分散の加法性について
測定データを扱う仕事をしているとかなり役に立ちます。
知らないと損なので、簡単に紹介いたします。
統計理論
分散の加法性とは、2つの確率変数XとYがあって、XとYが独立で正規分布するとき、 XとYを合わせたものの分散は、X、Yそれぞれの分散を足し合わせたものに等しいというものです。
式で表すと、
V(X±Y)= V(X)+V(Y)
定数を含む場合の一般式は、
V(a1X1+a2X2+・・・+anXn)= (a1)^2・V(X1)+(a2)^2・V(X2)+・・・+(an)^2・V(Xn)
XとYが非独立だと、
V(X+Y) = V(X) + V(Y) + 2Cov(X,Y)
なのですが、独立だと、
相関係数 R(X,Y) = Cov(X,Y)/(√V(X)・√V(Y))
で、共分散Cov(X,Y)がゼロだから相関係数もゼロ。
これより、加法性の式が成り立ちます。
よく使う標準偏差σは、
σ = √V
で、計算できるので、工程能力の把握や管理基準の設定に重宝します。
実用例
古くからから誤差論で引用されていました。
測定ばらつきは、誤差因子(en)の加法性から見積もられていました。
E^2 = e1^2+e2^2+・・・+en^2
メジャーな測定誤差因子を見出して、改善や管理をすることができます。
enには、キャリブレーションばらつき、機差(複数台の場合)、読み取り誤差(アナログ計測の場合)、温湿度環境影響(リーディングドリフト)などが考えられます。
当社の身近なところでは、静電容量の例があります。
平行平板型のコンデンサをモデルにすると、
静電容量: C(pF)
電極寸法:L(mm)、W(mm)
電極間ギャップ(セラミック厚み):t(mm)
誘電率:K
として、
C = 8.854・L・W・K/ (1000・t)
ここで、L、W、K、t それぞれ生じる工程が別なので独立パラメータです。
V(C) = (8.854/1000)^2・(V(L)+ V(W)+ V(K)+ V(1/t))
となり、L、W、K、tのメジャーなばらつき要因を調べることで、V(C)のばらつきを改善することが可能になります。
また、それぞれのパラメータをSPC管理することで、静電容量のばらつきを管理することもできます。