの走り方を試せるようにし、自動車メーカーやティア1サプライヤの開発の効率化に貢献する。

シミュレーション環境で再現した東京都中央区銀座3丁目の交差点。アップルストアが見える(クリックして拡大) 出典:バーテックス

システムにとってリアルな環境でシミュレーション

バーテックスの河原隆氏

 バーテックスが目指すのは「先進運転支援システムや自動運転の検証環境をバーチャルで構築して提供していくこと」(バーテックス 社長の尾小山良哉氏)だ。「異業種の2社が協力することで実現したソリューション」(同社 取締役兼、ADaC 社長の河原隆氏)だという。

 ミリ波レーダーやカメラといったセンサーが歩行者や車両などを検知した結果どのような挙動をとるか、システムの統合制御ECUのソフトウェアを検証できる。また、ミリ波レーダーがどのように干渉し合うかといったリアルタイムの100倍以上のタイムラインのシミュレーションには不向きだが、センサーフュージョンでいずれかのセンサーが反応しない場合の制御などの検証には対応する。

 また、人工知能(AI)が障害物の認識を学習する際の教師データとしての活用も提案していく。

 シミュレーション環境のCG映像は、走行しながら撮影したカメラ映像をベースに作成する。レーザースキャナーを搭載した高精度地図用の測量車両で取得した地形の点群データなどもシミュレーション環境の製作に使用できるという。単なる平面のCGではなく、奥行きも含めてCG化している。CG映像は納入先の要望に合わせて作成するため、首都高速道路で自動運転システムをシミュレーションすることも可能だ。

 シミュレーション環境の構築で重点を置いたのはリアルな道路環境であることだ。車線や道路の構造はもちろん、他の車両や歩行者も動き回っている。時間帯を選ぶことで明るさを自由に調整できる他、歩行者を自転車に変更したり、雨天にしたりすることが可能だ。

 障害物検知のアルゴリズムがCG映像中の歩行者や他の車両を認知できるようなリアルさを持たせるため、PSNR(Peak Signal to Noise Ratio)SSIM(Structural Similarity Index for Image)といった客観的な指標でCG映像のリアルさを検討し、高画質であることを確かめた。

自動運転にはシミュレーションが不可欠

バーテックスの尾小山良哉氏

 リアルなCG映像でのシミュレーションにこだわるのは、「自動運転システムの検証には空間データを充実させることが必須だが、公道だけでは現実的には難しい。都合よく条件をコントロールできないので、テストしたい条件がそろうのを待たなければならない。試しておきたい環境の中には、めったに発生しないものもある。あらゆる場所の空間データを取りそろえるのはコストが高過ぎる。さらに、日米欧の自動車アセスメントでは試験内容も膨大になり、実車のみでは対応が難しくなっている」(尾小山氏)。

 シミュレーション環境は、ゲームエンジンと車両の挙動モデル「CarSim」をESSE(Entire System Simulation Environment)上で同期させる形で駆動する。検証したい制御ECUのソフトウェアに基づいてCarSimが車両の挙動を再現、その挙動の通りにゲームエンジン内で車両が走行するよう、リアルタイムにCG映像化する。

 ESSEはこれまで、複数の車両の車車間/路車間通信(V2X)や、市街地の交通流シミュレーションなどで実績があるという。CarSim以外にも、「Simulink」「System C」「Virtualizer」などのツールに対応している。また、ゲームエンジンとECUは、CAN、FlexRay、LIN、イーサネットなど自動車のシミュレーションに必要な仮想バスで接続できる。

 ギガビットイーサネットでESSEにPCを接続することにより、シミュレーション環境を走る車両モデルを増やすこともできる。

学生でも自動運転システムを開発できる

 このシミュレーション環境の利点は「ソフトウェアの修正の成果をすぐに実験できることだ。実車でしか検証できない場合、場所と車両を確保するので修正の効果を試せるまで時間がかかるが、シミュレーションでならパラメーターの変化を確かめやすい」(バーテックス 営業技術部 ビークルシミュレーション担当部長の中西康之氏)。

 また、「ユーザーの対象は自動車メーカーやサプライヤに限らず、学生でも自動運転システムの開発に挑戦できるだろう。クルマを用意できなくても、一定のところまでシミュレーションで検討することが可能だ」(同氏)。


製造業に従事するエンジニアを対象に、モノづくりの現場で働くスペシャリストの役に立つ技術情報や業界の最新動向を提供するメディアです。「組み込み開発」「メカ設計」「製造マネジメント」「オートモーティブ」の4つのフォーラムを中心に、基礎から応用まで多彩な技術解説記事、図版を多用した分かりやすいコンテンツ、話題のトピックスをより深く掘り下げた連載記事など、モノづくりに役立つ蓄積型コンテンツを充実させ、製造業における最新かつ専門性の高い技術情報を発信することで、技術者の問題解決をサポートしていきます。本サイトの名称は、“モノづくり(MONO)” と “~する人(ist)”の造語です。 http://monoist.atmarkit.co.jp/