理系料理を食べに行こう ~技術者は常に危険と隣り合わせ~
小生が麦茶の素晴らしさを得々と語っていると、次につまみセットが運ばれてきた。
それすなわち、スルメイカ・エイヒレ・ホタテのひも・アルコールランプの4種で
あった。要はランプを使って自分で炙れということである。
しかし、アルコールランプとはまた懐かしい。小生、消火の際に横から蓋をカポッと
はめるのがお気に入りであった。
しかし、店員さんによると現在小・中学校ではアルコールランプは廃止の波にある
とのこと。どうやらアルコールランプによる事故が多発したことから、その使用を
危惧する声が上がっているようである。だが小生、その波に敢えて異を唱えたい。
我々技術者も日々、加工装置や薬品やガスを使用するが、それらは一歩扱いを誤れば
忽ち大事故に繋がる危険なものである。
しかし、その危険性を知らずして扱うということが最も危険なのだ。アルコールラン
プも然り、その危険性を、その正しい使用法を、その役割を正しく認識し、理解する
ことが肝要であり、それを伝えることこそが教育ではないだろうか。
小生がこの様に熱く語ると、友人曰く、「すごいね。そーゆーまともな事も言えるん
だね(原文ママ)」とのこと。普段こいつが小生をどう捉えているか良く分かる発言で
ある。
それはさておき、小生、早速三脚台に網を敷き、下にマッチで着火したアルコールラ
ンプを置き、スルメイカを炙る。料理はまず目で楽しむというが…う~む、なにかこ
う、先生の目を逃れ理科室で悪事を行うかの如き心境で、罪悪感と背徳感しか湧い
てこない。小生の心のHPが地味に削れていくのを感じる。
しかし改めてこの店のメニューを見ると、この様に一見奇を衒った洒落た料理が多い
が、小生的にはまだまだぬるい。ここはよりパンチの効いた以下の様なメニューを出
しては如何だろうかと友人に具申した。
・その場で、生きた食用カエルを解剖し、焼いて頂くカエルの解剖セット
・その場で、元気に動くミドリムシを顕微鏡で観察しながら頂くミドリムシクッキーセット
・その場で、塩酸と水酸化ナトリウムを混ぜ、中和させて飲むドキドキ食塩水セット
小生がこの様に熱く語ると、友人曰く、「あのね。そーゆーこと言うからモテないん
だよ(原文ママ)」とのこと。この瞬間、心のHPは底を尽き、小生無事死亡。
余りにも遅い、惜しまれぬ死であった。
(了)