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2016年は鳥取県の「水素元年」に、人口最少の県が水素社会を目指す意義...

2016年は鳥取県の「水素元年」に、人口最少の県が水素社会を目指す意義 (陰山遼将,[スマートジャパン])

図1 鳥取県の再生可能エネルギー比率(2014年度の発電量)出典:鳥取県

 鳥取県は県内に火力・原子力発電所がないため、これまで必要な電力の7割以上を県外で発電したものに頼らざるを得ない状況が続いてきた。そこで同県では再生可能エネルギーによる分散電源の導入を推進。2011年度から4年計画で「とっとり環境イニシアティブプラン」を実行した結果、2010年度の時点では24.6%だった再生可能エネルギーによる発電比率を、これを2014年度には31.0%にまで引き上げることに成功している。

 再生可能エネルギーを中心に分散電源への転換を進める鳥取県だが、2015年からさらに水素エネルギーの導入に向けた検討を開始した。2015年7月に「鳥取県水素エネルギー推進ビジョン検討会」を立ち上げ、現在、2030年までの長期ビジョンとして県内への水素利用設備の導入や燃料電池車(FCV)の普及目標などに関するロードマップを策定しているところだ。

 そして鳥取県では2016年を同県の「水素元年」と位置付け、こうした将来の水素社会に向けた第一歩となる実証プロジェクトに着手する。

再生可能エネルギーで水素を製造、FCVやスマートハウスに

 実証プロジェクトの名称は「水素エネルギー実証(環境教育)拠点整備プロジェクト」で、鳥取県、鳥取ガス、ホンダ、積水ハウスの4者が共同で実施する。鳥取ガスが所有する鳥取市五反田町の敷地内で、再生可能エネルギーによる水素製造を行い、燃料電池車やスマートハウスで活用していく(図2)。

図2 実証のイメージ 出典:ホンダ、鳥取ガス、積水ハウス

 具体的には太陽光発電設備とホンダの高圧水電解システムを採用する「スマート水素ステーション(SHS)」で水素を製造し、ホンダのFCV「CLARITY FUEL CELL」などに供給する。さらに同じ敷地内にある積水ハウスの展示場をスマートハウス化して、燃料電池やFCVから住宅へ電力供給も行う。

 再生可能エネルギーを活用した水素ステーション、住宅、FCVを一体整備する水素の利活用実証は全国初の事例だ。来場者に水素の製造から利用までの一貫したプロセスを理解してもらうことで、水素の理解と普及につなげていく。敷地内では水の電気分解により水素を作る実演なども行い、子どもから大人までが水素について学べる環境教育拠点としても運営していく。運営主体となるのは鳥取県と鳥取ガスだ。

水素プロジェクトは4大都市圏に集中

 ここ数年間で、日本全国のさまざまな地域で水素の利活用に向けたプロジェクトが立ち上がっている。実施している地域を見てみると、関東、中部、関西、北九州を中心とした4大都市圏に集中する傾向にある。

 これは水素やFCVの普及に欠かせない水素ステーションの普及ロードマップが、4大都市圏を中心に整備する方針となっている影響もあるだろう。現時点ではFCVの普及台数が少ないため、水素ステーションの採算性も課題だ。まずは人口が密集しており、さらに副生水素も利用しやすい大規模な工業地帯がある大都市圏を中心にプロジェクトが進むのは自然な流れといえる。図3に示す水素供給・利用技術組合(HySUT)が公表している全国の商用水素ステーションの整備計画を見ると、その様子がよく分かる(図3)。

図3 2016年3月末までに整備される予定の水素ステーション出典:HySUT

 図3に示した通り、現時点で鳥取県に水素ステーションは整備されていない。隣接する県を見ても山口県南部に1基のみだ。しかし今回のプロジェクトで利用するホンダのSHSは太陽光で発電した電力で、水を電気分解して水素を作れるため、水素を運搬してくる必要もない。設置に必要な敷地面積も4畳半程度で済み、水素ステーションの課題である設置コストも抑えられる。今回のプロジェクトに最適な水素ステーションといえるだろう。なお、ホンダが日本海側の地域にSHSを設置するのは今回が初の事例となる(図4)。

図4 再生可能エネルギーで水素を作れるホンダのSHS 出典:ホンダ

 鳥取県の水素エネルギー推進プロジェクトはまだ第一歩を踏み出した段階だが、4大都市圏に属さない県や地域でも再生可能エネルギーを組み合わせて水素エネルギーの導入を図れるというモデルケースになれば、その意義は大きい。さらに寒冷な気候帯に属する地域で、こうした水素の製造から利用までの一貫したシステムを構築できるかという点でもチャレンジになる(図5)。

 鳥取県では今後、環境省が実施する平成28年(2016年)度のモデル事業に今回発表した実証プロジェクトが採択されることを目指す。同時に2030年に向けた水素の導入ロードマップの策定も進めていく。鳥取県によれば現時点で、2030年までに県内におけるFCVの普及台数を4400台、商用水素ステーションを10基整備するという目標案を検討しているという。

図5 鳥取県が目指す水素利用のイメージ出典:鳥取県


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