モノづくりのデジタル化で生産性を高める前提条件

モノづくりのデジタル化で生産性を高める前提条件

現場のムダをデジタル化技術で解決しようと考えたことがありますか?

 

デジタル化技術で、加工工場の材料歩留まりを高めた事例が、GE REPORT JAPAN Jun 12, 2017に掲載されていました。

ヂャク・ヲゥドゥ氏は、フランス南東部で大型金属加工の工場を経営しています。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)社のチームと連携して生産性を高めました。

 

同氏の工場では、送電網を流れる高電圧電気を変換するための「ガス絶縁変電所」と呼ばれる施設向けに、部品を製造しています。

工場のタスクのひとつに、世界中の変電所で利用されているアルミニウムパイプの切断や組立てがあります。

パイプのサイズは、全長9mと11mの2種類。

年間合計にすると実に20km相当ものパイプを製造しています。

(GE REPORT JAPAN Jun 12, 2017)

 

長さが2種類の材料から、あらゆる部品を切り出すわけです。気になるのは、材料歩留まりです。

材料を切り出すとき、現場では余りを発生させない部品の組み合わせに知恵をしぼることでしょう。

全長9mと11mの材料で、余りがゼロというのが理想ですが、なかなかそうはいきません。

余った材料は、後日、適当な部品の材料にも使えますが、次々と発生する余り材料の管理も容易ではないです。

結局、管理しきれずに廃棄処分になることも多いでしょう。

 

タレットパンチプレス現場の生産管理者をやっていたとき、材料歩留まりが問題になっていました。

加工する部品を最も効率よく材料取りする組み合わせはどうなるのか。板材はサブロクがいいとか、シハチでやるべきだとか。

こういうことを、現場と確認しながらやりました。

何せ製造原価に占める材料費の割合は大きいですから。材料歩留まりが悪いと、損失も小さくないです。

ヂャク・ヲゥドゥ氏の工場も同様です。

 

ヲゥドゥ氏が抱えていた課題は、数学的な問題でした。

パイプを切断する少人数のチームは、注文をこなすために毎月平均で約600本、つまり毎週150本のパイプを切り分けなければいけません。

しかしここ数年、パイプの約10%は最終的にムダにしてしまっていたのです。

作業ミスによるものではありません。材料を余らせずに、規格サイズのパイプを正確に切り出すための計算が難題だったのです。

別の仕事に例えるならば、部屋に床板を敷き詰めるのに必要な枚数を正確に算出し、材料をムダなく使い切る最良の断裁法を探すような時。

こうしたケースでも、同様の問題に直面するでしょう。

余ったパイプ片は「くず鉄」として売ることもできますが、価格は卸値の30%さえも満たしません。

ヲゥドゥ氏によると「以前の作業工程はすべて手動だった」ため、パイプを切り分けられる本数、サイズ、その日のうちに必要な数量などを、個々の作業員が少なくとも1時間かけて計算し、切断手順を最適化していたとか。

同氏は「30年このやり方でやってきたし、改善も試みてきましたよ」と言います。

(GE REPORT JAPAN Jun 12, 2017)

 

そこで、GEチームがヲゥドゥ氏の現場へ入り込み、毎月600本のパイプを切り分ける方法の組み合わせを解析しました。

組み合わせの数は、なんと、宇宙に存在する原子の数よりも多かった!!

つまり、およそ4×10の79乗(!?)通りもの可能性があることを、突き止めたというのです。

 

そうして、その日に切断するパイプの要件から、最適な材料の組み合わせを、瞬時に判断するプログラムを作成しました。

このアプリを使用すると、ヲゥドゥ氏の工場から発生していたスクラップ対象が、10%から4%へ削減できる見込みだというのです。

推定で20万ドル規模のコスト削減です。

 

今後、製造現場は、どんどん変わります。

情報通信技術を上手に使った現場は生産性を上げ、少数精鋭の筋肉質の現場を実現させます。

モノづくりのデジタル化です。

情報、データをモノづくりに生かせる現場と生かせない現場の格差が広がることは必至です。

 

経営者は、常に経営上の問題を整理しておくことが求められます。

一見、複雑で、抽象的な表現しかできない事象を、具体的な表現に変換しなければならないからです。

解決策へ至るには、問題の因果関係をはっきりさせなければなりません。

 

ヲゥドゥ氏の工場では、材料の10%がスクラップになるという問題を抱えていました。

それを解決するために、GEのチームが、問題解決に関連するあらゆる変数を、デジタルデータにしています。

そして、データサイエンスの知識で、数学的に答えを出したのです。

解決までの一連の流れで、ヲゥドゥ氏の工場の現場では、少なくとも2つができていないといけません。

 

1) 受注情報が一元化されていること

2) 製品設計情報が一元化されていること

 

モノづくりに必要な情報が、共有化、標準化されていないと、デジタル化はできないということです。

モノづくりに必要な情報を管理する仕組みがなければなりません。情報の一元化です。

この種の情報が管理されず、担当者任せになっていると、全体最適化どころではありません。

問題解決に至ることはないでしょう。部分最適にとどまるからです。

 

受注情報や製品設計情報が、一元化されていないと、現場の担当者は、調整作業に始終します。

納期に間に合わせることにのみ、意識が向かうのです。差しあたって納期に間に合えばいいのだ、と考えます。

ですから、調整作業に始終する現場では、そこから先の動きがありません。

つまり、生産性を向上させる、コストを下げる、という現場活動が定着しがたいです。

その結果、デジタル化技術を生かす土壌も、生まれにくくなります。

ヲゥドゥ氏の現場では、このあたりがしっかりしていたと推測されます。

だからこそ、GEチームとの仕事がうまくいったのです。

 

情報通信技術や人工知能、デジタル化技術は、私たち中小製造企業にとっては道具にすぎません。

経営者は、モノづくりの現状と問題点を把握することです。そこが儲かる工場経営の本丸です。

それさえできていれば、後は、活用したい道具の専門家にお願いすればいいのです。

 

モノづくり現場の問題解決の主役は、経営者であり現場です。

そうした前提のもと、進化目覚ましい情報通信技術や人工知能、デジタル化技術を是非とも活用したいです。

 

貴社の現場の問題をデジタル化技術で解決するための環境整備をしませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)