約束を守らないのは誰のせい?

約束を守らないのは誰のせい?

ある日本の会社が中国企業に製造委託を行った。なぜその中国企業に委託したかというと、その日本の会社が売りたい商品(製品)の製造ノウハウをその中国企業がもっているからであった。

その商品は今後日本で需要の増大が見込まれ有望なものであるといってよいものだ。従ってその中国企業を見つけたことは特筆すべきことである。

日本の会社と中国企業とで設計・開発をして商品の仕様が決まり、いよいよ生産を開始することになった。日本の会社は中国企業からの要求により400台分の代金を前払いで支払った。1個あたりの単価が高いので、400個でもそれなりの金額になる。

 

中国企業で生産をして日本に納入された。しかし、納入品の50%以上から何らかの不良が発見された。その後に納入されたものも同じような状況であった。

もちろん、不良品は中国に返品し修正するなどして再納入させている。不良の状況も連絡し再発しないよう要求しているが、生産開始から3年経った今でも400台の不良の処置と未納分の納入は完了していない。

この400台の処理に関しては泥沼化しており、話を聞いている限りでは解決するのは難しいと感じた。こうなってしまった要因を挙げるといくつかある。

今日のポイント

最初にいえるのは、代金を前金で全額払ってしまったことだ。お金を払ったあとでいくら不良といっても相手は本気で対応しない。他にも仕様をきちっと取りきめていない。生産時に日本の会社のスタッフが立ち会っていないなどなどたくさんある。

日本の会社としてはこの500台はともかく、次の商品を作ってもらって日本で販売しないことには会社が回らない。400台の件を教訓に次の商品の生産を進めなくてはならない。

中国の会社に今後の展開を示し、自分のところの商品を生産すればこれだけ儲かるというのを理解させる必要がある。中国企業のトップも馬鹿ではないから、儲かるとわかればきちんとやるはずである。日本の会社の社長は何度も今後の見通しについて話したと言っている。

 

ところが、次の商品でも同じように不良品が多く納入されているとのこと。400台の教訓があるにも関わらず生産には立ち会っていないそうだ。生産させたのはよいが不良が多いので販売はしてなく、今度は代金をまだ払っていないそうだ。

この場合、中国企業にも問題はあるが日本の会社にも問題がある。一番の問題は生産に立ち会ってその場で不良品を排除させることをしなかったことだ。そして、2番目は中国企業に儲かるという実感をさせていないことだ。生産をしても不良を理由に販売しない。当然次の注文はできない。これではこの日本の会社と付き合っても文句ばかり言われて、ちっともおいしくないとなってしまう。

このポイントを日本の会社の社長は全く認識していなかった。

補足

儲かる、利益になる、自分のためになると相手に実感させることは取引をするうえで非常に重要なことである。これは会社と会社だけでなく、会社と従業員の関係においてもいえるのではないだろうか。

だいぶ話をはっしょって書いてしまったが、中国企業と付き合うにはそれなりの苦労があり、それを乗り越えないとコストという果実を得ることはできないということだ。

出典:中国工場での品質管理・品質改善


KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント◎電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導及び品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走 ◎東京都/千葉県商工会連合会専門エキスパート(品質管理、製造業指導) GCS認定コーチ◎日本生産性本部経営アカデミー講師 名古屋外国語大学非常勤講師 セミナー/企業研修講師多数◎中国工場コンサルティング実績 日系中国工場品質改善及び管理体制の見直し(広東省)、中国企業品質管理体制の構築(福建省1社)、中国企業労務人事管理監査対応指導(パートナーコンサルタントと共同で実施:広東省1社)、米国D社の労務人事監査指摘事項への対応を指導、中国工場品質管理体制の構築(広東、大連など2社)、中国工場運営管理支援(広東1社)、外観検査の精度向上指導(広東1社)、中国生産委託先工場監査代行(広東1社) 国内工場管理の見直し及び製品コストダウン、外灯製造会社の5S指導、金属加工会社の品質管理・改善、生産性向上指導(1社)、金属加工会社の組織再構築、経営改革指導(1社)、板金塗装会社の5S指導(1社)、環境関連企業の新工場立ち上げ支援(1社)◎製造業向け社員研修実績 中国人管理者教育(広東、大連、厦門など3社)、コーチング研修(2社)、来日した中国企業スタッフ研修、中国赴任前研修(パソナ様)、若手社員向け中国工場の問題点と対処法(和歌山県工業技術センター様)、中国工場品質管理講座&異文化コミュニケーション(富士通テレコムネットワークス様)、仕入先様品質管理勉強会 テーマ:中国工場での品質管理の進め方(株式会社オートバックスセブン様)、中国への生産委託に伴う工程/品質管理のポイント(N社様、I社様) ◎著書 こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>(日刊工業新聞社)、雑誌「標準化と品質管理」2012年8月号特集記事執筆(日本規格協会)、外観検査の不良見逃し・ばらつき低減(技術情報協会・共同執筆)、通信教育講座「外観目視検査の進め方と留意点」担当講師(テキスト執筆、添削指導) ◎KPIマネジメント http://www.prestoimprove.com/index.html ブログ「中国工場での品質管理・品質改善」https://ameblo.jp/prestoimprove/