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FFの軽商用車は誰に向けたものか (齊藤由希,[MONOist])

2016/11/1 IT media

FFの軽商用車は誰に向けたものか (齊藤由希,[MONOist])

月販1000台を見込むFF車の軽商用バン「ハイゼット キャディー」 (クリックして拡大)

 FFの軽商用車の需要は今後増えていく――。ダイハツ工業が2016年6月13日に発売したFF車の軽商用バン「ハイゼット キャディー」は、月販1000台を見込んでいる。現行のFR軽商用車「ハイゼット カーゴ」ほどの積載量を必要としない配送や、軽乗用車を商用として使う事業者など、軽商用車のライトユーザーを狙う。一方で、従来のFR軽商用車の需要も底堅く推移すると見ている。

ハイゼット キャディーとウェイクのすみ分け

 ハイゼット キャディーは軽乗用車「ウェイク」をベースとしている。「FFの軽乗用車で室内空間にこだわったのは『タント』が先駆けで、ウェイクはレジャー向けにスペースを重視して作ったモデルだ。軽乗用車がスペース重視に移行してきた一方で、商用車に対しては乗りやすさを求める方向に要望が変わってきた。ウェイクを使って何かできないか、というのがハイゼット キャディー開発のきっかけ」(ダイハツ工業 上級執行役員の上田亨氏)だという。

ハイゼット キャディーは軽乗用車「ウェイク」をベースにしている (クリックして拡大)
ハイゼット キャディーは軽乗用車「ウェイク」をベースにしている (クリックして拡大)

 ハイゼット キャディーとウェイクは、乗車定員ですみ分けを図る。ハイゼット キャディーは、荷室の床をフラットにした代わりにリアシートがない2人乗りだ。「ハイゼット キャディーは働くクルマ、ウェイクはレジャーのクルマと位置付けている。2人乗りが不便だと思う方はウェイクを選んでほしい。あまり人を乗せない場合は、レジャーを楽しむユーザーにもハイゼット キャディーを使ってもらえるだろう」(ダイハツ工業 開発本部 製品企画部 チーフエンジニアの中島雅之氏)。

ウェイク(左)とハイゼット キャディー(右)の違いは乗車定員だ (クリックして拡大) 出典:ダイハツ工業
ウェイク(左)とハイゼット キャディー(右)の違いは乗車定員だ (クリックして拡大) 出典:ダイハツ工業

 ダイハツ工業は、軽商用車の荷室使用率/平均積載重量が減少傾向にあることや、軽乗用車を商用として使うケースが増加していることを踏まえ、運転のしやすさを重視したFF車のハイゼット キャディーを投入する。

 製品企画では、引越しのアートコーポレーション、ダスキン、自転車のシェアリングサービスを運営するドコモ・バイクシェア、花キューピット、持ち帰り弁当「ほっともっと」を手掛けるプレナスが協力した。各社が軽商用車で輸送するのは、荷造り用の段ボールや生花、弁当、自転車など。ハイゼット キャディーの最大積載量150kgで業務には必要十分だという。

積み荷が比較的少なく、軽量なものを輸送する事業者に向けてハイゼット キャディーを提案する (クリックして拡大)
積み荷が比較的少なく、軽量なものを輸送する事業者に向けてハイゼット キャディーを提案する (クリックして拡大)
積み荷が比較的少なく、軽量なものを輸送する事業者に向けてハイゼット キャディーを提案する (クリックして拡大)

 この他にも「インターネット通販のように、一度にたくさんの積み荷を載せる必要はないが移動の頻度が多い事業者での利用に適しているのではないか」(中島氏)と想定している。

軽乗用車やFR軽商用車ではなくハイゼット キャディーを

 ハイト系/スーパーハイト系の軽乗用車ではなくハイゼット キャディーを選ぶメリットとしては「商用用途のための荷室になっているという点がある。荷室フロアには樹脂を採用して掃除しやすくした。また、床板は取り外し可能で、床下のアンダートランクを活用して背丈のある荷物も積むこともできる。樹脂の活用とフラットな荷室は、商用仕様のハイゼット キャディーの強みだ」(同氏)という。

 また、「ハイゼット カーゴの最大積載量を持て余している人や、軽乗用車を商用に使っている人の需要を取り込めれば月販1000台は高望みな数字ではない。FF軽商用車の需要は今後拡大していくだろう」(中島氏)。

 FF軽商用車を投入するのは、軽キャブバンや軽ボンネットバンの乗り心地に対する不満を解決するためでもある。

乗ると分かる、乗用車ベースのありがたみ

キャブオーバーの軽商用車と比較した乗りやすさが女性ドライバーに好評だ (クリックして拡大)

 従来の軽商用車のようにキャブオーバーのレイアウトで荷室の広さを追求する必要がないため、ハイゼット キャディーはエンジンを運転席の前方に配置することで乗り心地の改善が可能になった。

 ダスキンの女性社員は、ハイゼット キャディーの製品企画のヒアリングに協力するまではハイゼット カーゴを運転していた。「ハイゼット カーゴの乗り心地の悪さを意識したことはなかったが、ハイゼット キャディーを使ってみると運転席への乗りやすさなど違いが見えてきた。毎日乗るなら乗り心地の良い方を選びたい。製品企画への協力が終わって、ハイゼット カーゴに戻らなければいけないと思うと少し残念だった」とFFとキャブオーバーの違いを語った。

 ハイゼット キャディーの乗員室フロア高はハイゼット カーゴよりも71mm低い360mm、シート高は同じく25mm低い750mmだ。花キューピットの女性ドライバーは「この数cmの差は大きい。よじ登る感じがせず、スカートでも気にせずに乗り降りできる」と話す。

 この他にもキャブオーバーのFR軽商用車は、シートリクライニングができない点や足元の狭さなど、荷室の広さを優先したことによってドライバーの快適さが犠牲になっているという。「乗用車感覚で乗ると不便に思う場面は多いかもしれない」(中島氏)。

FR軽商用車のラインアップは無くさない

 ハイゼット キャディーを新たに投入したダイハツ工業だが、荷室使用率や平均積載重量が減少傾向にあることを踏まえて、今後はFR軽商用車を無くしてFF軽商用車に一本化する計画なのだろうか。

 中島氏に尋ねると「ハイゼット カーゴは残る。積み荷の少ないユーザーが増えて荷室使用率や平均積載重量の平均値は下がってきたが、一定数のヘビーユーザーは変わらずにいる。1.8mの長さを超える長尺の積み荷や、畳やふすまといった幅と長さのある荷物はハイゼット カーゴでなければ積めない。キャブオーバーで荷室長を確保したFR軽商用車も重要なラインアップだ」と答えた。


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