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この3つを無視するとカイゼン活動は失敗する

この3つを無視するとカイゼン活動は失敗する

現場改善活動を進めるにあたって、弱みが気になっていませんか?

 

安定して利益が出ない工場なので、なんとか足腰を鍛えたいけど……。

現場の悪いトコロばかりが目について、そこから直さないとなぁ。

赤字脱却のためのカイゼン活動を始めるキッカケはどうすればイイのだろう?

 

弱みではなく、強みに着目します。

利益分析をして、強みが生かされているかどうか知るところから始めます。

創業当時の経営者の想い、やりたかったことを思い出します。

1.モノづくり中小企業の収益性を鳥の目と虫の目で見る

1980年代以降、モノづくり中小企業では高収益企業と低収益企業の格差が広がっています。

赤字で苦労している現場は、とにかく一日でも早く、存続と成長に向けた一歩目を踏み出す必要があります。

カイゼン活動やイノベーション活動に取り組むにあたって、注目すべき論点を整理します。

 

ところで、下記のグラフは製造業の企業規模別に見た売上高経常利益率の1980年代、1990年代、2000年代、2010年以降の4つの年代の平均値の推移です。
(出典:財務省「法人企業統計調査年報」2015年版中小企業白書)

つまり、製造業で収益性の高い企業も、収益性の低い企業も、全てを含めた平均値の推移です。

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企業規模にかかわらず、1990年代は下降傾向にありました。ただし、その後は違います。

大企業が1980年代を上回る結果を出して伸びているのに対し、中小企業製造業では、回復傾向にあるがペースは遅く、現在やっと1980年代並みに戻っているという状況です。

平均では黒字を維持しています。

 

全体傾向を把握する大局観は重要です(鳥の目)。

ただし、同時に個別具体的に把握する「三現主義」に沿ったミクロの視点(虫(蟻)の目)も欠かせません。

モノづくり中小企業業界全体の動向としては2010年以降、回復力は弱いながらも30年前の利益率に戻ってきた、となりますが……。

 

現実は、低収益企業の収益悪化が中小企業モノづくり業界全体の収益をかなり下押ししていることがわかります。

大局観とミクロの視点から分析することが本質を把握するために大切です。

2.まず分析、そして自社工場の強みに着目する

さて、自社工場で、この鳥の目と虫の目を具体的に考えます。

まず、鳥の目で工場全体の利益を把握します。

これは、決算で出る数値なのですぐに把握できます。

 

そして、虫の目です。製品ごとに利益率と利益額を評価します。

ここでの利益は付加価値です。

 

製品単位の付加価値額は、

付加価値額@G = @単価-@材料費-@外注費-@残業

 

なお、損益計算書の全部原価計算に基づく製品別利益は不要です。

製造原価のうち固定費部分が製品在庫政策の影響を受け変動するからです。

現場の頑張りとは無関係に変動する要因は除きます。

 

利益率(赤字率)と利益(損失)額の組み合わせで各製品を4つに分類します。

それまで、分けて考えたことがない製品群を儲けという新たな視点で“分類”することに意味があります。

 

1)利益率大      利益額大
2)利益率大      利益額小
3)利益率小      利益額大
4)利益率小/赤字率   利益額小/損失額

 

ここまでの「見える化」をします。

戦略を考えるために、儲け具合を客観的に把握します。

これ抜きの戦略では、的を射ることなく無駄に終わるか、最悪もっと悪い事態を導く危険があります。

 

先入観、固定観念に基づいた判断になるからです。

部分最適と全体最適のバランスをとることができません。

現場の納得性も得難いです。

 

ここで、自社工場の強みと弱みと上記4つの分類を照らし合わせ、

「強みと弱みが上記4つの分類へどのように影響しているか」を分析します。

 

  • 強みが利益を確保するのに十分に生かされているか?
  • 強みにもかかわらず利益への貢献が少ないトコロはないか?
  • もっと伸ばすことでより大きな利益に繋がる強みはないか?

 

主に「強み」に着目して分析します。そして、その後に具体的な対応策の検討です。

ここから先は、各工場独自のやり方になります。

当然、経営者の想いも入ってきます。

 

ただ、ここでも大切なのは強みに着目して戦略を考えることです。

弱みを克服するよりも、強みを伸ばす。強いところを伸ばして、付加価値につなげる。

その結果、利益が増える、というストーリーを立てます。

 

不得意科目よりも得意科目を伸ばして受験に合格するアレと同じです。

得意分野で頑張るのは前向きな気持ちになりますから。

現場のやる気を引き出す上でも大切です。

 

強みと組織については、ピーター・ドラッカーも下記のように言っています。

強みこそが機会である。

強みをいかすことが、組織に特有の目的である。

もちろん組織は、人間それぞれが持っている弱みを克服することはできない。

しかし、組織は、人間の弱みを意味のないものにしてくれる

(出典:『経営者の条件』ピーター・ドラッカー)

3.経営者の想いとやりたいこと

赤字で苦戦している現場は、強みを生かして存続と成長を図る戦略を考えます。

全体では赤字でも、高い利益率を維持していたり、利益が大きかったりする製品はいくつかある。

そこから強みを活かす切り口を探します。

 

さて、ここで、今一度、想い返したいことがあります。

「経営者の想い」や「やりたいこと」。

モノづくり工場を創業した時の想いです。

 

そして、やりたいことこそが、今の強みであることを確認します。

やりたいことと強みは概ね一致します。やりたいことを思い出し、それに注力します。

自社工場では、やりたいことへ経営資源を集中させることが必要です。

 

困った時は原点に帰る。

ソニー株式会社(創業当時:東京通信工業)の創業者の一人である井深大氏は、会社の設立目的の一番に次の文章を掲げました。

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由豁達にして愉快なる理想工場の建設」

 

また、ホンダの創業者である本田宗一郎氏について元F1ドライバーの中島悟氏は、以下のように語っています。

本田宗一郎という人は、初めから世界一の車作りをめざしていたのではなく、最初は自分の喜びのために車作りをしていた人だと思っている。

自分の喜びのために車作りの技術を追求していったら、そこに自動車先進国のヨーロッパがあった。

そこで技術の高さを証明しなければ、自分が一番だといえないと考えたのではないだろうか。

だから、“競争していかなければ、技術はさびてしまう”

“競うことをしなければ進歩がない”とよく言っていた

(出典:『小学館版学習まんが人物館 本田宗一郎』竹内均、1996年)

 

モノづくりは本来楽しいものです。

知恵と工夫を重ねて、“素材に価値を加える”仕事はやりがいを感じる機会も多い。

工場勤務で新製造プロセスの開発に携わっていた時、仲間といっしょに、それこそ寝食忘れて打ち込んでいました。

 

根底にはモノづくりの面白さがあったことは確かです(なかなかゴールに至らず苦労はしましたが)。

ウチの今あるモノづくりの強みは、創業時の想いから得られた貴重な財産だ、という意識を現場と共有することで、一体感が高まります。

モノづくり工場の強みの歴史を知って、現場が自分もその一部だと理解できます。働きがいも強くなります。

 

そして自社工場の強みを理解しやりたいことを知ることで経営者の想いも浸透します。

前向きな気持ちを持って踏ん張る必要がある局面では、工場の原点をみんなで確認し、動機づけを図ることも必要です。

仕事のよりどころを確認して動機づけを図ります。

 

現場の作業者にとっての工場は、一生をかけて頑張ろうとしている職場です。

経営者の想いに共感して、踏ん張ってくれます。

カイゼン活動などの取り組みを成功させるキーワードは、分析、強み、それと経営者の想い(やりたいこと)の3つです。

これのうちのどれ一つ抜けても失敗します。

まとめ

赤字脱却のためのカイゼン活動を始めるキッカケはどうすればイイのだろう?

弱みではなく、強みに着目する。

利益分析をして強みが生かされているかどうか知るところから始める。

工場の強みと製品毎の利益分析の結果を照らし合わせて問題解決の糸口を探る。
出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)