技術の継承とその課題

技術の継承とその課題

CMI(フィリピン工場)からの研修生でグレイ(仮名)という青年がいた。

半年後にRFユニットをCMIで量産立ち上げする予定があり、その担当者として約半年間、日本で研修を受けてもらった。

彼にはRFについての知識や経験はなかったが、とても飲み込みが早く、研修の後半では簡単な開発案件であれば任せられるまでに成長していた。

これといった問題もなく、予定通りに量産立ち上げを完了できたのは彼の活躍によるものといっていいだろう。

 

フィリピンに戻った彼は、それから何年かして一流のRFデバイスメーカー(競合ではない)へと転職していった。

どうやらテクダイヤで習得したRFの技術と経験を高く評価してもらったようだ。

せっかく教育した社員が転職してしまうのは残念ではあったが、散々悩んだ末に彼が選んだ道であれば止める権利はないと思った。

実際、私もそうやって転職を選んできたのだから。

 

ただ、会社としては大きな損失となってしまうことになる。

転職が当たり前の時代に、こういった問題はどのように対処していくべきなんだろうか。

私は以前から、ささやかながら自分が持っているノウハウはすべて誰かに継承したいと思ってきた。

根本的な解決にはならないが、教育すべき人材がいる限り、繰り返し何度でも教育を続けていくつもりである。

結果として彼らがどの道を選ぶにせよ、その考えは有りではないかと思っている。


創業40年の製造業。ダイヤモンド事業からスタートしたテクダイヤは、会社本来の「人好き」が作用し、人との出会いを繰り返しながら業態変化を続ける。 現在はセラミック応用技術・精密機械加工技術・ダイヤモンド加工技術をコアとしながら先端技術のものづくりを支える。スマホやデータセンターなどの通信市場、更にはNASAやバイオ領域にも進出中。