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『品質でもうけなさい』9-1.品質問題における最大の敵

『品質でもうけなさい』9-1.品質問題における最大の敵

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9-1.品質問題における最大の敵

それはバラツキです。

……なーんて言うと、品質管理の教科書には必ず出てくる話なので、何を今さらと思う人がほとんどでしょう。

ところが、ヒューマンエラー対策や品質補償に奔走してきた実務担当者にはピンときません。

 

というのは、これまで扱ってきた品質問題は良品か不良品か、○か×かという単純な二者択一の問題ばかりなので、バラツキと一口に言っても捉えどころのない曖昧な概念としか感じられないのです。

しかし、これからのレベルアップを考えるならば、問題解決の主体である実務担当者がバラツキの意味をしっかりと理解するのは重要なカギです。

 

バラツキ。

JISなどの規格にも定義はありません。

この単語自体が基本的な日常用語だからです。

 

広辞苑によれば、「測定した数値などが平均値や標準値の前後に不規則に分布すること、また、ふぞろいの程度」とあります。

「不規則に」とは言いますが、この分布は釣り鐘の形をしていることが知られています。

例えば、同じ条件で直径10ミリピッタリのシャフトを作ったつもりでも、実際には9.99だったり10.01だったりします。

 

これをヒストグラムにすると下のような釣り鐘のような形になります。

これが正規分布です。

ヒストグラムを描けば分布の形が見えますが、さらに平均値と標準偏差を計算しておけば、バラツキを示すデータとして使えます。

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さて、バラツキが大きすぎると物が作れなくなってしまいますから、どの程度なら目をつぶっても良いか、上限と下限を決めておきます。

これが公差です。

設計で公差を規格にしておけば、とりあえず規格の中に入っているかいないかという二者択一の問題になります。

 

レベルが1とか2という会社は、バラツキのデータがどうのこうのと面倒なことは考えないで、規格を厳しくしたり緩くしたりして、品質をコントロールしようとします。

セミナーでこんな質問をすることがあります。

次のような3つの分布を並べた時、どれが一番マシか、ちょっと考えてください。

 

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もちろん正解はCなのですが、Bと答える参加者が少なくないのです。

理由はすべて公差内に入っている良品だからだと言うのですが、この分布の形に注意していれば不良選別した結果の最悪のバラツキであることは明らかです。

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これがレベルの低い会社の典型的な発想なのです。

結構大きな会社の品質部長さんがそんな風に考えていたりするんで驚いてしまうんです。

 

Aが一番マシだと答える人もいます。

なぜ大半が公差から外れているCが正解なのかわからないというのです。

下はプレスやモールドなどの成型加工でよく出会う事例ですが、あなたなら、どんなふうに解決するでしょうか。

 

【問題19】打ち始めは金型が温まっていないために絞り寸法が外れてしまう。このため、初めの25個を廃棄しているが、これが良品であれば月20万円捨てている計算になる。現在金型を改造して、加工前にあらかじめ温めておく対策を検討しているのだが……

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頭がもうろくしていなければ、すぐわかる問題ですね。

余計なお金をかけて金型改造などしなくても、バラツキは十分に小さいのですから最初から少し上目をねらって加工を始めれば、すべて公差内に入ってしまいます。

これなら改善費用ゼロで年間240万のコストダウンです。

 

このように、平均値を修正するのはそんなに難しいことではありません。

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ところが、もしAのように寸法が大きくバラツいていたらどうでしょう。

上目をねらって加工をしても、今度は上の規格を飛び出してしまいます。

まず、バラツキを小さくすることを考えなければなりません。

 

しかし、バラツキを生み出す要因は非常に多岐にわたっていて、単純にねらい値をずらすようなわけにはいきません。

金型の改造の方が手っ取り早いと思いますか?

改造しても平均寸法が上にずれるだけで、バラツキが解消できる根拠はどこにもありませんよ。

 

本気でレベルアップを考えるなら、バラツキそのものにメスを入れなければいけません。

レベルの高い会社というのは、バラツキを品質問題における最強の敵と認識できている会社なのです。

楽屋裏話 by『面白狩り』編集長

なんだ、やっぱりバラツキの話になってしまうのか……と苦笑いしている人もいるでしょう。

しかし、これは品質管理に限った話ではないのです。

人は、ものを考える時は、理想的な条件の下で理論を組立てていきます。

 

それが数式になり、法則になり、ルールになっていくのですが、現実には必ずバラツキというノイズが邪魔をして、ある確率で理論と異なる結果をもたらします。

これを放っておけば、どんどん混沌としていってエントロピーが増大していきます(エントロピーとは混沌の程度を示す熱力学の指標)。

現実の世界では、エントロピーとの戦いから逃げることができない宿命なのです。

 

システムとか標準化とかマネジメントといったものは、人類がエントロピーと戦うために(あるいはうまく折り合うために)開発された武器のようなものです。

紋切り型で面白みのない統計的品質管理も、こんなふうに考えるとSFみたいで楽しめるかもしれません……ンなことないか……。

 

出典:『品質でもうけなさい』面白狩り(おもしろがり)


ものづくりニュース編集部です。日本の製造業、ものづくりの活性化を目指し、日々がんばっています。