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モノづくり工場ではますます「人」が主役になる

モノづくり工場ではますます「人」が主役になる

現場作業者へ「指示」ばかりしていませんか?

 

「指示」で現場が期待通りの成果を出してくれていますか? 

現場も一方的に指示を受けるだけではやる気も出にくいかなぁ……。

ガミガミいうだけでは聞いている方もツマランかもしれない。

 

現場のやる気を引き出すためにどうしようか?

心の豊かさ、精神の豊かさが求められる時代がやってきます。

 

  • 「人」に着目すること
  • 収益を確保すること

この2つを両立させます。それを可能にする、自社工場に独自の工場運営や工場経営を構築します。

1.付加価値を拡大するために「創」を実現できる現場を目指す

脚本家の倉本聰氏は富良野塾を開いた時、下記のように塾生に言い続けたそうです。

「金を使い知識をもとに前例に従って作るのが『作』。金をかけずに知恵を使い前例のないものをつくるのが『創』。僕たちは『創』でやろう」

 

中小企業のモノづくり工場がイノベーションを目指すならこの姿勢です。

お金をかけて達成できることは大手企業に任せればイイ。

そもそも、お金をかけて達成できる程度の事ではすぐに追い付かれる。

経営者と従業員が近くて、一体感を感じる機会が多い中小企業ならではの強みを活かすことを、まずは考えたいです。

 

従業員の動機づけを図りながら、ひとりひとりの知恵を引き出します。

こうして実現された新たな製品やサービスならば、簡単には真似されないし、そもそも真似できません。

付加価値を拡大するために「創」を実現できる現場を目指します。

2.オムロンの創業者 立石一真氏が提唱したSINIC理論

望ましい工場の姿を描く際に、参考となる考え方があります。

オムロンの創業者である立石一真氏が提唱したSINIC理論です。

社会のニーズを先取りした経営を目指していた立石氏に必要なのは、未来を予測することでした。そこで、考え出された理論です。

 

今から半世紀近くも昔に国際未来学会で発表された理論ですが、その見通しの的確さには驚かされます。[出典:オムロン株式会社/株式会社ヒューマンルネッサンス研究所のHPと個人投資家のための会社説明(2014年3月20日)配布資料]

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情報化社会を経て2005年から最適化社会を迎え、その後2025年に自律社会に至るとしています。ですから、今は「最適化社会」ということになります。

オムロンのHPでは、下記のように説明されています。

 

  • 工業社会において人類は物質的な豊かさを手にいれた。
  • 一方で、エネルギー、資源、食料、人権などのさまざまな問題が未解決のまま取り残されている。

  • 最適化社会では、こうした負の遺産が解決され、効率や生産性を追い求める工業社会的な価値観から、次第に人間としての生きていく喜びを追求するといった精神的な豊かさを求める価値観が高まる。
  • そこでは、物質的豊かさから、心の豊かさや新しい生き方を求めるといった精神的な価値観が重視され、新しい精神文明に基づく生き方を行動に移していく。

 

インターネットや携帯電話、スマートフォンなどの技術が全くその気配すらなかった70年代にこの予測に至った立石氏の眼力には、ただただ敬服するのみです。

 

この理論はオムロンの「経営の羅針盤」として紹介されています。

新たな価値観を考えるにあたって、「人」の本質、「人」そのものに着目しています。心の豊かさ、精神的な豊かさを重視しています。

この点に大きく共感しています。

 

これからモノづくり工場でも、ますます「人」が重要になってくると考えています。

あらゆる生産活動の源泉は「やる気」であり、その「やる気」の源は精神的な豊かさを得たいという欲求です。

 

職場は一方的な指示に従って仕事をやらされる場という価値観から、自分を成長させてくれる自律性を発揮する場、有能性を実感できる、やる気がわく場という価値観に変化していくと考えています。 

こうした変化に気が付かず、従来の工場経営を続けていては生き残ることは難しいのではないでしょうか。

 

SINIC理論は、開発すべき技術動向、具体的な製品開発の方向性の長期展望を示したものですが、ここで示された「人」に対する考え方は、今後のモノづくり工場の経営に活かすことができます。

「人」のやる気を信じ、それを上手に引き出すことこそ、経営者の最大の仕事であり、経営者自らの想いを実現する最善の方法です。

経営は、結局、「人」に動いてもらって結果を出すもの。経営者の理念に共感を感じることで、やる気も沸くものです。作業者一人一人に対する経営者の期待感や思いやりの念が、現場を奮い立たせます。

3.持続的な競争優位性を確立するために自律性を促す

給料アップや作業環境改善などの目に見える報酬も当然必要です。

ただし、給料アップや作業環境改善である一定レベルを達成できていれば、それ以降は、別の視点が必要です。

持続するやる気を引き出すためには、作業者の精神的なことへの配慮が、重要になってきます。 

 

心や精神的な視点で「人」を大切にする。こうした考えの下では経営者と従業員との間に、本物の信頼関係が構築され、経営者の理念やビジョンが、現場へ遍く浸透していきます。

このような現場では、工場独自のモノづくりノウハウが着実に蓄積されていきます。

 

モノづくりを進化させる新技術・技能が生み出されるきっかけは、いわゆる“暗黙知”です。

漠然としていて、一人一人の“頭”の中に情報的な経営資源として浮かんでくるモノ。

この暗黙知化されている情報は、工場全体で共有されて、初めて組織として活用され、成果を出すことに繋がります。

 

共有されない情報は、しょせん個人のノウハウどまり、事業の成果には繋がりません。

この暗黙知を見えるようにし、工場全体で共有する一連の流れこそがイノベーションであり、こうした作業には大きなエネルギーを要します。

 

現場同士や経営者との意思疎通、互いに連携しながらコトを成し遂げようという一体感、こうした組織文化がなければ、大きなエネルギーを必要とする活動はそもそも実行が不可能です。

「やらされている感」から、知恵は生まれません。イノベーションは生まれず、形式的な仕事で終わるのみ。

心や精神的な視点で従業員を大切にすることで、初めて従業員の自律性が発揮され、結果として新技術・技能の蓄積が進む。強みに一層磨きがかかり、持続的な競争優位性を確立できます。

4.「人」に着目したモノづくり工場が求められる

国内市場が成長期で、需要が右肩あたりで伸びていた時期(国内総生産がそれなりの伸び率で拡大していた1990年代前半くらいまで)は、時間を武器に、とにかく作業時間を最大にすることを考えれば、成果はついてきた。

モノを造れば、それなりに売れたからです。作業量に比例して出来高が増え、売上が伸び、利益もついてきた。

 

このような時代に重視される視点は「自動化」。

そして、人間は自動化がやりにくい工程を担当すればイイ。

需要が増えれば、とにかく稼働時間を増やして対応する。

 

しかし、こうした時代は、既に終わりを告げています。

造れば売れる時代は過去のものです。既に現在の日本人に合った働き方ではありません。

経営環境が大きく変化している今こそ、これからの時代に合った、「人」に着目したモノづくり工場が求められます。

 

自律性を発揮してもらうため。イノベーションに必要な知恵を引き出すため。そして、付加価値を拡大し続ける現場を実現させるため。

有能な人財を獲得し続けるためにも欠かせない視点です。

従業員全員に主役級の活躍を期待したいところです。やる気満々の若手人財を得ることで、経営者は煩わしい現場業務を、現場に任せることができます。経営者は将来のことを考えるのに専念できます。

まとめ

現場のやる気を引き出すためにどうしようか?心の豊かさ、精神の豊かさが求められる時代がやってくる。

  • 「人」に着目すること
  • 収益を確保すること

この2つを両立させる。それを可能にする、自社工場に独自の工場運営を構築する。「人」に注目して、「心」の豊かさ、「精神」の豊かさに着目した工場経営で知恵を引き出す。

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)