工程の記録にどこまで時間をかける?
どこの工場でも工程での作業の記録や検査の記録を取っている。きちんときめ細かく記録を取っている工場もあれば、必要最低限のものだけを取っているところや、本来なら取る必要のあるものも取っていない工場もある。
ある日系の工場では必要な記録をきちんと取っているが、むしろ記録が多すぎるような印象を持っていた。そんな中いろいろ実状を見ていくと、記録することにかなりの時間が取られていることがわかった。
それは各工程の班長さんたちの日々行っている業務内容を1週間限定で詳細に日報に記入してもらい、その内容を確認したことでわかった。
1つ例を挙げると、製品のロットトレースに関する記録に班長さんが毎日1時間を費やしていた。通常2時間残業をするとして、1日10時間勤務となり、その10分の1がひとつの記録を取るために使われていることになる。
もちろんロットトレースをきちんと、かつ素早く行うことは問題が起きた時に迅速に対応するためには必要なことだ。問題はそれにどれだけの時間・工数をかけるかということだ。
今日のポイント
別の会社では、わたしが行ったときには検査員の検査日報を付けていなかった。その日に誰がどの機種を何個検査したのかがわからない状態であった。検査した数量がわからなければ、検査計画など立てられないはずだ。
このときは検査員の人たちは過重な残業をしており、検査の効率化が課題のひとつになっていた。例を挙げるとひとりの検査員の人は、ある月に180時間もの残業をしていた。これって1人2シフト状態ですよ。
検査の効率化の話題は別の機会に紹介するとして、検査日報に話を戻す。検査の責任者と打合せをして検査日報の必要性を説き、検査日報をすぐに付けるように段取りをしてもらった。
しばらくすると検査責任者から検査日報を書くこと自体が検査員の負担となっているので何とかして欲しいとの要望があった。言外に付けるのを止めたいという雰囲気があった。
止めることは却下し様子を見ていると、またしばらくすると記入に手間のかからない検査日報書式を自分たちで考え、それを導入していた。わたしとしてはこれを望んでいた。困ったときに自分たちで工夫して解決することを体験して欲しかった。これはうまくいった例だ。
記録を付けるのにどこまで工数をかけるのか、これは判断基準をしっかり持っておき、それに従って決めていくことが必要だ。何のための記録か、どんな時に使うのか? もちろん、手間がかからない方法を考えていくことも当然必要だ。
補足
ロットトレースについては、どこまでトレースできるようにするのか、ここが判断のポイントだ。細かくトレースできれば、問題が発生したときにその波及する範囲を極限まで狭めることができる。
一方で記録に必要なことも多くなり煩雑になる傾向にあるのも確かだ。自分たちでどこまで必要かを決め、それに従ってやることにする他ない。