紛争鉱物の闇 – 不都合な真実 –

紛争鉱物の闇 – 不都合な真実 –

我々製造業において、製品の開発製造販売をおこなう時には、日本国内のみならず、世界各国の規制を伴います。しかも、年々規制が強化され、過去には、なんら問題なく販売してきた製品が、特にグローバルに販売される現在において、グローバルに規制が増えることにより、原料の調達から販売および顧客が使用を終わり廃棄に至るまで、それぞれの段階においてどのような規制があるかを常に調査監視をおこない、それら規制を受けないように製品の開発製造を行わなければならなくなっており、それに伴い各企業の負担は増大しております。

 

製造業におけるさまざまな規制

製品を開発製造し、販売に至るまでの規制には、

・製品含有禁止有害化学物質規制 :

これにはEUのRoHS規則、REACH規則、その他各国の法令において特定化学物質の使用や含有の禁止規制があります。

・製造工程で使用する薬品へ含有する化学物質規制 :

これは製造に関わる人への健康や、環境への影響軽減のための規制、また使用後に廃棄する場合の規制があります。

・紛争鉱物に関わる規制 :

こちらは、アメリカのドッドフランク法に基づく、コンゴおよびその周辺国から産出される鉱物資源の中で、テロリストの資金源になっている鉱物資源を使用してはならないという規制になります。

・廃棄物規制 :

これは、上述のEUのRoHS規則の上位法になりますが、文字通り廃棄物に関する規制になります。

・容器・包装材指令 :

こちらもEUの法律で、容器や包装材に関わる規制になります。

ここまでは主な規制になりますが、その他、EUをはじめ各国においてさまざまな規制があります。

 

紛争鉱物に関する規制

ここで、掲題の紛争鉱物に関わる規制ですが、アフリカのコンゴおよびその周辺国では、いわゆるレアメタルが多く産出される地帯で、そのレアメタルのうち、金、タングステン、タンタル、スズおよび最近では、まだ、ドッドフランク法では指定されておりませんが、コバルトも紛争鉱物として調査対象物質になっております。これら5つのレアメタルにおいて、そのコンゴおよびその周辺国で産出されテロリストの資金源になっているレアメタルを製品の材料として使用してはならないという規制になっております。

さて、その5つのレアメタルのうちタンタルを例にあげますと、かつては、オーストラリアが最大の産出地帯でしたが、2018年には世界の産出量が1,800トンに対し、アフリカのコンゴでの産出量が一番多く、700トンあり、コンゴの隣国ルワンダでは、500トン。この二国で世界の産出量の約70%近い1,200トンを占めています。ちなみにオーストラリアは、90トンにすぎません。

ここからは、レアメタルの権威である東京大学の岡部教授によるインタビュー記事の要約になりますが、いわゆる紛争鉱物の闇の部分のお話しをとりまぜて述べさせていただきます。

ここで、タイトルにある”闇”の部分になりますが、コンゴおよびその周辺国において70%近い産出量があるにも関わらず、産業界ではこの地域から産出された鉱物を使用してはいけない(現実的には、認証機関による認証を受けた精錬所(鉱物から特定の金属を取り出す作業をする施設・工場)ではない精錬所で精製されたタンタルを使用してはいけない)ということになっています。そうすると、現在世界に出回っているタンタルは、いったいどこで産出されたタンタルなのでしょうか?

そのカラクリですが、これらレアメタルは、鉱石の段階のものでの取引に限られて、テロリストの資金源になっているものについては規制を受けていますが、ここに抜け道があります。

つまり、スクラップまたはリサイクル由来のレアメタルに関しては規制を受けないため、テロリストの資金源になっている産出された鉱物を、粉砕しスクラップまたはリサイクル品と称して流通させているのです。

これでは、結局のところ、テロリストへの資金源を断つことになっていないということです。

これが不都合な真実と言わしめる所以であります。

これは、タンタルに限らず、他の紛争鉱物も当たり前のようにおこなわれているとの見立てです。

 

我々企業は、材料として使用しているレアメタルを、長大な時間をかけてサプライチェーンの上流までさかのぼって、テロリストの資金源になっていないことの確認をおこない、顧客にその旨を回答するという義務を負っているのですが、この抜け道により我々企業の地道な調査工数が意味のないただの浪費になってしまっていることになります。

 

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