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『品質でもうけなさい』8-6.しらみつぶしてお疲れさん

『品質でもうけなさい』8-6.しらみつぶしてお疲れさん

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8-6.しらみつぶしてお疲れさん

【問題13】考えられる要因は、しらみつぶしにすべて検証し尽くしたが、どうしても真の原因がつかめない。

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この例はあまり語ることはありません。

あなたが相談を受けたら、どうアドバイスするか考えてみてください。

問題解決の実戦経験がある人なら簡単に答えられると思いますよ。

 

実は、前節のA君をとやかく言えない経験が筆者にもあります。

以前ある機械部品メーカーに勤めていたときの話です。

あるときお客様で、取引先を対象に品質セミナーをやることになったので、私も聴きに行ったわけです。

 

このお客様は知らない人はいない超優良企業で、講師に招かれた先生も立派な肩書きをお持ちのかなり名の通った方でした。

講義の内容は覚えていませんが、当時はTQC真っ盛りだったので、その話だったかと思います。

最後に型通りの質疑応答の時間があり、出席者の一人から上の例とそっくりそのままの質問がされたのです。

 

さて、立派な先生サマから果たしてどんなアドバイスがなされたか?

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おい、答になってねえぞ。ちゃんと答えろよ。

○○という本はオレも読んだことあるけど、そんなのこの質問と関係ないじゃん。

 

……なんてこと、大事なお客様が招いたエライ先生ですから文句なんかもちろん言えません。

質問した人もわけがわからないまま、さっさとセミナーは打ち切りになってしまいました。

ははーん、さてはこのおっさん、エラそうなこと言ってるけど実際の問題解決やったことないな……と、私も若かったものですから完全にこの先生をバカにしてしまいました(……いけないことです)。

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私の大学時代の恩師なんかホントにすごいスーパーマンでしたが、上のようなギンギラギンの肩書きや資格を持っているのに、中身の怪しげな先生サマに会うと、A君の気持ちもよくわかるんです。

権威主義は問題解決になんの役にも立ちません。

閑話休題。

 

答、わかりましたか?

まず最初に、私の経験では、肝心の要因を見落としている場合が圧倒的に多い と言っておきます。

立派な特性要因図を書いたからといってすべての要因を列挙できたと思ってはいけません。

 

完璧な特性要因図なんてありません。

仮説検証を繰り返しながらベールをはがすようにして完璧に近づいていきますが、それでも決して完璧にはなりません。

それで良いのです。特性要因図なんて、ただの分析手法なんですから。

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それで良いのです。特性要因図なんて、ただの分析手法なんですから。

次に、特性要因図の要因を一つずつしらみつぶしにつぶしていっても、だめなときはだめなんです。

だめなときというのは2つのパターンがあります。

 

1つが、AND回路というパターン。

つまり、2つ以上の要因が複合することで特性が顕在化する場合です。

風邪は、ただ寒ければひくというものではありません。

 

寒くてもウィルスに負けなければ風邪をひくことはありません。

逆に、ウィルスに感染しても暖かくして体力を保っていれば、やはり風邪に負けることはありません。

寒い・ウィルス・体力低下という要因がそろった時に問題発生するわけです。

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FTAという手法はこのAND回路を考えながら要因分析していくので、実戦的でお薦めの手法だと思います。

もう1つは、これと逆のパターンで、2つ以上の要因が複合している影響で特性が見えなくなる場合です。

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初歩的な問題解決では必要以上に気にすることはありませんが、設計にまで影響してくるようなデータを解析する場合には、必ず交互作用というものを確認します。

交互作用とは注目している要因以外の要因が結果に及ぼしている影響のことです。

このような複合した要因の影響を分析するのは、一つずつしらみつぶしていく以上に手間と時間がかかります。

 

そこで実験計画法のような手法が利用されるわけです。

これらの手法に興味のある人は数理統計に関する文献やサイトをチェックしてみてください。

問題解決の実戦経験がない人は、教科書では教えてくれない事態に直面すると、もうお手上げになってしまいます。

 

少しでも実戦経験があれば、想像力豊かに必ず解決の糸口を見出します。

例えば、ある特性のヒストグラムを取ったところ、このような見たことのないデコボコの分布になってしまいました。

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このとき、即座に2つ以上の要因が絡み合っていることを思い浮かべなければダメです。

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あなたは大丈夫ですか?

実際の問題は決して単純ではありません。

しかし、難しく考える必要はないのです。

 

初歩的な知識でもそれを応用する力さえ養っておけば、そう簡単にお手上げになることはありません。

 

楽屋裏話 by『面白狩り』編集長

最近は、自分以外はバカに見える人が増えてきたせいで、自分の期待に応えてくれないとすぐにその相手を蔑んでしまいます。

半面、簡単に相手を信じて神様に祭り上げてしまうような軽さも同居する、危なっかしい風潮です。

もちろん神様ではありませんから、オールマイティなんてことはありません。

 

そのように見える人に出会っても、そこには必ず偏見やトリックがあります。

権威を振り回す人を好きにはなれませんが、だからといってその人をバカにすることはできません。たとえこちらの質問には答えられなくても、やはり先生と呼ばれるだけの人は専門についての深い知見をお持ちです。

なめていると痛い目に遭います。

 

コミュニケーションの問題と思いますが、人を信じる・バカにするという前に、まず理解することの大切さを痛感します。

これも実戦経験がないとなかなかわからないことのように感じます。

 

出典:『品質でもうけなさい』面白狩り(おもしろがり)


ものづくりニュース編集部です。日本の製造業、ものづくりの活性化を目指し、日々がんばっています。