トヨタ生産方式をつくりあげた大野耐一の“考え方”に触れる

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして

大野 耐一

オススメの理由

体験から生み出された“考え方”に触れられる

製造業に携わる人が一度は耳にする言葉があります。

「トヨタ生産方式」。

製造業で活躍する若い人たちに是非とも現場で実践して欲しい考え方です。

 
著者の大野耐一氏はトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)副社長を務めた方です。

トヨタグループの創始者・豊田佐吉、トヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎、両氏の想いを実現させることに力を尽くしました。

そして、フォードの大量生産方式に対抗する日本オリジナルの生産管理方式をつくりあげたのです。

 
会社のなかからあらゆる種類のムダを徹底的に排除して生産効率を上げます。

大野氏は現場で試行錯誤しながら、人とぶつかりながら、生々しいやりとりをしながら、この生産方式を定着させました。

こうしてできたトヨタ生産方式の「考え方」が同著で示されています。

 
ノウハウが書かれているわけではありません。事例について解説しているわけでもありません。ですから現場での経験が浅いうちは、読んでも、すっきり頭に入ってこないかもしれません。

しかし、現場で実務を重ね、多くの人に助けられながら仕事を進めるうちに、理解できるところが増えてきます。

読むたびに気づきがあります。私もそうでした。5年、10年と現場での経験を重ねるにつれて、腹に落ちる箇所が増えてきました。

 
今から40年も前に出版された本です。ですから新しいことが書かれているわけではありません。

しかし、現場で仕事をする人の心に響くフレーズや言葉があります。体験から生み出された「考え方」に触れられます。

今読んでも、全く色あせた感じがしません。良い本とはそういうものです。

 
おすすめは後半です。特に最終章となる第五章。

低成長時代を生き抜く。1970年代の時点で、すでに”低成長時代“を懸念していたのです。そして現場で手を打ってきました。同著の副題は「脱規模の経営をめざして」。まさに今こそ、この発想が現場に求められます。

かめば噛むほど味わいが深まるスルメの様な本です。傍らに置いて、繰り返し手にしてください。

製造業の若手・新入社員に向けたメッセージ

多くの人と話をしてください

多くの人と話をしてください。現場のベテランと話をしてください。まずは目と耳で学ぶことを実践してください。


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伊藤 哉

株式会社工場経営研究所 代表取締役社長/製造業専門の工場経営コンサルタント

金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。

大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。

その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。

技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。
現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)