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「復帰と言うよりも初参戦」、18年ぶりのWRCに向けて動き出したトヨタ...

2016/10/31 IT media

「復帰と言うよりも初参戦」、18年ぶりのWRCに向けて動き出したトヨタ (齊藤由希,[MONOist])

 トヨタ自動車は2016年2月4日、東京都内で会見を開き、2016年のモータースポーツ活動計画を発表した。2016年は、18年ぶりの参戦となる2017年の「FIA 世界ラリー選手権(WRC)」に向けた準備の1年となる。また、2015年に新設したモータースポーツ本部の体制の下、「TOYOTA GAZOO Racing」として「FIA 世界耐久選手権(WEC)」「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」「全日本ラリー選手権」に参戦する。WECには新開発のハイブリッドシステムを搭載した「TS050 HYBRID」で挑む。

トヨタ自動車の嵯峨宏英氏(左)、同社 専務役員の伊勢清貴氏(中央)、Toyota Motorsportの佐藤俊男氏(右)。その後ろには、トヨタ自動車の2016年のモータースポーツ活動でハンドルを握るドライバー達が並ぶ (クリックして拡大)

 トヨタ自動車は2015年4月1日にモータースポーツ本部を設置し、「TOYOTA Racing」「LEXUS Racing」「GAZOO Racing」がそれぞれ取り組んできたモータースポーツ活動に関するマーケティングや車両開発機能を集約した。WRCをはじめとする選手権にTOYOTA GAZOO Racingのチームとして出場する。レース活動を通して人とクルマを鍛え、「もっといいクルマづくり」につなげていく。

18年ぶりのWRC参戦に向けて

2017年のFIA 世界ラリー選手権(WRC)に参戦する「ヤリスWRC」 (クリックして拡大)

 WRCへの参戦は1999年以来18年ぶりとなる。TOYOTA GAZOO Racingのチーム総代表を務める豊田章男氏は「復帰と言うよりも初参戦に近い。一からチームとクルマを鍛えて準備を進めている」と会見にコメントを寄せた。

 WRCの参戦車両は、チーム代表のトミ・マキネン氏の下でフィンランドを拠点に準備を進めている。ベース車両はコンパクトカー「ヤリス(日本名:ヴィッツ)」で、Toyota Motorsport(TMG)が排気量1.6l(リットル)の直噴ターボエンジンを開発した。2016年3月から実車テストを始める。TMGは2017年参戦用のエンジンも開発し、現在台上テストを実施している。

2017年に参戦するFIA 世界ラリー選手権(WRC)に向けた準備が進められている (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車
2017年に参戦するFIA 世界ラリー選手権(WRC)に向けた準備が進められている (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 豊田氏は会見に寄せたコメントの中で「トヨタがWRC参戦車両をマキネン氏に丸投げしているのではないか」といううわさに対して反論した。「かつてトヨタはWRCのチャンピオンだった。世界一のトヨタが戻るからには勝つためのチーム作りをしなければならないので、戦い方を知っているマキネン氏の存在が必要だった。F1以来、技術を磨いてきたTMGとマキネン氏のクルマづくりを融合することで戦闘力を高めていく」(豊田氏)。

2017年に参戦するFIA 世界ラリー選手権(WRC)でチーム代表を務めるトミ・マキネン氏

 これを受けてマキネン氏は「成功に必要なのは、高い志を持つメンバーを集める必要がある。良いチームがファミリーとして一体になって、高い志をもって臨むことが良い結果を生む。現在はそういうチームづくりを進めている」と現状の取り組みを報告した。

 また、豊田氏はTMGへの感謝の気持ちを述べた。「社長に就任してからの幾つかの判断のうち、F1撤退は重大な決断の1つだった。TMGにクルマづくりをさせられなくなってしまった。TMGのメンバーは無念でいっぱいだっただろう。それでもトヨタが好きで残ってくれた人々、クルマを作り続けてくれた有志に感謝している。WRCはTMGとともに参戦したいという思いがずっとあった」(同氏)。

WECは新開発のハイブリッドシステムで挑む

2015年までのFIA 世界耐久選手権(WEC)参戦車両「TS040 HYBRID」 (クリックして拡大)

 WECには新開発のハイブリッドシステム(THS-R、TOYOTA Hybrid System-Racing)を搭載したTS050 HYBRIDで挑む。THS-Rはトヨタ自動車の東富士研究所で開発した。新しいエンジンと容量を増やして車両の前後に搭載するモータージェネレーターを組み合わせる。四輪回生/力行システムも改良した。TS050 HYBRIDの車両はTMGで製作中で、実車テストも順調に進んでいるという。また、東富士研究所では2017年参戦用のハイブリッドパワートレーンが完成し、台上テストを実施している。

FIA 世界耐久選手権(WEC)に向けた準備が進められている。2016年のWECは新開発の車両「TS050 HYBRID」で参戦 (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車
FIA 世界耐久選手権(WEC)に向けた準備が進められている。2016年のWECは新開発の車両「TS050 HYBRID」で参戦 (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 レース活動で得たハイブリッドシステムの先進技術は量産モデルで活用する。2015年までのWEC参戦車両「TS040 HYBRID」の知見は新型「プリウス」で生かされている。「参戦車両とプリウスの部品は違うものだ。過酷で制約のあるレース環境の中で、勝つためにクルマを走らせた工夫と経験が量産車の開発で生きている」(TMG 社長の佐藤俊男氏)。

 トヨタ自動車 専務役員の嵯峨宏英氏は「高価な部品を使えば強いクルマに仕上がるのはレースも量産車も同じだが、どちらもコストには限りがある。高い部品を使えないから勝てないと思うのは知恵が足りないだけの話だ。いいクルマを作るという目標の下で苦戦する経験が糧になる」とレース活動で得られる収穫について述べた。


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