時間単金について
時間単金の原価への使われ方
一般的な原価の内訳ですが、製造業の場合大きく材料費と加工費に分けられます。
製品1個当たりの費用をどう算定するかですが、材料費は使用される部材の「単価x使用量」となります。製品によっては1個当たりの使用量を把握するのが難しい場合もありますがご理解頂けるものかと思います。
加工費ですが、一般的には労務費と製造経費で構成されています。
では製品1個当たりの労務費はどうやって算定するのでしょうか。
例えば「普通1日で製品Aを100個と製品Bを100個の計200個作れる。だから製品Cを100個作るときの労務費は0.5日分だ。」というのは何か変だなとすぐお気付きになるかと思います。
そうです。製品Cが製品AやBと同じ時間で作れるのかどうか分かりませんし、製品AとBも同じ時間で作れるのか分かりませんね。
製品を製作するのにかかる時間のことを加工工数と言います。加工費を算定するには製品1個当たりの加工工数を算定して、その加工工数に時間当たりの費用を乗じなければなりません。
この時間当たりの費用を時間単金と呼んでいます。(Hourly rate や Charge rateとも言います)加工費は「時間単金x加工工数」で算定します。
時間単金の時間とは
時間単金とは、時間当たりのコストなのですが、ここでいう時間とはどんな時間でしょうか。
生産管理的な要素になるのですが、時間単金の時間は標準時間(スタンダードタイム)でなければなりません。
標準時間とは単位当たりの仕事量の必要時間のことですが、生産管理的な話になればかなり細かい話になりますので、ここでは割愛させて頂いて、
原価に使用する点で簡単に言えば、
「標準時間には人時間と機械時間があって、それぞれ標準作業時間や標準稼働時間を標準時間とする。」
となります。そのため、時間単金の算定は、「標準費用÷標準時間」となり、言い換えれば、「普通に掛かった費用を普通に作った時間で割った時間当たりのコスト」となります。
時間単金と加工工数と原価の関係性
普通、加工工数が下がったら原価は下がるものと考えますよね。でも、「時間単金x加工工数」という式だけだと勘違いが起こることがあります。
例として以下を挙げます。
ある製品の加工標準時間は1時間で標準コストは100円(変動費60円固定費40円)だとします。時間単金は100円です。
工程改善によって同じ製品を30分で作れるようになりました。ここでの標準コストは70円(変動費30円固定費40円)と下がります。でも、時間単金は70円÷0.5時間で140円になりました。時間単金が100円から140円に上がっていて、これだけ見ると原価が上がっているように思えてしまいます。
でも本来は、加工原価は単金100円x1時間=100円が単金140円x0.5時間=70円と原価は下がっています。
当たり前のことを書いていますが、1品種なら分かりやすいのですが、
工数の違う多品種をまとめて時間単金を設定して加工原価をだす場合などは分かりにくくなります。
まとめに代えて
よく売上高を経営成果の測定単位に使用しますが、事業成果としての指標は売上高は当然です。
一方、製造業で出来高を測定する単位としては売上高ではなく、アウトプット仕事量(作業時間)が適しています。その理由は、売上高と作業者の行った仕事量との間には、売価というファクターがあって絶対的な関係性が認められないからです。
このジレンマに原価管理者は常に悩まされますが、利益を向上させるためには、費用削減に注力していくしかありません。
つまり、時間単金の元となる標準時間や標準費用を生産管理部門や製造部門と協働してしっかり管理していく必要があります。
実際の加工工数は、生産状況によって変動します。作業者の休みや、NGの発生による生産の遅れなど日々発生するものです。
標準時間と標準費用を正しく把握した上で指標として実際の加工実績時間を管理していくことは、製造業での加工費低減には不可欠なものとなります。