品管部が生産を停めるのは当たり前!?

品管部が生産を停めるのは当たり前!?

品管部、または品証部は組織図上では、生産部門と並列ではなく総経理直轄となっている場合が多い。

これは品管部には他部門からの影響を排し、独立した部門としての役割があるからである。

その最も重要な役割として今回の標題とした品管部はライン(生産)を停める権限がある。問題が発生した時に品管部の判断でライン(生産)を停めてよいのである。

 

建前としては品管部にこのような権限があるとしている会社・工場は多い。

しかし、実際にこの役割が機能していないところも多いのではないか。わたしが知っているある日系の工場ではこの品管の役割が見事に機能している。

 

その工場は300人~400人と規模的にはそれほど大きくはない。しかし、品管部は常に部材や製品の品質を監視して、問題があるとすぐに総経理に報告をし、場合によっては生産を停めなくてはならないことも報告している。

この工場の素晴らしいところは、品管部のその役割を総経理を始め他の各部門もこれを認識し、尊重していることだ。

そう会社に文化・風土としてしっかり根付いているのだ。

今日のポイント

この工場を観察していくと、品管部の役割が機能している理由として次のようなことが挙げられる。

 

1)TOP(この場合、日本本社の社長)がこのような考え方を持っており、品管部に明確に伝えていること。そしてTOPも品管部の判断を尊重していること。

2)品管部も杓子定規にこの権限を振りかざすことはしていない。どのようにしたら生産を継続できるかという視点を常に持っていること。

3)品管部の責任者がとてもしっかりしており、自分の責任範囲をわきまえている。常に自ら勉強し向上心があること。そして検査等の結果に基づいた対応の提案が出来ることがある。つまり、TOP(ここでは本社の社長及び総経理)からの信頼が厚いということがある。

 

逆にこのような例もある。他の日系工場、ここは6000人~7000人とかなり大きな規模の工場。

この工場には検査課という部門はあるが、この部門にライン(生産)を停める権限は持っていない。本社には立派な品証部があり、ここにはラインを停める権限はある。

この工場で問題が起きた時にどのように対応するかを主に担っているのは生産部門の支援部門である生産技術部門である。

 

組織図上は、生産部門と生産技術部門は並列になっているが、権限・役割的には生産技術部門が上に立っている感じである。

ライン停止を判断する部門が違ってもそれが機能していればよいのではという考え方も当然ある。しかし、判断部門が違えば判断基準に違いが出てくるのは道理である。

品管部が判断する場合、品質確保できているかの視点となる。他の部門が判断する場合、もちろん品質確保の視点も持っているが生産を継続することを優先にする傾向にある。そう現場としてラインは停めたくないのである。

 

上記のようにどうしても判断が甘くなる傾向にあるのは否めない。

結果として損害を大きくしてしまう場合も時としてある。問題が発生した時に顧客納期、品質確保そして損害の最小化、これらのバランスをどう取るかが難しい。

工場としての力量が問われることになる。

補足

最初に紹介した品管部の役割が機能している工場であるが、実は機能しているもう一つの理由がある。

それは、生産条件を決めることができる技術部が残念ながら弱い(いろいろな意味で)のである。

出典:中国工場での品質管理・品質改善


KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント◎電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導及び品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走 ◎東京都/千葉県商工会連合会専門エキスパート(品質管理、製造業指導) GCS認定コーチ◎日本生産性本部経営アカデミー講師 名古屋外国語大学非常勤講師 セミナー/企業研修講師多数◎中国工場コンサルティング実績 日系中国工場品質改善及び管理体制の見直し(広東省)、中国企業品質管理体制の構築(福建省1社)、中国企業労務人事管理監査対応指導(パートナーコンサルタントと共同で実施:広東省1社)、米国D社の労務人事監査指摘事項への対応を指導、中国工場品質管理体制の構築(広東、大連など2社)、中国工場運営管理支援(広東1社)、外観検査の精度向上指導(広東1社)、中国生産委託先工場監査代行(広東1社) 国内工場管理の見直し及び製品コストダウン、外灯製造会社の5S指導、金属加工会社の品質管理・改善、生産性向上指導(1社)、金属加工会社の組織再構築、経営改革指導(1社)、板金塗装会社の5S指導(1社)、環境関連企業の新工場立ち上げ支援(1社)◎製造業向け社員研修実績 中国人管理者教育(広東、大連、厦門など3社)、コーチング研修(2社)、来日した中国企業スタッフ研修、中国赴任前研修(パソナ様)、若手社員向け中国工場の問題点と対処法(和歌山県工業技術センター様)、中国工場品質管理講座&異文化コミュニケーション(富士通テレコムネットワークス様)、仕入先様品質管理勉強会 テーマ:中国工場での品質管理の進め方(株式会社オートバックスセブン様)、中国への生産委託に伴う工程/品質管理のポイント(N社様、I社様) ◎著書 こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>(日刊工業新聞社)、雑誌「標準化と品質管理」2012年8月号特集記事執筆(日本規格協会)、外観検査の不良見逃し・ばらつき低減(技術情報協会・共同執筆)、通信教育講座「外観目視検査の進め方と留意点」担当講師(テキスト執筆、添削指導) ◎KPIマネジメント http://www.prestoimprove.com/index.html ブログ「中国工場での品質管理・品質改善」https://ameblo.jp/prestoimprove/