顧客の無茶な要求に対して、技術者が取るべき行動とは
とある会議での技術者の苦労
かつてこの様な動画が話題となった。
The Expert (Short Comedy Sketch)
赤い線を引くことに関して一流の技術者であるアンダーソン氏は、とあるプロジェクト会議へ専門家として参加した。そこで顧客から受けた要求は、「全て直角な7本の赤い線」を「緑と透明のインクを使って引け」というものであった。
「全ては厳密に直角でなければなりません。いくつかは緑のインクと透明なインクを使います。できますか?」
何とも背筋の凍る要求だ。
当然アンダーソン氏はこの要求を不可能と考えその理由を説明する訳だが、そうは問屋が卸さない。
「7本の線すべて同時にお互いに直角というのはできません。」
彼がいくら「赤い線は赤いインクでなければ書けない」「2次元で直角に書ける線は2本だけ」と説明しようが、技術に門外漢の上司と顧客には理解されない。
「青いインクならどうなんだ?」「原理的には可能なんですね?」「タスクは明確だろ?何が問題なんだ?」「何故たった7本の線が書けないんだ?」と呆れられる始末だ。
「だけど、7本の線を引くのなんて難しい仕事じゃないじゃないか!」
会議は踊る、されど進まず。
アンダーソン氏からすれば緑や透明のインクで赤い線が引けないことは自明の理であるが、それがどうしても伝わらない。
そして、困惑するアンダーソン氏にさらなる要求が突き刺さるのだった。
「線のうちのひとつを子猫の形にできますか?」
(画像出展:https://youtu.be/BKorP55Aqvg)
技術者に求められるものとは?
この動画は技術者の苦労を表現したコメディー動画であるが、身に覚えのある諸氏も多いのではなかろうか。
漠然とした要求をする顧客、とにかく受注を取りたい営業、Yesしか求めない上司。
世界中からこの動画に同情の声が上がっていることから、どうやらこの手の技術者の苦労は世界共通のようである。
しかし、技術者側に問題はないかと問われれば、無いとは言い切れないだろう。
そもそも顧客が要求したモノ=真に欲しているモノ、とは限らないのは有名な話だ。
今回のケースでも、実際には線色の必要性や全てが一点で直角に交わる必要性は、顧客が真に欲しているモノが明確でない以上、あると断定することは出来ない。
また、この会議では「線」とは「ペン等で書く細く長い直線」であるという暗黙の了解がなされているが、実際には細い必要も、長い必要も、直線である必要もない可能性がある。
要は技術者には、顧客の真の要求を引き出すための理解力とコミュニケーション能力がこの手の仕様設計で求められるということである。
仕様を敢えて不明瞭にして取り交わし、その最低限を満たすものを納品するという手も世の中には往々にして存在する。
しかし、それでは真の顧客満足を得ることは出来ない。
積み上げた技術力と不断の努力にて無理を突き破ることこそ技術者の誇りなのだ。
しかし、本当に無理なものはどーしようとも無理なので、是非とも世の顧客と営業と上司の皆々様には、その点をご理解の程宜しくお願い申し上げます。
新規案件お待ちしております。