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【振動解析と診断】vol.1 振動解析の概要

【振動解析と診断】vol.1 振動解析の概要

これまで、回転機械の状態監視システムに使用されるセンサから各種モニタに関して説明してきましたが、今回から数回に渡り回転機械の振動解析と診断に関して説明します。

振動解析と診断とは

振動解析を含む回転機械の解析・診断を身近なものとの比較で分かりやすく説明するためによく用いられるのが、人の健康診断だと思います。

その例に従って説明すると、血液や尿を採取してその成分を分析したり、心電図をとって心筋で発生する微弱な電位をグラフ化したりすることが、機械における潤滑油の分析や振動解析に相当します。

また、血液検査の結果や心電図等から人の健康状態を診断したり、検査結果に異常がある場合には、その原因となっている病気やその兆候を特定することが、機械においては潤滑油分析や振動解析結果を基に、機械の健全性を判断したり、異常兆候がある場合には、それがどの部分でどういう原因で発生しているのかを特定する、異常診断ということに相当します。

 

この回転機械の解析・診断手法として最も一般的に振動解析が利用される理由としては、計測しやすい、リアルタイム性があるといったことと、多くの異常状態が振動現象として現れ、またその振動データが異常状態ごとの特徴を持っている、つまり振動データが多くの情報を持っているということが挙げられます。

ISO機械状態監視診断技術者(振動)、いわゆる振動診断技術者のテキストである『ISO基準に基づく機械設備の状態監視と診断(振動 カテゴリーⅡ)【第2版】振動技術研究会(v_TECH)』によると、代表的な振動解析法として以下の解析法が挙げられています。

 

1.時間領域の解析

時間波形、振幅の確率密度関数等を利用して、振幅の大きさや、時間的変動、波形の衝撃性・対象性などを解析する。

【図1の(a)に時間領域の解析例として波形グラフを示します】

2.周波数領域の解析

FFT(高速フーリェ変換)等を利用して、振動にどのような周波数成分(スペクトル)が含まれているかを解析する。

【図1の(b)に周波数領域の解析例としてスペクトルグラフを示します】

3.空間領域の解析

リサージュ(オービット)図形等を利用して、回転軸中心が空間的にどの様な軌跡をたどって運動(振動)しているかを解析する。

【図1の(c)に空間領域の解析例としてオービット図を示します】

 

さらに、回転軸(ロータ)の危険速度より高い回転数で運転するフレキシブルロータにおいては、ポーラ線図やボード線図等を利用して、回転同期成分(1X)の振動振幅値と位相角を解析する位相解析も一般的によく利用されています。

【図1の(d)に位相解析例としてポーラ線図を示します。】

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新川電機では、1990年に位相解析専用機のベクトルモニタVM-13VとマルチチャンネルベクトルフィルタMF-1220を開発、さらに1998年には位相解析と周波数解析を行い、多様な解析グラフを表示したり、周波数解析結果から診断したりすることのできる大型回転機械振動解析診断システムRV-100と汎用回転機械振動解析診断システムBV-100を開発しています。

また2008年にはRV-100の描画機能に対して、測定点のツリービュー化や8点までの測定点を1つのウィンドウに一括表示するタイル表示の採用などの描画改善を施したRV-110を発売。

さらに、2011年に転がり軸受支持の小型回転機械からすべり軸受支持の大型回転機械まで対応して、データ収集速度や描画機能、操作性など大幅に改善したinfiSYS RV-200を開発しています。

振動解析の信号処理の流れ

ここでは、図2に示す振動解析診断システムinfiSYS RV-200の信号処理の流れを基に説明します。

図の左下に示しているのはすべり軸受で支持された大型回転機械のロータのイメージであり、1回転1パルスの位相基準を検知するセンサ(フェーズマーカ)と振動波形信号を捕らえる軸振動センサが設置されています。

フェーズマーカはキー溝等の1回転に1箇所の切り欠きまたは突起部分を非接触変位センサで検知するもので、連結された一連のロータに1個のセンサが設置され、その名前の通り位相解析を行なう場合の位相基準として使われると同時に、回転数計測にも使われます。

 

また、軸振動センサは図では1個のみ描かれていますが、実際には各軸受けに90度の角度をなして2個ずつ設置されます。

これらのセンサで捕らえた位相基準信号と振動波形信号は振動モニタに入力され、振動モニタで振幅変換等のモニタリング演算処理が行なわれますが、それと同時にバッファアンプを介して、入力信号と同じ波形をバッファ信号として出力しています。

このバッファ信号はデータ収集装置DAQpodに入力され位相解析や周波数解析等の解析演算処理が行なわれます。

 

一方、図2の中央下に示しているのは小型回転機械の転がり軸受のイメージであり、通常はケーシング上の転がり軸受の振動が直接伝わりやすい箇所に加速度センサが設置され、ロータの異常や転がり軸受の異常によって発生する振動波形を捕らえています。

これらの振動波形信号は直接データ収集装置DAQpodに入力され、周波数解析等の解析演算処理が行なわれます。

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データ集数装置DAQpodでデジタル化され、解析演算処理されたデータはイーサネットによるデジタル通信で解析ソフトウエアの実装された解析PCであるinfiSYSビューステーションに伝送されます。

infiSYSビューステーションではデータ収集装置DAQpodから送られた解析データを加工して各種解析グラフに展開する描画処理を行なうと共に、データベースに解析データを保存します。

この時、大量の解析データは、警報発生や機械のスタートアップ/シャットダウン(トランジェント状態)等のイベントがない限り、一定期間(1日~31日間で設定)経過後に間引き処理がなされ、長期データとしてデータベースに保存されます(最長5年間)。

 

なお、イベント時のデータは間引きされることなく、警報時データおよびトランジェントデータとして保存されます。

さて、次回は各種の解析グラフに関して説明する予定です。

 

出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社

 


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