化学物質を安全に扱うための文書「SDS」とは ~化学物質製造業者が作成する16の情報~
じめじめ、梅雨ですね。
さすがにもう加湿器は使用しないシーズンになったので、安全衛生委員 (安全衛生委員が気になった方はこちら) として、お片付けをしよう!と社内の加湿器を開けてみたら、なんと内側にカルキがびっしりはり付いて固まっていました。
凝固したカルキはお掃除の万能グッズのメラミンスポンジさえもすりおろしてしまうほど固く、重曹をつけおきしても効果なし…絶望に立ち尽くしていたところ、「クエン酸につけておけば落ちる!」と技術部や品証部の方に教えていただき、何とか落とすことができました。さすが技術部&品証部!感動!
後々調べてみたら、カルキはカルシウムやケイ素からなるアルカリ性の性質で、アルカリ性の重曹では落とせず、酸性の性質のもので中和させないと落ちないという情報がネットにあふれているではありませんか…。
物の性質を知ることの大切さを身近に感じました。
物の性質がわからないと、何か事件が起きてしまって対応や応急処置が必要な場合に正しい方法がわからなかったり、何らかの理由で物質が変化して有害な物になるのを防ぐことができなかったりして、とても危険です。 製造や実験をするときはもちろん、化学品の性質を確認して使用しますよね。
実際の使用時だけではなく、化学品を輸送するときにも性質の把握は必要です。飛行機や船を使用する輸出入、陸路での国内輸送においても、温度管理や梱包材を用意する際に確認が必要です。
実際に製造や使用をする機会がない場合、たくさん種類がある複雑な化学品の性質の把握は難しすぎます。
でもみんなが化学品に詳しくなくても大丈夫!そんなときのために「SDS」という強い味方がいるのです!
SDSとは
SDSはSafety Data Sheetの略称で、日本語では安全データシートと呼ばれています。化学物質およびそれらを含有する製品の物理化学的性状、危険有害性、取り扱いに関する情報を記載した文書です。
化学物質等を適正に使用、または管理するには、人体や環境への有害性、危険性について認識し、適切な取り扱いをすることが必要です。そのためには情報が不可欠です。化学物質を製造する業者は、中身が分かっていて情報がわかりますが、取引によって受け取り、また、使用する業者、輸送や保管をする業者は情報を入手することは難しいため、SDSは正確に伝えられる文書として、化学物質を製造する業者が作成し、提供します。
国際的には国際連合の化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)や ISOで標準化されています。日本ではGHS既定の様式を使用していますが、各国で基準が違うため、世界で共通の文書というわけではありません。
SDSにはどんなことが書いてある?
SDSには、様々なことが記載されています。GHSに基づくものだと下記の16項目です。
1.製品及び会社情報 – 製品名称、SDSを提供する事業者の名称、住所及び連絡先
2.危険有害性の要約 – GHS分類や対応のラベル絵表示や注意喚起語などの情報
3.組成及び成分情報 – 含有する指定化学物質の名称、指定化学物質の種別、含有率
4.応急措置 ‐ 吸入してしまった、皮膚についてしまった、目に入ってしまった、飲みこんでしまった場合など
5.火災時の措置 ‐ 適切な消火剤、使ってはならない消火剤、消火する際に必要な保護具など
6.漏出時の措置 - 人体に対する注意事項、環境に対する注意事項、清掃の仕方など
7.取扱い及び保管上の注意 - 衝撃、火気、換気、温度、湿気、など保管時や輸送時の環境に関する情報
8.暴露防止及び人に対する保護措置 - 吸入、手、目、皮膚に関する保護具に関する情報
9.物理的及び化学的性質 - 液体・紛体、色や匂い、融点、沸点、引火点、自然発火点など
10.安定性及び反応性 - 危険な状況になる条件、回避すべき条件など
11.有害性情報 - 吸入や接触で人への影響があるかどうか
12.環境影響情報 - 環境への影響があるかどうか
13.廃棄上の注意 - 正しい廃棄の仕方など
14.輸送上の注意 - 国連分類(UN番号)で危険品に区分されているか、梱包等級の規定があるかどうか
15.適用法令 - 消防法、航空法、毒物及び劇物取締法、船舶安全法、労働安全衛生法などの法令や条例など
16.その他の情報 – 参考文献情報など
参考文献: 安全データシート – Wikipedia
SDSの内容は化学品によって異なり、必要な準備や対応も様々です。
人や環境に害を出さないために、化学品の性質を知ることが必要ですね。
性質を知ることでお掃除やコミュニケーションも円滑になる……かも?
《おススメ関連記事》
■テクダイヤ技術向上ブログ
テクダイヤの開発・生産に携わる、若手エンジニアによる公式ブログ。技術情報はもちろん、失敗談や体験談など有益な情報を幅広くお伝します。