鉱石ラジオから学ぶ、エンジニアとして私が大切にしていること。
みなさんは鉱石ラジオを作ったことがあるだろうか。
昔は小学校の授業で作ったらしいが、僕が小学生の時はなかった。
鉱石ラジオは非常に単純なラジオだ。
- 電話線を適当な長さ(長い方がいい)屋外に張り出してアンテナを作る(もちろん棒アンテナとかエナメル線を巻いたアンテナでも大丈夫)。
- コイルとエアバリなんかで同調回路を作る。
- 黄銅鉱や方鉛鉱に先を細くした金属を接触させると、場所によっては整流特性をもつのでこれが検波器になる。鉱物の代わりにゲルマニウムダイオードを用いたのがゲルマラジオだ。
- アンテナからの電力のみを電源としているので、クリスタルイアフォン等圧電素子を用いて音声を拾う。
ちょっと作業はあるがキットなんかも売っているし、一から材料をそろえても秋葉原で1000円程度だと思う。
一次大戦中に塹壕の中で作られたという塹壕ラジオも有名だ。
適当な板,木片,銅線,安全ピン,ゼムクリップ,カミソリの刃,エンピツの芯などでラジオを作ったらしい。材料は異なるが仕組みとしては同じものだ。
鉱石ラジオは仕組みは単純だが、なかなかうまくいかないことも多い。
電波を拾えなかったり、同調が取れなかったり。
だからこそ、ノイズの彼方から人の声が聞こえてきたときの感動は大きい。こんな単純な仕組みで、電源もないのに。
溢れかえる電磁波の中から、自分の作った回路が取り出した音というのは特別に感じる。
かつてのラジオ少年のはじまりはほとんどこの鉱石ラジオだったというのも頷ける。
現代の技術にはブラックボックスが多い。なんでそうなっているのかわからないで使っているものばかりだ。
でもたぶん、わかろうとしたら一生かかっても時間がたりないんだろう。
ツマミを捻れば聞けるラジオの中身を、知らない人が多い。PCの仕組みなんて説明できる人はなかなかいない。
スマホは人ごみの中でどうして目的の音声を拾えるんだろう。
しかし、仕組みというのは細分化していけば最終的にはとても原始的な部分に落ち着く。
鉱石ラジオはそんな世界を垣間見せてくれるものの一つだと思う。
わからないことはい多いけれど、ほんとうのすがたは確かに存在している。
複雑で面倒で息が苦しくなったときは、物事のはじまりの部分をみるようにしたい。
エンジニアとして大切なことだと思う。