自分のミスを消そうして致命不良に!?(その2)

自分のミスを消そうして致命不良に!?(その2)

前回タイ人の外国人研修生が切削加工品についた傷を取るよう指示されたが、削り過ぎて寸法不良になってしまった。傷はこの作業者の不注意で付けてしまったらしく寸法公差には十分注意して研磨するよう指示したが、本人は傷を消すことで頭がいっぱいだったようだ。

メルマガではこの問題についてタイ人(外国人)特有の問題なのか、日本人でも起こり得るのかについてアンケートを実施した。今回はその時のアンケート結果と読者の方からいただいたコメント紹介する。

 

アンケート結果はこのようになった。

(1)あなたは今回の事例はタイ人特有のことだと思いますか?
タイ人(東南アジア)特有の気質だ: 3票(12%)
中国人にも起こり得る問題だ: 5票(19%)
国は関係ない、日本人でも起こり得る問題だ:18票(69%)
その他:0票( 0%)

 

結果を見ると多くの方がどこの国の人かは関係なく、日本人にも起こり得る問題と捉えているようだ。逆の見方をすると3割の方はタイ人や中国人に起こりやすい事例と考えている。

わたしはどちらかと言えば今回少数派となった方に近い考えを持っている。

2つ目のアンケートの結果はこのようになった。

 

(2)今回の問題が起きた原因は何だと思いますか?
タイ人の気質だから仕方ない:0票( 0%)
指示の仕方があいまいで自業自得だ:7票(50%)
本人ではなく別の作業者に研磨させないからだ:0票( 0%)
修理は専門のスタッフがやるべきことだ:3票(21%)
研磨せず特採申請すべきだった:0票( 0%)
その他:4票(29%)

 

結論から言うと、指示の仕方が不十分だからこういう結果になったということですね。

今日のポイント

ここで読者の方からいただいたコメントを紹介する。コメントを書き込んでくれたみなさん、ありがとうございました。

まずは外国人特有というお考えのお二人のコメント

 

◆現場監督者さん
『毎回楽しく拝見させて頂いています。 (ありがとうござます。)
曖昧な説明で仕事ができるのは日本人の特筆すべき点です。しかし、その曖昧な表現は外国人から見ると要点が絞り込まれていないため、理解できていないのです。結果は、指導者の了解を得ず、自分なりに解釈して実行します。この点を理解して作業者に細かく指示をする必要があることを私は現場でたくさん学びました』

◆zさん
日本人と違うのは、言ったこと以上はしない。 「常識だから」は通用しないと、心得てます。

 

このお二人の意見にうなずいた方は多いのではないか。間違えのようのない十分な指示が必要であると考えていまし、実践するようにしています。

次に国籍には関係ないというご意見のお二人です。

 

◆yasuponさん
『国籍には関係ないです。 日本人でも起こります。派遣やパートさんの問題でも無く、正社員でも起こります。 安全に関することはきつく指導しますが、作業性、製品に関することは大抵は大目に見る努力をしています。 品質異常を起こす事例を発見してくれた、それの良い対策を考えてくれと励ます“努力”をします。常に優しく出来ない自分に悩むこともありますが……失敗を繰り返す、特にそれの隠蔽を重ねて行う場合、きつい対応を取ります。異動や派遣さんであれば申し訳ないが契約の打ち切り、など行います』

 

励ます努力はとても大事なことですね。常に優しく出来ない自分に悩むでるとのこと、何かとってもよくわかるような気がします。でも、繰り返しの失敗や隠ぺいには厳罰で臨んでいるのですね。

 

◆通りすがりさん
『小生の経験からは、この問いはチョッと本筋を外したように思うのですが?

逆に、管理者が陥りやすい失敗を示唆しているように見受けます。その観点を適切に捉えているかどうかで、筆者の問い掛けへの答えが分かれてしまうものと見ますが、いかがでしょうか?

今回の事例において、製品の改修を指示した際、その指示者はどのような姿勢(意図を含んで)で指示を行なったのでしょうか?

 

もし、作業者当人へ当人の作業ミスを強く意識させ、再発防止の一環とするような意図が有って(無くても同じですが)、それを指示された当人が強く意識しますと、 自分自身のミスのリカバリー注意が集中し、他の事は後回しになりがちになる(それが重要事項であっても)のは、仕事経験の浅い人やモノ造り意識が低い人にとっては有りがちなことです。

一方、指示者がエラー製品の改修を最優先として、その作業を指示する場合は、どの様な指示を行なうでしょうか? そう、キズ消しの指示ではなく、改修の手順と注意事項を決め、その改修[作業]の実行を指示したでしょう。

「不良品を材料にして良品を造る」として取り組む意識が、改修の際には大事なのです。……二次不良や弊害の事前検討と防止策なんて当たり前ですよね。

つまり、適正な改修作業を阻害する要因を改修指示者が適切に判断して、それに合った人選や指示を行なうことが原則ですので、本筋は作業者の国籍による傾向ではなく、 その作業者、個々の特性(ミス隠しの傾向や逆の責任感)を見極めて如何に指示するか? ではないでしょうか?』

 

国籍ではなく、作業者個々の特性によるとのことですね。

補足

この会社ではその後今回の問題に関して、作業者や指示をした人だけでなく関係する人たち全員で注意を払う、2重のミスを起こさせない雰囲気を作っていこうとなりました。

もちろん、徹底した指示を出したうえでの話です。

出典:中国工場での品質管理・品質改善


KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント◎電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導及び品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走 ◎東京都/千葉県商工会連合会専門エキスパート(品質管理、製造業指導) GCS認定コーチ◎日本生産性本部経営アカデミー講師 名古屋外国語大学非常勤講師 セミナー/企業研修講師多数◎中国工場コンサルティング実績 日系中国工場品質改善及び管理体制の見直し(広東省)、中国企業品質管理体制の構築(福建省1社)、中国企業労務人事管理監査対応指導(パートナーコンサルタントと共同で実施:広東省1社)、米国D社の労務人事監査指摘事項への対応を指導、中国工場品質管理体制の構築(広東、大連など2社)、中国工場運営管理支援(広東1社)、外観検査の精度向上指導(広東1社)、中国生産委託先工場監査代行(広東1社) 国内工場管理の見直し及び製品コストダウン、外灯製造会社の5S指導、金属加工会社の品質管理・改善、生産性向上指導(1社)、金属加工会社の組織再構築、経営改革指導(1社)、板金塗装会社の5S指導(1社)、環境関連企業の新工場立ち上げ支援(1社)◎製造業向け社員研修実績 中国人管理者教育(広東、大連、厦門など3社)、コーチング研修(2社)、来日した中国企業スタッフ研修、中国赴任前研修(パソナ様)、若手社員向け中国工場の問題点と対処法(和歌山県工業技術センター様)、中国工場品質管理講座&異文化コミュニケーション(富士通テレコムネットワークス様)、仕入先様品質管理勉強会 テーマ:中国工場での品質管理の進め方(株式会社オートバックスセブン様)、中国への生産委託に伴う工程/品質管理のポイント(N社様、I社様) ◎著書 こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>(日刊工業新聞社)、雑誌「標準化と品質管理」2012年8月号特集記事執筆(日本規格協会)、外観検査の不良見逃し・ばらつき低減(技術情報協会・共同執筆)、通信教育講座「外観目視検査の進め方と留意点」担当講師(テキスト執筆、添削指導) ◎KPIマネジメント http://www.prestoimprove.com/index.html ブログ「中国工場での品質管理・品質改善」https://ameblo.jp/prestoimprove/