『品質でもうけなさい』4-5.問題解決のシナリオを描け
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4-5.問題解決のシナリオを描け
歴史が苦手な人でも、大ローマ帝国の皇帝ジュリアス=シーザーの名前を聞いたことがない人はいないでしょう。
紀元前49年1月、ローマ進攻を前にして、シーザーはローマの将来のことを語り始めました。
それを聞いた側近の一人から、まだローマを陥落させたわけではないと、たしなめられましたが、シーザーはすでにローマはわが手にあると言って全く意に介しませんでした。
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なぜ、シーザーは意に介さなかったか?
エピソードでは、このときシーザーの頭の中に、ローマ攻略のプロセスが完璧に描かれていたと言います。
つまり、彼の頭の中ではいつも成功に至るシナリオがイメージされ、事に臨んで若干の修正を加えるだけだったということです。
先を読む……現代の経営にも通じる話です。
プロジェクトにおいても、先を読みながら進めることが確実に成果を生む秘訣です。
![002](https://news.aperza.jp/wp-content/uploads/2016/12/09165031/002.jpg)
5W1Hの、いつ(When)どこで(Where)どのように(How)を整理してシナリオを描いてみましょう。
きちんと視覚化して全員が共有できるようにします。
(1)フローチャート
フローチャート自体は、必要な事柄を記したブロックを矢印でつないでいくだけのことで、難しいものではありません。
しかし、具体的な問題解決のフローチャートとなると、これはちょっこらちょいと描けるものではありません。
事前に調査しなければならないことが次から次へと出てきて、何回も何回も描き直しをして、1枚のチャートを完成するのに2週間もかかったこともあります。
それでも、一度作ってしまえば、プロジェクトの全体像がだれにでもイメージでき、問題解決の見通しが非常に良くなって、進捗も格段に速くなります。
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まさに急がば回れです。
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下記は品質をテーマにした問題解決のプロジェクトのフローチャートです。
ごく簡単な例ですが、さらに細かい調査項目や制約条件が書き加えられることもあります。
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このようなフローチャートは、プロジェクト事務局が作成してプロジェクトマネージャーの承認を受けるようにすると良いでしょう。
もちろん、チームリーダーが作成できるようになれば文句のつけようがありません。
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(2)マスタースケジューリング
問題解決の見通しがつけば、早速キックオフと行きたいところですが、ここはあわてずにプロジェクト全体の計画を練っておくのが要領よく改善を進めるコツです。
そこで、下のようなマスタースケジュールを作成して、改善活動全体が眺められるようにします。
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![008](https://news.aperza.jp/wp-content/uploads/2016/12/09165616/008.png)
当事者は四六時中改善をやっている訳ではありませんから、それ以外のスケジュールや通常業務の負荷によって進捗も大きく左右されます。
プロジェクトマネージャーは、これらの影響を想定しながら、どのように活動を進めればムリなく成果を生んでいけるかをイメージしてほしいのです。
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このマスタースケジュールは初めから完璧なものを作る必要はありません。
プロジェクトを始める前に推進委員会でよく検討して、キックオフ時に活動方針・目標と共にプロジェクトチームに明示します。
![010](https://news.aperza.jp/wp-content/uploads/2016/12/09165732/010.jpg)
プロジェクトが動き出した後でも、やむを得ない人事異動や不測の事態などで目標達成が難しくなる場合があります。
ムリとわかっている計画にこだわっていても無意味ですから、手元のマスタースケジュールはできる計画に修正します。
この修正計画はマネジメント用ですから、公表する必要はありません。
![011](https://news.aperza.jp/wp-content/uploads/2016/12/09165813/011.png)
このようにしてマスタースケジュールと進捗状況を確かめながら、活動の終盤では次の展開をどうするかイメージして、方針を決めるのです。
マスタースケジュールは、必ず上のような様式で描かなければならないというものではありません。また、3年計画でも5年計画でも構いません。
重要なのは、改善活動のマネジメントをそつなくやるということです。
![012](https://news.aperza.jp/wp-content/uploads/2016/12/09165848/012.jpg)
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
簡単に説明しましたが、改善活動の見通しを良くするというのは、実際は説明ほど簡単にできることではありません。
ほとんどの場合で、もぐら叩き的対処療法です。それの何が悪い?と開き直る経営幹部もいますから、まだまだ世の中には手付かずの宝の山ばかりと感じます。
このように問題解決のシナリオを描いて、戦略的に改革を進めるところにこそ、コンサルタントの力が必要になってくるのではないかと思います。