溶接設計の検証不足で泣きを見る!

溶接設計の検証不足で泣きを見る!

華南地域にある中国企業が設計した鉄材の構造物を天津にある加工業者に生産させ、メッキも同じ地区にあるメッキ業者が行いました。

天津地区は、鋼材(鉄材)を加工したり組立てたりする製品の生産が盛んです。鉄材はメッキをする必要がありますが、溶融亜鉛メッキなどメッキ業者もたくさんあります。

同じものを他の地域で作るよりも安くできるのは間違いなく、鉄という重量物の運賃を考慮してもコストメリットが出るので、わざわざ遠く離れた天津のメーカーに作らせているのです。

今回の構造物は、鉄のアングルが重なった部分を溶接で継ぐ設計としていたのですが、全面溶接にしないで点溶接としました。それでも強度は十分保てるという判断でした。

サンプル製品が納品され強度などを確認して問題がなかったので、お客さんにもサンプル出荷し、評価OKとなりました。ところが、初回量産品が納入され検査をしたところ、溶接部に錆が発生しているものがいくつか見つかりました。

原因を調査していくと、鉄のアングルが重なっているところに隙間(空間)があり、点溶接だったためにメッキ工程の前処理で行う酸洗の液が隙間に入り込み、メッキ後もその酸洗液が残留していたことがわかりました。

溶融亜鉛メッキのメッキ液が、その隙間に流れ込むのは難しいと思われ、前処理で入り込んだ酸洗液が追い出されることなく残留してしまったということです。その酸洗液がメッキ後に流れ出して、メッキのりがよくない溶接部に付着し錆を発生させたというのが真相です。

設計部スタッフが設計した時に実際に鉄アングルを重ねてみれば、そこに隙間ができることはわかったはずです。また、全面溶接にすれば隙間を塞いでしまうことができたのですが、点溶接にしたことで隙間が存在することになりました。

設計部スタッフは、溶接強度と溶接の工数には気を配っていたのですが、そこに出来る隙間がどんな影響を及ぼすかについては、考えがおよびませんでした。

お客さんのサンプル評価がOKだったので、錆が発生したことは言えず、黙って錆の補修処理をすることになりました。ただし、ずっと補修処理とする訳にもいかないので、どこかのタイミングで設計を変える必要があります。

 

出典:溶接設計の検証不足で泣きを見る!


KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント◎電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導及び品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走 ◎東京都/千葉県商工会連合会専門エキスパート(品質管理、製造業指導) GCS認定コーチ◎日本生産性本部経営アカデミー講師 名古屋外国語大学非常勤講師 セミナー/企業研修講師多数◎中国工場コンサルティング実績 日系中国工場品質改善及び管理体制の見直し(広東省)、中国企業品質管理体制の構築(福建省1社)、中国企業労務人事管理監査対応指導(パートナーコンサルタントと共同で実施:広東省1社)、米国D社の労務人事監査指摘事項への対応を指導、中国工場品質管理体制の構築(広東、大連など2社)、中国工場運営管理支援(広東1社)、外観検査の精度向上指導(広東1社)、中国生産委託先工場監査代行(広東1社) 国内工場管理の見直し及び製品コストダウン、外灯製造会社の5S指導、金属加工会社の品質管理・改善、生産性向上指導(1社)、金属加工会社の組織再構築、経営改革指導(1社)、板金塗装会社の5S指導(1社)、環境関連企業の新工場立ち上げ支援(1社)◎製造業向け社員研修実績 中国人管理者教育(広東、大連、厦門など3社)、コーチング研修(2社)、来日した中国企業スタッフ研修、中国赴任前研修(パソナ様)、若手社員向け中国工場の問題点と対処法(和歌山県工業技術センター様)、中国工場品質管理講座&異文化コミュニケーション(富士通テレコムネットワークス様)、仕入先様品質管理勉強会 テーマ:中国工場での品質管理の進め方(株式会社オートバックスセブン様)、中国への生産委託に伴う工程/品質管理のポイント(N社様、I社様) ◎著書 こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>(日刊工業新聞社)、雑誌「標準化と品質管理」2012年8月号特集記事執筆(日本規格協会)、外観検査の不良見逃し・ばらつき低減(技術情報協会・共同執筆)、通信教育講座「外観目視検査の進め方と留意点」担当講師(テキスト執筆、添削指導) ◎KPIマネジメント http://www.prestoimprove.com/index.html ブログ「中国工場での品質管理・品質改善」https://ameblo.jp/prestoimprove/