偽物材料、その責任は?(その2)
前々回、偽物材料を使われた責任について読者の方に意見を求めた。上海の日系企業に勤めている中国人の方からコメントいただいたので、紹介する。中国の方の視点でのご意見でありとても興味深い。
『根本さん、おはようございます。中国上海の日系企業の購買担当者Sと申します。メルマガを通していろんな勉強をしていただいてありがとうございます』
→Sさん、こちらこそメルマガをお読みいただき、また、コメントをいただきありがとうございます。
『さて、5月25日第205回「偽物材料、その責任は」を読んで、私の感想は、偽物材料、その責任は
◆結論
自分の会社の管理レベルの問題だと思います。私は上海の日系企業の中国籍購買担当者で、私の経験から見ると結局は採用基準の問題と思います。
◆理由
「中国の現状」
環境が厳しいのでリスク管理に対しての要求が非常に高いんです。
「購買の第一要素はリスク管理」
現在ではERPが使われているが、制限条件が刻々と変化してあるかもしれないので、購買プロセスのリスク管理には個人の能力しか頼らないんです。
「リスク管理に必要の能力」
論理性です。倫理性があれば正しい判断力があり、正しい判断力があれば問題発見力・分析力・使える対策があり、そのような人は使える人と思います。
「中国での日系企業の日本語」
日本語能力は日系企業では確かに非常に大切だと思いますが、それはあくまで手段で目的はほかの知識と一緒に応用していろんな実問題を解決すること』
今日のポイント
Sさんは購買担当者の資質という点から述べており、その会社の管理レベルで結局は決まってしまう。その管理レベルを実現するためには購買担当者を採用する際の採用基準、判断と言い換えてもいいと思うが、それに見合った人を取るということだとしている。
正直レベルの高い人が取れればよいが、それも会社がどこまで本気でリスク管理について考えているかが問われている。残念ながら多くの会社で購買部門は利益創出部門と口では言いながら、実際に相応の体制を取っているところはあまりない。
環境が厳しいのでリスク管理に対しての要求が非常に高いということだが、その高い要求をしているSさんの会社は立派だと思う。高い管理を要求し、その実践に力を尽くす姿勢を見せることが大事なことと考える。
ERPを使っていてもその通りに発注していればよいというわけではないということですね。実際に購買をやったことのある人であればわかると思うが、システム通りの発注で済むことは少なく、手作業部分が非常に多く個人の能力に頼ってしまう、また、その管理にかなりの工数を費やしているのが実状だろう。
論理性と倫理性をわざと2つ並べていただいたのでしょうか。購買業務を進めるにはどちらも大事な要素です。特に倫理観は中国と日本では大きく違いますから。
言葉についてはまったく同感です。これは中国人だけでなく、日本人やその他の国の人でも同じことがいえる。言葉は仕事の道具であり、言葉を仕事にするのではない。読者の方も経験があるのではないでしょうか。言葉ができるという理由で採用したけど、できるのは言葉だけで全然仕事はできなかったということを。
あなたは、今回のSさんのご意見をどのように感じましたか?
補足
購買では偽材料問題もあるが、日系企業として一番気を使うのは購買担当者のバックマージンではないだろうか。これについてはやはり会社の仕組みとして、そのようなことができないようにすることが大事だと考えている。
以前、新しく入社した人が購買に配属されたが、バックマージンをとれないことが分かると辞めていったことがあった。