トヨタの工場自主研についての説明|元トヨタマンの目

トヨタの工場自主研についての説明|元トヨタマンの目

トヨタ工場では工場持ち回りで毎月1回、製造トップの副社長以下の役員・各工場の部次長が出席し、2つの課の現場改善事例発表会が開催される。

「ええーー、そんな頻度で?」と驚かれるかもしれない。しかしトヨタは巨大企業で「課」の数はおびただしくある。

したがって1つの課にしてみれば数年に1回ぐらいのことなので、それほど負担ではない。

 

しかし発表が決まった課は、その半年まえから発表の準備が開始される。その課において「部課長自主研」が発足するのだ。

部課長自主研とは工場内の各部の課長以上の管理職の中から指名された数名と発表する課の課長、改善対象工程の工長(係長)、組長等がメンバーとなり、改善活動を行なうものだ。

毎週火曜日の午後がその活動時間と決められている。したがって工場の各種会議もこの時間に開催することを禁止している。

 

このようにいろいろな工程の人で組織される理由は、違う工程を熟知している者が集まれば、違った視点から当該工程を見ることができ、画期的な横展や改善案が出ることがあるためだ。

また管理職にしている理由は、管理職という上位者でないと現場に対して指示が出しにくいためである。

ちなみにこの改善活動が行なわれる課のことを、改善が進み多くの改善効果が得られるという意味で「受益部署」と普通呼ばれていたが、彼ら自体は「受難部署」と影でぼやいていた。

 

まさにこの活動期間である半年間は、その課やメンバーは極めて忙しくなる。

私も何度もやったが、宿題なども出されて非常に大変だ。毎週すぐに火曜日が訪れる感じだった。

トヨタは工場の大きな改善を進めるためには、この部課長自主研のように「人」「時間」「金(予算が出る)」をきちっと準備してから行なわせる。

 

いろいろな会社を見せてもらうと、このような体制や準備を行なわれないまま、ただただ現場にムチ打って「改善しろ! 改善しろ!」と叫んでいるところが多く見受けられる。

やはりトヨタのような用意周到さがないと、改善は進まないは、人はつぶれるは、労使関係は悪くなるはで、いい結果が生まれないばかりか悪い方向へ行ってしまう。

このようなトヨタの優れた点も、トヨタを退職していろいろな会社を見ることで気づくことができた。

 

トヨタ生産方式とは、このようにいろいろな事を本質まで突き詰めた上でその体系が組み立てられているように思う。

 

元トヨタマンの目
toyota-consulting.com/” target=”_blank”>トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。