高周波特性を改善する銀めっきとその注意点
マイクロ波の製品には金めっきが多用されているが、用途によっては銀めっきが有効な場合がある。
銀めっきについては、あまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれないので、失敗談も交えて簡単に紹介してみたい。
マイクロ波の製品で銀めっきを施す代表的なケースとしてはBPF(バンドパスフィルタ)が上げられる。バンドパスフィルタは、所望の周波数帯域のみ通過させるためのユニットであり、特に通過帯域が狭い場合には回路のQを上げないと良好な特性が得られない。この回路のQを上げるのに銀めっきが有効である。
まだ若手エンジニアだった頃、行政向け防災無線に使用するBPFの設計を担当した事がある。
BPFの構造は半同軸型であり、先輩から引き継いだ設計資料を基に設計・試作を行った。中心周波数が6GHz帯とそれほど高くなかった事と、その時は急ぎで特性を確認したかったので、加工から上がってきた真鍮製のケースにめっきを施さないまま組立・実験を行ってみた。結果は通過帯域をはじめとして帯域外の特性も良好で“これに銀めっきを施せばさらに特性が良くなるな”と思ったのだが、これがそうはいかなかった。
銀めっきにより回路のQが上がると、確かに挿入損失は減るが、それにともない通過帯域は狭くなってしまう。当時の私には、まだそのような概念が不足していた。
結局は設計からやり直しとなってしまった……
ここで、銀めっきを施す場合の注意点を記載しておきたいと思う。
- めっき加工を依頼するときには、必ず“無光沢銀めっき”と指定すること。銀以外の成分が入っている装飾銀めっきを施されると、特にミリ波帯のBPFでは特性がメタメタとなってしまい、使い物にならなくなってしまう。
- 銀めっきの欠点として、非常に変色しやすく素手で触ろうものなら数日後には指紋がくっきりと浮き出てきてしまうので、取り扱いには特に配慮が必要である。
- 銀めっきへの塗装は注意が必要である。通常の塗装ではペリペリと簡単に剥がれてしまうので、まずは経験のある業者に相談すること。