技術者/研究者が着る服とは
人類と衣服との歴史は古い。
古来、人類にとって衣服とは防寒、体温調節を行うための手段であった。
人類と他の動物との差は衣服を着こなすことにあり、この手段の獲得によって人類は多様な環境に応じた活動が行えるようになった。
やがて人類が集団としての文化を形成するにつれ、衣服は本来の機能とは別にシンボルとしての機能を持ち始めた。
すなわち、人類は衣服をシンボル化することで身分、職業、権力の差別化を図ったのだ。
さて、それでは現代社会において小生の様な技術研究者のシンボルたらん衣服とは何であろうか。
小生が想像する限り、世間においてそれは「白衣」という意見が大半であろう。
「白衣」は絶大なコストパフォーマンスを発揮する衣服である。
誰もが購入可能であり、着用に資格が必要ないにも関わらず、着用者にあたかも清潔感と知性が存在するかのように錯覚させることが可能だ。
また、白衣は専門的技能/知識の職業的シンボルと世間より強く認識されており、着用者が医療従事者、技術研究者、教育関連者、寿司屋、浪越徳治郎の何れかであると即座に推測することが可能となっている。
しかし、こと技術研究者において白衣の着用率は世間のイメージよりもそう多くはない。
何故ならそこには白衣と人気を二分する衣服が存在するからである。
そう、その名は「作業着」だ。
作業着は白衣とは相反するイメージを持たれがちである。
すなわち、汚い、臭い、カッコ悪いという3Kだ。
しかしそのようなイメージは全くの偏見であると小生は断言しよう。
現に、過去調査された女性が好きな「男性の職場の制服」ランキング(参照元=PRTIMES)では作業着は4位の白衣を抜き去る堂々の2位を記録している。
また、実用面からも白衣は袖を装置やものに引っ掛けやすいデメリットがあるため、作業着が推奨される大学や企業は数多く存在する。
かく言う小生も普段社内では事務作業であっても当たり前の様に作業着を着ている、作業着愛好家だ。
今更ながらその理由を深く考察したところ、下記3点に集約されることが判明した。
1.ポケットが多いから。
2.袖があるから。
3.着る服がないから。
うむ、この考察を続けると、どうしても小生こそが作業着=3Kイメージの発信者であるという結論に行きついてしまう気配を察知したため、ここらで擱筆しておこう。
なお、他のシンボルとして「割烹着」という少数意見も存在するが、本稿では諸事情により割愛させて頂く。
賢明なる諸兄姉におかれてはどうかお察し頂きたい。