トヨタ式問題解決手法|元トヨタマンの目

トヨタ式問題解決手法|元トヨタマンの目

トヨタへ入社してまず面食らったのは「トヨタ式問題解決手法」で会社全体が動いていたことだ。

配属されてすぐに「問題解決をせよ。半年後に役員の前で発表だぞ」。

職場先輩の指導の下、テーマが与えられてデータ収集や分析など矢継ぎ早に指示が飛んでくる。

 

「まだ仕事も何も覚えていない新人に何ということをさせるのか!」とぼやいてみても始まらない。

これを通して、トヨタでの仕事の進め方・考え方を徹底的に教え込むのだ。

まさに鉄は熱いうちに打てだ。私は理解力が鈍く、ほとんど加熱されていない鉄の状態で打たれたため、非常に厳しかった。

 

役員報告のため、発表前は係長、課長、部長と内容のチェックを受けるのだが、そのたびたびにモデルチェンジ状態となり、発表前日はほとんど徹夜状態だった。

当時はワープロもパソコンもなく手書きだったため、内容の変更はすべて消しゴムで消して書き直しになる。本当にいい年をして涙すら出そうになった。

世間一般では問題解決は、プラン→ドゥ→チェック→アクションという実にあっさりとした雛形しかない。

 

プラン:よい計画を立てる
ドゥ:その計画を着実に実行する
チェック:実施した結果を詳しく調べる
アクション:よい結果が続くように定着化をはかる

 

これでは何をどうやっていいのか、具体的でなく分からない。

 

「トヨタ式問題解決手法」
1.問題発見
2.目標設定(低減目標100:必要性からズバリと高い目標にする)
3.要因解析(なぜ? なぜ?…5回以上繰り返し真因へ到達)
4.対策立案
5.対策実施
6.効果確認(20低減できた)
7.問題再発見(100-20=80)
8.目標再設定(低減目標80)
9.要因解析(なぜ? なぜ?:5回以上繰り返し真因へ到達)
10.対策立案
11.対策実施
12.効果確認(20低減できた)
13.問題再々発見(80-20=60)
14.目標再々設定(低減目標60)
15.要因解析(なぜ? なぜ?:5回以上繰り返し真因へ到達)
16.対策立案
17.対策実施
18.効果確認(20低減できた)
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   ・
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当初の低減目標100を達成するまでこの「管理のサークル」を回し続ける

 

そして、この一連の活動をA3用紙1枚にまとめる訓練をする。

大学時代まで一度も経験したことにない思考過程を強要され、「トヨタって世の中と違った社会だ」とカルチャーショックさえ感じた。

 

韓国でのセミナーで次のような質問を受けた。

「なぜ『問題発見』を一番最初にもってくるのですか?」

 

私の回答

「トヨタはすべての現場作業に関して標準作業票を作って現場に掲示してあります。その標準作業票と実際の作業が違っていたらそれが『問題点』と認識されます。

さらに製造変動費を油や軍手に到るまで、前半年間と比較した予算管理していて、それに赤字が出れば、それが『問題点』と認識されます。

このように会社が問題点を顕在化させる体制を徹底的に構築しています。トヨタマンが現場を歩けば、そこらじゅうに問題点が目に飛び込んでくるようにしているわけです。

このように問題が発見できる体制を構築しているために、『問題発見』からいきなり入れるのです」

 

さらに次のような質問も受けた。

「なぜ『目標設定』が2番目にきているのですか? 普通なら『要因解析』をした上で、いわゆる『当たりをつけた』上で、達成可能な目標を考えるのではないですか?」

 

私の回答

「できるかできないかの可能性を先に考えるのではなく、必要性からズバリ目標を決めて、そのあとで可能性を考えることです。

また、他社・他部署と同類の目標(不良率等)はAクラスを狙います。達成してもBクラスという目標はだめです。

大事なことは、高い目標を掲げて、その目標達成のためには何をしなければならないかを真剣に考え、知恵をふりしぼることです。

また目標は誰にも分かる分かりやすいものにしなければなりません。できるだけ具体的に、数量的に表現します。

そのために『何を』『いつまでに』『どれだけ』といった条件を明らかにすることが必要です。

定量化できるものは、定性的な表現にとどめておいてはだめです。

また会社方針、工場方針、部方針、課方針などの目標にも必ず合致するようにすることが必要です」

 

ノーベル物理学賞を受賞された益川教授がテレビキャスターの「どのようにしたらノーベル賞を受賞できたのですか」という問に対して次のように答えられていた。

「目標はなるべく高く置き、そこに到る努力を地道に行ない、決して妥協しないこと」

これは「トヨタの考え方と同じだ!」と感じ、感動してしまった。

 

P.S.
トヨタの渡辺社長が「パワーポイント」でのプレゼンに苦言を呈された。

それは上記のようなトヨタの論理だった思考とそれをきちっとまとめて報告するやり方が崩壊してしまうからだ。

私もパワーポイントは多用するが、トヨタでの問題解決教育を受けた上での使用なので大目にみてもらうことにする。基礎のない方のパワーポイント使用はやはり危険だと思う。

 

元トヨタマンの目
toyota-consulting.com/” target=”_blank”>トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。