自分のミスを消そうして致命不良に!?
今回は標題の事例を紹介し、それが外国人(今回はタイ人だが、中国人にも当てはまるような気もする)特有の問題なのか、日本人でも起きる可能性があるのかを考えたい。
ある切削加工メーカーではタイ人を外国人研修生として使っている。すでに2年半が経ち会社の戦力になっている。ある時こんなことが起きた。10個口の加工精度も加工難易度も中程度の製品があった。
加工自体は問題なくできたが、出荷前の製品チェックで10個中2個に傷が付いていることがわかった。タイ人作業者から傷に関する報告はなく傷のことは知らないといったそぶりであった。
全体の厚さの寸法公差に余裕があったことから傷のある面を研磨することにした。ただし、別の穴の位置寸法にはさほどの余裕がないため研磨できる量は少なく限定された。
その研磨は加工を担当したタイ人作業者にやらせることにし、品管部からは穴位置寸法に余裕がないので研磨のしすぎに注意をした。また、加工品の検査担当から研磨できる量を指示したメモも渡された。
それにもかかわらずこの作業者は研磨しすぎて穴位置寸法がNGになってしまった。それも0.1mmも外れてしまった。傷であれば顧客の使い方によっては許容され特採される可能性もあったが、この寸法NGは致命的で作り直しとなった。
今日のポイント
なぜこのようなことになってしまったのだろうか?
作業者本人に話を聞くと研磨量よりも傷を消すことに主眼があるようだった。寸法がNGじゃ納品できないだろうと問いただすと、ちょっとの研磨では傷が残ってしまったのでさらに研磨したと言う。
どうも加工済み製品の保管状況などからそのタイ人作業者が工具か何かを製品の上に落して傷を付けたと思われた。これから推測するとこのタイ人作業者は自分が付けてしまった傷、すなわち自分のミスの痕跡を消したかった、それが再研磨の優先事項となっていたと思われた。
これはタイ人特有のことであろうか、それとも中国人でも同じようなことは起きるであろうか。いやいや日本人でもそういった状況になると同じ事をしてしまうのであろうか。あなたはどうお考えだろうか。
このようなことを想定して指示をより明確にすることも必要であろう。例えば、この指示した研磨量では傷が残ることもあるがその時はそれ以上研磨してはいけない。必ず報告し判断を仰ぐように、と。
また、傷は特採される可能性があるが、寸法NGは致命的となることを事前にきちんと説明しておくとか。でも2年半も加工の仕事をしているのだから、そんなこと今更言わなくてもわかっていると思いますよね、普通。
補足
この件ではもちろんタイ人作業者に対して注意、叱責をしたのですが、この会社の社長はこんなことを言っていた。
「彼は怒られたことはとても悲しいと思っている。しかし製品を不良にしてしまったことは悲しいと思っていないんだよな」