社内の風通しはよいのだが!?
ある日系工場でこんなことを見た。この会社の製品にとってキーとなる工程では、機械にワークを取付け、加工後ワークを取り外すという手順で作業をしている。
その加工の信頼性を高めるために温度管理を厳格に行うことにした。そのための装置を機械に取り付けた。ところがそれを取り付けるための留め具が作業の邪魔になってしまった。
作業者がワークを取付ける、取り外すときにその留め具に手があたるのである。ひどい時は、作業者の手に傷が付いてしまっていることもあったようだった。
作業者はやりづらいこと、場合によっては自分が怪我をすることを身をもって感じていた。班長も留め具によって作業がやりづらいことは認識していた。
その装置の取付担当部門は技術部であった。班長に「どうして生産技術部に実状を伝えて直してもらわないの?」と質問した。すると班長は口ごもりながら「技術部がやったことに文句は言えない」と言った。
今日のポイント
この会社は中規模の工場で何かあれば、総経理(日本人)が関連部門を呼んで打合せし、指示を出すようなやり方をしており、どちらかといえば家族的な雰囲気をもった工場であった。
工場で仕事をするうえで何か問題があったときに、それが実は他の部門に起因することはよくある。そういった場合、当然その部門に要因・原因を取り除く、改善することを要求する。普通に考えればそうする。
ところが、この工場を見ていて他の部門に依頼する、要求することができない会社だと感じた。1つは、相手に遠慮していることがある。もう1つは、相手に要求をすると逆の立場になったときに自分たちに同じように要求されてしまう。それを避けているように思えた。
しかし、当たり前の話、問題解決をするのに遠慮は不要だ。お客さんの期待に応え、それが会社の利益につながってくることをしっかり認識する必要がある。
ただ、これは会社の持っている文化や雰囲気によるところも大きい。言いやすい雰囲気、言えば改善してくれる、そして自社の製品をよくしていこうという文化があるかどうかだ。
補足
この装置の留め具については、班長さんが言いづらそうだったので、代わりに技術部に確認してみると、ちょっと向きを変えるだけでほとんど作業の邪魔にならないし、向きを変えるのはまったく問題のないことがわかった。
早速向きを変えてもらった。ただ、欲を言えば、技術部も装置の取付の際にその辺に気を配るなり、一言現場の作業者や班長に聞いてくれればよかったのに。