トヨタでの改善提案の内容|元トヨタマンの目

トヨタでの改善提案の内容|元トヨタマンの目

トヨタには創意工夫提案制度がある。

トヨタに入社し、実習中にも提案させられた。まだ実務もやってないのに、ムリだと思ったが、何でもいいから出せという。

当時はRV系の背の高い車がなかったので、そのようなことを提案したように記憶している。そんな提案にも最低ランクの500円の賞金をくれた。

 

どんな内容でもいいのだ、なにせ従業員から提案を出させることに徹底的にこだわっている。

だから毎月、膨大な数の提案がトヨタの従業員からは出される。その提案の質が経験を重ねるうちに上がってくる。

そうなるとプライドができて、アホな提案など出せなくなる。また年次が上がるに従って採点にも制度的に厳しさが加えられている。

 

かんばんは当初、すべてビニールケースへ手作業で印刷した紙を差し込んで作っていた。

それを各工場の生産管理の人達が1つ1つ改善を積み重ねて、とうとう「電子かんばん」にまで進化させた。

この間、20年ぐらいかけている。

 

外の人がこの現象をみると、トヨタの提案とは従来とまったく違う「脱・常識」の提案ばかりを出しているように見えるかもしれない。

これは違う。

トヨタ生産方式の憲法に抵触しないよう心がけながら、「常識」の範囲の小さな改善を積み重ねて、結果として「脱・常識」といった状況を実現させているのだ。

 

だからトヨタ生産方式を導入しようと思ったら、トヨタが積み重ねてきた歴史をすべて1つ1つ紐解いてみる必要がある。

往々にしてそれをしないで、すぐにトヨタの成果の部分に飛びついてしまう。

こうすると必ず失敗する。

 

元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。