司馬遼太郎のシンプルな随筆から、迷ったときに役立つヒントを得る

対訳 21世紀に生きる君たちへ

司馬 遼太郎

オススメする理由

自分の使命、やるべきことを思い出せる

3年ほど前に帰省した折、実家にあった『週刊文春 創刊1500号記念特別号』の中に、この随筆が収録されていました。

この号が発売された昭和63年、随筆を読んだ私の母が、その内容に感銘を受け、雑誌の表紙に「永久保存版 子供たちに読ませてください」と油性ペンで手書きをして、大事にとっておいてくれたのです。

全文あわせても原稿用紙4枚余りの短い随筆ですが、私自身、自分の生き方に迷いが生じた時に、この文章に助けられています。

 

 

歴史小説を多く手がけてきた司馬遼太郎は、この随筆の中で、歴史のなかの友人たちが「私の日常を、はげましたり、なぐさめたりしてくれている」と書いています。

わが身を省みると、過去に数多くの技術者達が取り組んできた課題の上に現在の技術が成り立っており、自分自身も過去の技術者達に支えられて今日があるのだということに気づかされます。

「自己を確立せよ」「たのもしい君たちに」といった文章の一つ一つは、目の前の仕事に忙殺される中で読むと、シンプルなだけに確固たる輝きを放って見えます。

 

 

私の座右の銘に、母校の教育理念である「優れた技術者は、優れた人間でなければならない」というものがあります。

卒業してしばらく経っても常に思い返す言葉ですが、そのたびに、自分は優れた人間になれているだろうか、優れた人間とは何であろうかという問いは続くばかりです。

そうした迷いの中で司馬遼太郎のこのシンプルな随筆を読むと、いつも自分の使命、やるべきことを思い出すことができます。

自分にとって仕事を含めた生き方全体の指針のような存在になっています。

製造業の若手・新入社員に向けたメッセージ

「整える」ことへのこだわりや、先人たちへの敬意は忘れずに受け継いでいきたい

自分がものづくりに関わるようになって意識するようになったことは、これまでに積み上げられてきたものへの敬意です。

私たちの先人たちは「整える」こと、整然としていることを当たり前のこととしており、それは日常の営みの隅々ににじみ出ている、ということを考えます。

たとえば相撲にみられる、緊張感に満ちた立会いの左右対称性。たとえば笹の葉の上に並んだ握り寿司の佇まい。

こうした「整える」ことを第一の前提とした上で、先人たちは技術を磨いてきたのではないかと考えるのです。

「整える」ことへのこだわりや先人たちへの敬意は、これからの私たちも忘れずに受け継いでいきたいと思います。


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滝澤 直子

ソリッドワークス・ジャパン株式会社