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ソニーのデバイス部門が赤字転落、大黒柱のイメージセンサー変調で増産見直...

2016/10/31 IT media

ソニーのデバイス部門が赤字転落、大黒柱のイメージセンサー変調で増産見直しへ (三島一孝,[MONOist])

 ソニーは2016年1月29日、2016年3月期(2015年度)第3四半期の決算を発表した。第3四半期単体の業績では、売上高は前年同期比0.5%増の2兆5808億円、営業利益は同11.0%増の2021億円、税引き前利益は同15.2%増の1933億円、四半期純利益は同33.5%増の1201億円と順調な回復傾向を示した。第3四半期単体の営業利益で2000億円を超えたのは2007年度以来の8年ぶりのことだという。

ソニーの2015年度第3四半期連結業績出典:ソニー

 2015年度第1〜第3四半期累計の業績についても、売上高は前年同期比0.1%増の6兆2816億円、営業利益は同132.7%増の3871億円、税引き前利益は同176.4%増の4042億円となり、純利益については同2553億円改善し2361億円となった。

ソニーの2015年度第1〜第3四半期累計の連結業績出典:ソニー

課題事業の収益力は確実に改善

 ソニーでは、2015年〜2017年度にかけて、平井一夫氏が社長兼CEOに就任してから第2期の中期計画を進行中だ。第1期3カ年計画では「構造改革をやり抜く」をキーワードに、テレビやゲームなどの赤字事業の安定収益化に向けて取り組みを進めてきた。今回の中期計画では「利益創出と成長への投資」をテーマとし、「規模を追わずに収益性を重視する」を強調するなど、収益性を意識した取り組みを進行している。また、事業の位置付けを「成長けん引領域」「安定収益領域」「事業変動リスクコントロール領域」の3つの領域に分けて、リスク管理などを行っている(関連記事:エレ各部門を分社化するソニー、復活のカギはリカーリング事業にあり!?)。

ソニー 代表執行役副社長 兼 CFO 吉田憲一郎氏

 今回の2015年度第3四半期決算でもこれらの成果が確実に出ている。スマホの市場変化などにより、構造改革を進行中のモバイル・コミュニケーション部門については、売上高は前年同期比14.7%減少したものの、営業利益は131.7%増の241億円と改善。またPS4やネットワークビジネスが好調なゲーム&ネットワークビジネス部門は売上高が同10.5%増の5871億円となった他、営業利益も45.6%増の402億円となり増収増益となっている。デジタルカメラなどのイメージング・プロダクツ&ソリューション部門は売上高は同5.0%減の1919億円となったが、営業利益は20.3%増の237億円となった。

 さらにテレビを含むホームエンタテインメント&サウンド部門は、売上高が同4.3%減の4020億円となったものの、営業利益は同20%増の312億円となった。テレビ事業単体で見ても、売上高は同0.8%減の2785億円、営業利益は同70.9%増の159億円となるなど、黒字体質が定着している。

 ソニー 代表執行役副社長 兼 CFO 吉田憲一郎氏は「『規模ではなく違いを追う』をキーワードに顧客は誰で市場と販路はどういう形が適切かを考えて均衡点を探りながらオペレーションを進めており、その成果が出ている。販路改革などもうまくいき意思決定のスピードが上がっている」と手応えについて述べている。

ソニーの第3四半期のセグメント別業績出典:ソニー

 一方で、新たな課題として急浮上してきたのが、稼ぎ頭になっていたデバイス部門である。

変調するスマホ向けイメージセンサー

 変動が激しいソニー内の各事業の中で、唯一ここ数年毎年大きな黒字をたたきだしてきた事業が、デバイス部門のイメージセンサー事業である。しかし、ここにきて大きく変調し2015年度第3四半期は、予想を大きく下回り営業赤字に転落している。電池事業の悪化による減損やカメラモジュール事業の立ち上げ失敗などの影響も大きいが、予想外だったのが、大黒柱となってきたイメージセンサー事業である。

デバイス分野の第3四半期業績動向出典:ソニー

 同社のCMOSイメージセンサーはハイエンドのスマートフォン向けでは圧倒的な競争力を持ち、高いシェアを維持している。2015年度も上期までは想定以上の引き合いがあり、生産が追い付かず顧客からの引き合いを断る状況が続いていたという。しかし、増産体制を整えた秋口には市場環境が変調。顧客は戻らず需要も戻らない状況に陥った。さらに追い打ちをかけたのが大手顧客へのカスタム品である。

 吉田氏は「ある大手顧客に対するCMOSイメージセンサーのカスタム品は、そのまま他の顧客に提供ができない専用のものとなっており、開発に5カ月くらいかかる。そのため、供給不足時に増産体制を整えて、いざ供給できるようになった際に顧客側に需要がないという状況は業績的にも大きなマイナスになる」と述べる。

 これらの供給過多の状況に対応するため、従来予定していた増産体制を見直すという。2016年9月までに月産8万7000枚の生産体制にする予定だったが、このうち2割程度に当たる他社委託分を中心に、計画の後ろ倒しもしくは下方修正を行う見込みだ。

イメージセンサーの総生産能力の推移出典:ソニー

スマホの潮目は変わった

 さらに懸念されるのが、この状況が一時的なものではないことである。ソニーではイメージセンサーの需要について「2016年度第1四半期からは回復する」としているが、従来のように圧倒的な収益力を維持するのは難しいという認識だ。

 吉田氏は「2016年度第1四半期については既に注文が入っているので、回復する可能性は高いと見ているが、その後のことについては分からない。当社としては『スマホの環境は変わった』という認識だ。ドル高と新興国通貨の弱体化、石油安の影響などで新興国メーカーの購買力が低下している。総合的に考えて、スマホのハイエンド市場は横ばいかもしくは減るという見通しで2016年度の計画は練り直しているところだ」と懸念点について語っている。

 ただ、中長期的にはデバイス部門を「成長けん引領域」としている位置付けについては変わらないという。「中長期的には、イメージセンサーを核とする位置付けについては変更するつもりはない。技術的な優位性は保持し続けている他、将来的に車載向けやIoTなどで広がっていくからだ。そこに向けて、顧客ベースの拡大や用途の拡大などへの取り組みを進めていく」と吉田氏はイメージセンサー事業の方向性について語る。

デバイス分野の営業利益の内訳推移出典:ソニー

構造改革のもぐらたたきは続くのか

 今回、これらのデバイス事業の下方修正があったのもかかわらず、通期目標については変更せず、2015年10月時点での見通しを維持している。これは課題事業とされてきたエレクトロニクス製品事業が堅実に好転してきたという点と、リスク変動に引き当てるために用意していた800億円の資金によるものだ。

 しかし、今回のデバイス部門の変調により、リスク変動に対応するバッファは300億円になったという。ソニーでは、課題事業の再生に取り組んでいる間に、順調だった事業が悪化し、また構造改革に取り組むというような、構造改革の“もぐらたたき”のような状況が何年も続いている。構造改革中のモバイルコミュニケーション部門はようやく改善の兆しが見えつつあるが、デバイス部門の不調がこのバッファの300億円を食いつぶすようなことにでもなれば、また、新たな構造改革フェーズへと陥ることになる。

ソニーの2015年度通期の連結業績見通し出典:ソニー


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