イノベーターが「得」する環境を整備する

イノベーターが「得」する環境を整備する

イノベーションのきっかけとなる人材を育てていますか?

1.イノベーションと産業革命

イノベーションは自然発生的に起きるものではありません。

イノベーションは起こすものです。

ですから、イノベーションを起こせる人材が必要となります。

 

自社のコア技術を熟知した人材を計画的に育成するところからです。

そして、イノベーションを起こせる人材に育て上げます。

アイリスオーヤマは利益が出ない市場を回避している

 

歴史的に最もインパクトのあるイノベーションは、1750年代の英国で始まった産業革命です。

では、どうして、産業革命が英国で始まったのか?

 

それは、発明をビジネスに結び付ける素地が当時の英国に整っていたから。

一橋大学准教授の清水洋氏は、このように説明しています。

 

歴史に残る水準のイノベーションが英国で起きました。

ですから、当時の英国の科学技術水準が高かったのではと推察したくなります。

が、当時の英国の科学技術の水準は、

フランスや中国などに比較して、決して高かったわけではないそうです。

また、人的資源の点でも英国が、他の欧州諸国より優位だったわけでもありません。

 

一般的に、イノベーションが起きるのは、野心的な企業家の存在が大きいと考えられます。

そうすると、当時の英国に、

たまたま、カリスマ性のある企業家が、

次々と現れたことになり、こうした説明も不自然です。

 

清水氏は、

産業革命が、

英国で始まった重要な要因に、

・近代的な所有権の確立

・知的財産権を保護する特許制度の成立

を挙げています。

 

イノベーション個別の案件ではカリスマ企業家の顔がクローズアップされます。

しかし、

当時の英国の経済活動全体からすると、企業家を支える制度や環境のほうが大切でした。

 

英国は、他国に先駆けて、

1624年に専売条例を制定し、新しい製造物に対して専売権を認めています。

 

発明から経済的な価値を生み出す仕組みができ、発明とビジネスがつながったのです。

この条例で、英国の技術者は、発明で大きな富を手にすることが可能となりました。

(出典:日本経済新聞2016年1月25日)

 

技術者の発明を経済的に正当に評価する制度を設けたわけです。

技術者にインセンティブを与えました。

 

自らのアイデアがお金につながる、となれば開発スピードも上がります。

また、発明で資金を手にできれば、それを元手に、さらなる発明への再投資も促されます。

英国全体のイノベーションのエネルギーが他国と比較して当然に高まります。

 

そうした結果、産業革命レベルのイノベーションが起きる下地が整いました。

英国では、産業革命が起きる必然性があったということです。

 

清水氏は下記のように締めくくっています。

イノベーションを生み出すには

イノベーターがきちんと「得」をする仕組みが必要なのです。

優秀な英雄的企業家の出現を

待っているだけではイノベーションが次々と生まれる状況はできません。

(出典:日本経済新聞2016年1月25日)

 

2.現場でイノベーションを生み出す環境づくり

イノベーションを起こすのに偶然はない、と清水氏は説明しています。

イノベーターは、経営者が計画的に育てるものなのです。

 

若手がイノベーターとして活躍できる環境を整備します。

さらに必要なのは、イノベーターや支援者がきちんと「得」する仕組みを構築することです。

 

ところで、モノづくり現場で「得」する仕組みづくりで注目すべきことがあります。

報奨金のような外発的な動機付けに基づくインセンティブ「以外」のものです。

内発的な動機付けに注目します。

 

それは、自律性と有能性に注目した仕組みづくりです。

 

自律性とは自己決定感のことです。

やらされ感とは対極にある、自らの意思決定で事をすすめられる感覚です。

例えば、

大きな方向性を若手へ提示するけれども、

具体的なテーマやそのやり方は若手に任せるやり方です。

 

また、有能性も感じることも重要です。

自分はチームに欠かせない存在であると実感できること。

やれば自分はできると感じること。

例えば、第三者による評価です。

自分はチームや組織の役に立つことができたと感じ、達成感を得ることができます。

 

だから、若手には、自律性や有能性を感じる機会が必要なのです。

日常的なやりとりのなかでも、そうした機会をつくることができます。

 

例えば、「ねぎらいの言葉+ほめ言葉」の組み合わせた声かけ。

 

若手がいい仕事をした時に、掛ける一声にも工夫を加えます。

・とても良い結果が出たね。

・今回の仕事はとても大変だったね。

・今回の仕事はとても大変だったけれども、良い結果が出たね。

 

3番目の表現を耳にした若手は、有能性をより強く感じることでしょう。

仕事の結果は当然のこと、

自分の大変だった気持ちや頑張りも理解し、評価してくれていることを実感できるからです。

次のステップへ向けて、気持ちも前向きになります。

 

現場では自律性や有能性を若手に感じさせる環境を整備して下さい。

その結果、イノベーションが起きる土壌が醸成されます。

 

「イノベーションを生み出す優秀な英雄的な若手」は自然と生まれることはありません。

イノベーションを起こしたかったら、現場の環境整備が欠かせないのです。

 

ここで、留意点があります。

それは、自律性重視と放任・丸投げとは異なるということです。

 

放任や丸投げでは、有能性を感じる機会はありません。

 

丸投げ状態にも関わらず、

問題が発生した時になって、

それまで頑張って仕事を進めていた若手に

あれやこれや説明を求め、

挙句の果てに

「なぜ、問題が起きる前に相談をしてこなかったのか」

などと非難するのは論外です。

 

仕事ぶりをしっかりと見つめ続け、

正しく評価することが、

「得」する仕組みを構築するのに欠かせない若手を見守る上司の姿勢です。

 

若手にとって、「得」とはお金だけではありません。

自律性や有能性を感じさせることも「得」なのです。

 

イノベーターが「得」をする仕組みをつくりませんか?

 

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出展:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)