自己申告に潜んでいた中国人スタッフの想い?!
以前わたしが中国に駐在していたときの
会社の中国工場・事務所では、
自己申告制度を導入していた。
対象は、管理者・監督者以上で、
現場作業者は実施の対象外でした。
わたしが見ていた部門のスタッフも対象だったので
実施されました。
実施後しばらくして人事課より「参考までに」と言って、
スタッフの自己申告の結果を渡されました。
当事、自己申告を実施しているのは知っていましたが、
その結果をどうするのかなどの事情を知らなかったわたしは、ちょっと困惑しました。
記載されていた内容を見て、
困惑が増すと同時にショックを受けたのを覚えています。
そこには「他の部門に行きたい」と書いてあったのです。
理由は、自分はその部門の方が向いているし、
その仕事をしたいと書いてありました。
わたしとしては、
そのスタッフにはずいぶん力を注いで育成してきたので、
「えっ、何で」という感じでショックだった。
そのときに頭にはもう一つのことが浮かんでいた。
もし本当に他の部門に行ってしまうとしたら、
ここまでいろいろ教えて、
やっと戦力になったのに、
また一から教えるのかと言う思いでした。
今思えば、中国ではこのようなことは起こると
覚悟しておくべきことでした。
人事にこの後どうするのか聞いてみたところ、
特に何もしなくてよいですよ。
ただスタッフがこんなこと考えていると
参考にしてくださいとあっさり言われました。
何もしなくてもよいと言われたので、
気にはなったものの何もせず日が過ぎた。
するとそのスタッフは、
なんと異動希望先部門のTOP(日本人)に
直接異動をお願いしていたのです。
その日本人駐在員から、
「彼はこんなこと言ってきてるけど、どうなっているの?」
と聞かれ、「正直困惑しています」と答えた。
彼の希望は分からなくもないが、
いま自分の部門から出す訳にはいかないとも言った。
そのスタッフの真意を確かめるために面談を行った。
最初の内は、話していても出たいの一点張りで、
最悪、異動出来ないなら辞めると言い出すのではと思った程です。
こちらもそうなったらなったで仕方がないとまで考えました。
よく話を聞いていくうちに、
少しずつ彼の考えや気持ちがわかってきました。
このスタッフは、
自分が昇格できないことに不満を持っていました。
彼は2年前に現場技術員だったのをこちらに
来てもらったと言う経緯がありました。
その部門にそのままいれば、
昇格できたと言うのが彼の言い分でした。
実際に前の部門の責任者に確認してみたところ、
昇格できたかは五分五分とのことでした。
何もしなくていいからと、
本当に何もしなかった自分を反省しました。
スタッフがどんな思いで自己申告を書いていたかを考えて、
もっと早く話を聞くべきだったと。
結局このスタッフに、今は他の部門に出せない事情を話し、
その事情が解消されて、そのときにも異動を希望していれば、その方向で考えると伝えました。
事情とは、彼に代わるスタッフが確保されることです。
また、評価についてもわたしの考え方を伝え、
今の仕事の内容とその結果に沿った
評価をしていることを説明した。
その時に100%納得したかは分かりませんが、
当面そのまま仕事を続けることで落ち着きました。
異動希望で、それが叶わないからと言って、
今の仕事をいいかげんにやることがないように話をし、
彼もそれはいけないことだと理解してくれていました。
取り敢えず落ち着いたものの、
このことはずっと頭に残っています。