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『品質でもうけなさい』8-8.ラチの明かない問題

『品質でもうけなさい』8-8.ラチの明かない問題

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8-8.ラチの明かない問題

(1)輸入部品の不良

【問題15】中国で製造している部品を使用しているが、不良が多くて困っている。注意した当座は良くなるが、しばらくするとまた再発するという繰り返しになっている。なんとか安定した品質にできないものだろうか。

 

いわゆる開発輸入というもので、安い人件費に目をつけて、中国や東南アジアその他の開発途上国に工場を建設して、資材コストの削減を図るなんていうことは、今でもさかんに行われています。

これも一つの手段ですから単純に批判することはできませんが、開発輸入がさかんになる以前から技術力の問題や国民性、政情、空洞化などを懸念する声が少なくなかったのも事実です。

 

その工場があなたのところの関連企業であればまだマシでしょうが、中間に商社が介在しているような場合(このパターンが非常に多い!)、問題解決に至る道のりが非常に困難になります。

普通はクレームを受けた商社がそのまま相手に伝えて、注意を促すという程度のことしかしませんし、できません。

その結果、当座は良くてもしばらくすると再発という繰り返しになってしまうわけです。

 

 直接相手を指導したくても、近所の外注さんに出向くのとはわけが違います。

出向いたところで、今度は現地の国民性や政治情勢の問題が立ちはだかります。

 

停滞している日本から見れば、近年のめざましい経済発展はうらやましい限りですが、基本的には低コストと市場規模の大きさだけで突っ走っているプロダクトアウトの経済体制です。

品質で最も重要なコンセプトの一つであるマーケットインとは相容れないものがあります。

また、表面には現れなくても、根底には伝統的な中華思想や覇権主義、そして根強い反日感情といった微妙な問題もありますから、こちらがどんなに真剣に品質を訴えても果たしてどこまで本気で受け入れてくれるか疑問です。

 

やれるだけやるしかないでしょう。

さて、これ以上のことを考えても、無責任な評論あるいは非生産的な愚痴にしかなりませんので、私にはよくわかりません。

政治家や外交官にでも相談しますか?

 

言うまでもなく、開発輸入は会社の経営方針の下で行われる施策です。

開発輸入によってもたらされる弊害について、現場の実務担当者が責任を負おうとしてもムリです。

まず、この状況を経営者が認識しているのかどうか?

 

認識していなければ、正確な情報をあげて認識してもらわなければいけません。

もし、品質の悪さを加味しても利益計画上はペイすると経営者が判断するのであれば、現場がとやかく言う問題ではありません。

あとは不良率を見込んだ資材発注計画を立てて欠品だけはしないようにするぐらいです。

 

その結果部品在庫が膨らんでも、それは経営者の責任です。

実務担当者があれこれ悩むのは越権行為というものです。

 

(2)急激な材料高騰

【問題16】材料の貴金属が急な円安と原産国の政情不安のために高騰し、大幅なコストアップに苦しんでいる。品質を落とさずに問題回避できる良い方法を教えて欲しい。

 

日本の工業製品はほとんどの原材料を輸入に頼っていますから、当然原材料の価格や為替レートの急激な変動は、経済に大きな打撃をもたらします。

ある工場で生産管理の改善を進めていた最中に、同様の問題に直面したことがあります。

購買担当者からも、どうすれば良いか尋ねられましたが、結局アドバイスできることは何もありませんでした。

 

市場価格の変動に備えて予め資材を確保することもありますが、これは経営判断に基づく施策ですから、コンサルタントが実務担当者に指示するような話ではありません。

第一市場の先行きなんてわかりません。

先物取引の専門家にでも聞いてください。

 

後日、改善活動の報告のために年間の成果を試算したところ、せっかく一生懸命改善を進めたのにほとんどが材料高と相殺してしまい、全く数字に出てこない惨憺たる結果になってしまいました。

ところが、工場長からは、もし改善を進めていなかったらもっと悲惨な状況になっていたと逆に感謝されたものです。

この問題の答にはなりませんが、突発的で不可避の問題に対しては、いかに損害を少なくするかということぐらいしかできません。

 

しかし、日頃から改善をしっかりと進めてさえいれば、そのような事態にも耐えうる基礎体力が付いているということです。

 

(3)少人化その後

【問題17】せっかくラインで1人削減の改善ができたのに、経営者のフォローがなく、結局元に戻ってしまった。

 

改善のテーマとしてよく取り上げられるのが少人化です。

少人化に成功したら、余った人員はどこか別の部署に配転というのが普通です。

しかし、会社としての人件費は何も変わりませんから、生産性向上してもそのまま会社の利益になるわけではありません。

 

考え方の一つとしては、労働集約型の職場から頭脳集約型の職場への配転、例えば商品企画とか市場開発みたいな利益を創出するような仕事に人材を投入できれば良いわけで、新商品開発プロセスを専門にしているコンサルタントもいます。

ところが、経営者にこの手の発想・ビジョンがなく、何の経営戦略も持っていなければ、少人化できました、さあ次はどうしましょうと聞かれても答えようがありません。

それを決めるのは経営者です。

 

経営者が経理的な損得しか興味がなく、ただやみくもに従業員に改善させればもうかると思ったら大間違いです。

経営者は同時に技術者であり哲学者でなければなりません。

CIを明確にしたり、プロジェクト体制やマスタースケジュールを整備しなさいと言ったのはこういうことです。

 

それを指摘されてプライドを傷付けられたと思っているような経営者ではラチが明きません。

 

[補遺]小泉政権時代の大規模な規制緩和で製造業の非正規雇用が促進され、少人化による余剰が出ても以前ほど人員整理が難しくなくなったと、笑いながら語る経営者もいます。

しかし、雇用の確保は企業の最も重要な社会的責任の一つです。

多くの企業がこのような目先の人件費削減に走っていると、開発輸入と同様に企業の基礎体力をどんどん失っていき、市場の購買力も低下させます。

 

この問題はまさに経営の主体性が問われている問題で、政治も絡んできますから簡単にはラチが明きませんが、このままでは日本経済がますます衰退してしまうのではないかと危惧しています。

 

(4)職場の伝統

【問題18】口先では改善の必要性を言うものの、会社全体が変化に消極的で実行に結びついていかない。

 

IE手法を使った工程改善の指導を依頼されたときの話です。

それは一見して稼働率が低いなあとわかる職場でした。

5Sも不十分で、いたるところにホコリが被っており、コンタミが製品に及ぼす悪影響も非常に気になって、改善すべき問題には事欠きませんでした。

 

実際にワークサンプリングをしてみると、普通の組立作業と同じ程度の労働強度であるにもかかわらず、休憩や喫煙、立ち話などが占める割合が40~50%と異常に高く、生産性を云々する以前の状態であることは明らかでした。

最大の原因は機械運転のタイミングの悪さやレイアウトの問題で遊び時間ができてしまうことにありました。

そこで、トータル的な生産方法の見直しと徹底的な5Sの実施を提言したわけです。

 

きちんと分析したデータに基づいて説明したので経営幹部は一応納得してくれましたが、創業以来変わらぬ生産形態なので、是正については時間をかけて作業者の理解を十分に得てから行いたいという意向でした。

ところが、十日たち二十日たち一月たっても一向に動き出す気配がありません。

一体どうするつもりなのか幹部に問い直してみたところ、古参の作業者たちから強い反発があり、労働組合も神経質になっているのでしばらく様子を見たいというのです。

 

その他、工場全体のクリーニング期間の見当がつかないことや、古い機械を移動した後の再立上げが非常に難しいことも、改善に躊躇している理由でした。

やむを得ず、最終の小さな仕上げ工程について、教科書的な改善を行ってお茶を濁しましたが、結局、何の成果も上げられずそのまま指導打ち切りになってしまいました。

現状を変える気のない会社が改善活動に投資をしても、金をどぶに捨てるようなものです。

 

初めからコンサルタントなんて呼ばない方がよろしい。

面倒見切れません。

 

楽屋裏話 by『面白狩り』編集長

ここに挙げた問題は、ほんの一例です。

もしかしたら、このような問題が得意な先生もおられるのかもしれませんが、私にはラチが明きません。

ある立派な先生によると、コンサルタントたるもの何を聞かれてもわからないと言ってはならないのだそうで、それを言ったら最後、一気に信用失墜に至るんだとか。

 

私なんか、わからないものはわからないとはっきり言ってしまいますから、まさに信用のひとかけらもない落第コンサルです。

しかし、わからないことはみんなで一緒に考えれば良いのです。

特に品質の問題は新しい技術になることもあるので、わからない方が大きな可能性があって面白いじゃないですか。

 

わからないとラチが明かないとは違います。

ラチが明かない問題は考えても少しも面白くありません。

さっさと次のことを考えたほうがマシです。

 

出典:『品質でもうけなさい』面白狩り(おもしろがり)


ものづくりニュース編集部です。日本の製造業、ものづくりの活性化を目指し、日々がんばっています。