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『ワイドレンズ』を読んで視界が開けた

『ワイドレンズ』を読んで視界が開けた

イノベーションを実現するプロデューサー人材の育成について考え続けている。

この人材は、例えばものづくりのプロや統計学の専門家のような、ある分野での一流の人材というよりは、そういった人材を集め、彼らの力を借りて、ビジョンを実現する人材である。

まさに、今求められている人材なのである。

 

つい先日、『プロデュース能力』という本を読んでかなりの手ごたえを得た。

そして、この本、ロン・アドナー著『ワイドレンズ―イノベーションを成功に導くエコシステム戦略』(東洋経済新報社)

である。

 

『プロデュース能力』と一緒に八重洲ブックセンターで購入したのだが、本当にいい本が見つかった、と感激である。

前書きで述べられている、本書の中核となるメッセージ「どんな素晴らしいイノベーションも自社だけではもはや成功することはできない」こそが、プロデューサ人材、プロデュース能力の必要性を語っている。

しかし、同様のメッセージは、他のイノベーションを扱ったビジネス書でも言われていることで、特段目新しいものでもない。

 

「ワイドレンズ」という言葉も「視野を広げよ」ということだし、エコシステム戦略だって、生態系で捉えよということで、システムで考えよということと大差ないように思える。

しかし、本書を読むと、それが非常に納得のいくまとめ方、プロセス、ツールの形で具体的に述べられ、なるほどそれでイノベーションが成功(または失敗)したのか、と理解できるのである。

 

ワイドレンズという言葉の意味は、死角を見逃すなということであり、死角にあるのが「コーイノベーション・リスク」と「アダプションチェーン・リスク」である。

コーイノベーション・リスクは、他者のイノベーションと協調しなければ自社だけでは成功できないときの、他者との関係から生ずるもので、掛け算で影響が出てくる。

ひとつでも低いものがあれば全体の足を引っ張る。

 

「アダプションチェーン・リスク」はイノベーターからエンドユーザーに至るまでの関係者の連鎖であり、一番低い(弱い)ものが全体を決めてしまう。

つまり、一か所でも切れればそこで終わりということである。

これらの二つのリスクをいかにして見出し、解決するかが、イノベーションを成功させる鍵となるのだが、本書では、とても分かりやすい、よく知られた事例を使って、納得いくようにそれらを述べている。

 

さあ、この本と『プロデュース能力』を読み返しながら、プロデューサー人材育成の方法を考えていくことにしよう。

※2013年12月に書かれた記事です。


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任