オススメする理由
製造業の先行きについて、経済学という大きな視点から一つの解答例を提示
製造業の新人に読んでほしい名著は数々ありますが、おそらくは他の諸先輩方が紹介されていると思うので、敢えて最近の書籍の中から注目したものを挙げます。
日本経済で製造業が元気良いとはとても言いにくい現状です。その要因は様々ですが、多くの会社が目先の利益に囚われて、安易なリストラや海外移転といった小手先のコスト低減に走ってきたのが大きな原因の一つです。
また、デフレからの脱却も思ったほどの成果が得られていませんし、今後少子高齢化による労働者不足や市場縮小も懸念されています。なにかはっきりとしない不安に襲われているのが今の日本の製造業です。
本書は、そんな現場ではわかりにくい製造業の先行きについて、経済学という大きい視点から一つの解答例を示しています。すなわち製造業がかつて持っていた長期的戦略こそが正しい道であると、改めて気付かせてくれます。
また、人口減少が問題なのでなく、地道な技術革新や改善活動のマインドが弱いことが問題であることを示しています。
それが見えてくると、製造業もまだまだやるべきことが多く、諦めるのは早すぎると思えてきます。そのような見方ができるようになれば、製造業は少しずつ元気を取り戻してくるのではないか、そんな気がします。
製造業の経営者、管理者にとっても必読の書と思いますが、若い人にもぜひ目を通してもらいたい。それは、現場バカになってほしくないからです。
製造業の若手・新入社員に向けたメッセージ
くれぐれも現場しか見ない「現場バカ」にならないでください
製造業に入れば理屈抜きに現場改善を求められます。現場主義はもちろん大事ですが、上から言われっぱなしの改善・改革でなく、それがなぜ必要なのかを自ら考える習慣を身につけてほしい。
改善・改革は面倒で時間がかかり、会社にとっても相応の投資が必要となります。しかし前述したように、多くの会社が生産性向上の意義を忘れ、安易な手段に走って失敗しました。
日本経済が直面しているこうした問題を理解し、製造業の重要性と現在位置を知ること。それを踏まえて、改めてなぜ現場改善が必要なのか、会社に技術革新が必須なのかを自ら考えて実践してください。
今の製造業はかつてのような華やかさはないし、元気もあまりないけれど、実は若い人たちの力でその問題を解決できる、むしろやりがいのある業種だと気付いてほしいのです。
狭い現場で悶々としている(あるいは無関心でいる)より、たまにはこういった新書を読んで、いつもと違う視点で自分の仕事や職場、会社、経済を見直してみることをお勧めします。くれぐれも現場しか見ない現場バカにはならないでください。
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おもしろがり
経営コンサルタント/イラストレーター
東京都出身。神奈川県在住。
『面白狩り(おもしろがり)』(http://www.omoshirogari.com/)編集長